*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。14回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第2章 もはや東京の一部も放射線管理区域」P95~ より
汚染を広げるだけの手抜き除染が横行している
ゼネコンや地元の建設会社といった除染の元請け企業は、仕事を受注すると、受注額のいくらかを渡す約束をして、下請け業者にその仕事をやるように言います。そして、この時に責任もバトンタッチしています。以後、この元請け企業が除染現場を見に行くことは、まずありません。
そしてその下請け業者も、自分のところでやれなかったり、やりたくなかったりする業務を、さらに孫請けとなる業者にお金と責任ともども回します。そして、その業者もさらなる孫請けをつくっていくー、と、このように、元請けから下請けへ、下請けから孫請けへと、お金と業務と責任が流れていく間に、もらえるお金の額はどんどん減っていくのですけれども、業務のほうは、どんどん面倒でキツイものとなっていきます。
しかも、部分的なことしかやらなくなる。そのため責任の所在はあいまいになります。それでいて、もちろん請け負った業務は決められた期間内に終わらせなければいけませんし、もっと短期間で終わらせれば、そのぶん、利益は大きくなります。そこで、何とか手間をかけないで、効率よく作業をしようと考えた挙句に起きてしまったのが、手抜き除染です。
例えば、民家の屋根などを高圧洗浄してジャージャー使った水は、そのまま流してはダメで、それをちゃんと集めなさい、ということになっているのですけれども、そんなことをやっていたら到底仕事にならないし、お金もかかってしまうので垂れ流してしまう。
また、枝葉などの汚染物を川に蹴り落としたり、使った道具を川で洗ったり、長靴を洗った泥水を側溝に流したり、削りとった汚染土を不法に投棄したり、手抜き除染に関するニュースは後を絶ちませんが、不法投棄ということでは、2013年の12月には、除染した民家の庭に大きな穴を深く掘って、その中に、放射性物質を拭いとった雑巾から針金、ビニール袋、ケーブル、ガラス瓶、そして金属製の支柱や木材、自転車まで投げ込んで埋めていたということが発覚しました(『週刊朝日』2013年12月13日号)。
告発した現場作業員の話によれば、監理員が見回りに来る時間はわかっていて、しかもチェックする箇所が決まっているので、それに合わせて作業をする「手抜きのための裏マニュアル」まで用意されていたそうです。そしてさらに監理員と除染業者との馴れ合いの関係もあったと言います(『週刊朝日』2013年12月20日号)。
環境省は、手抜き除染が相次いで明るみに出ていた2013年1月頃に、不適切な下請け業者は入札停止処分にすると言っていましたが、このスクープ記事によれば、それまでに通報されて入札停止になった業者はまだいないそうです。
人々が生活している場所にある放射性物質を、とにかく集めて隔離するということが、今、行われている除染の目的であるのですけれども、手抜き除染というものは、隔離をするのではなくて、もしろその汚染を拡散してしまうというようなことをやっているわけです。意味がない以上に、やってはいけないことをやってしまっているということです。多分、今現在も日常的にやっているのだろうと思います。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/21(月)22:00に投稿予定です。
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