*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。4回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「中間貯蔵施設」というものの考え方
処分する場所がないのは廃炉のゴミだけではありません。もっとも深刻な高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料、それから除染作業で回収した汚染物についても、最終的な行き場が決まっていません。国としては当然ながら、これらの行き場を早く決めたいと思ってはいるのですが、こんなに危険な毒物を、自ら永久に引き取ろうというところはありません。
それで国はとりあえず、永久でなくてもいいので、せめて最終的に持っていくところが見つかるまで預かっていてくれないか、という意味での「中間貯蔵施設」をつくる候補地を探しているわけですが、それでも、なかなか手を挙げてくれるところがありません。それでついに国は、急がれる福島県内の除染作業で回収した汚染物については、福島第一原子力発電所周辺の土地を国有地化して、そこに中間貯蔵施設を建てて保管するという手段に出たわけです。
双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町を主な対象地として、およそ19万平方メートルという土地を買い取るのだと言います。国はそれまで、「除染すればいつかは戻れる」と、さんざん宣伝して期待させておきながら、突然この計画を発表したのですから、住民にとっては、まさに寝耳に水で、大変驚かれたのと同時に、悔しさと無念さでいっぱいなのではないかと私は思います。
ですが、住民がそうした思いでいることを重々承知のうえで、大変申し訳ないのですが、放射能のお守りをする仕事をやってきた私の原則から言うと、放射能はできる限りまとめて、汚染したところから出さずに集中的に管理をするというのが正しいと思います。
ただ、これもあとで詳しく述べますが、放射能のゴミの棄て場を住民の土地にするのではなく、東京電力の敷地にすべきだと、私は思います。今汚染と呼んでいるものは、もともとは福島第一原子力発電所の中にあったもの、つまり、れっきとした東京電力の所有物であり、本来、東京電力に返すべきものであって、住民の土地に埋めるべきものではありません。
そして私はもう一点、指摘しておきたいことがあります。それは、今回、福島の中間貯蔵施設をつくるにあたり、「貯蔵開始後30年以内に汚染土を県外で最終処分することを法律で明記する」と、国が福島県に対して約束したことについてです。
中間貯蔵施設というのは、本来はその貯蔵しているものが最終的に送られる先があって、このような名前がつけられます。それで日本ではもともと、どのような経緯で中間貯蔵施設が作られたかという話ですが、みなさん、核燃料サイクルという、原子力を推進する人たちがいまだに捨てきれない夢をご存知でしょうか?
この夢がどういうものかについては、また後ほど第5章でも触れますが、要するに、一度原子炉で燃やしたウラン(使用済み核燃料)からプルトニウムを取り出して(再処理)、そのプルトニウムを高速増殖炉という特殊な原子炉を使ってどんどん燃やして、資源が貧弱な日本の永遠の電源資源にしよう、そして、できればこのプルトニウムを使って、核兵器もつくりたい・・・。 と、こういう夢を描いたのです。
それで初めは原子力発電所の使用済み核燃料を再処理工場に持って行ってどんどん処理をする、という計画でしたから、この時はまだ、中間貯蔵施設というものについては、その発想すらありませんでした。しかし、再処理工場が一向に動かない。すると、使用済みの核燃料が、どんどん原子力発電所に貯まってくるわけです。それで、もう仕方がないから、どこかに中間的に置いておく場所をつくろうということで、「中間貯蔵施設」というものが、原子力の世界でまずは発想された。あくまでも、貯蔵した使用済み核燃料は、最終的には再処理工場に運ばれるという前提があったから、その途中の倉庫という意味合いで、そういう名前がつけられたのです。
それは例えば、今の青森県むつ市にある中間貯蔵施設です。ここでは5000トンの使用済み核燃料を貯蔵することができますが、中間貯蔵施設だというのに最長保管年数は50年です。最終的な行き先である六ヶ所再処理工場は、現時点では2014年10月が完成予定ですが、すでに20回以上にわたって計画が延期されてきていますので、それもできるかどうかわかりません。そのうえ、高速増殖炉もんじゅの稼働は今現在目処がたっておらず、核燃料サイクルはすでに破綻しています。
ですので、六ケ所再処理工場が稼働して、なおかつ、このまま原発ゼロで使用済み核燃料がこれ以上増えないとしても、この先、むつ市の中間貯蔵施設に置かれた使用済み核燃料がなくなることはないだろうと私は思います。つまり、これは私がこれまでもみなさんにずっと警告し続けてきたことなのですけれども、「中間貯蔵施設は最終貯蔵施設になりますよ」と、いうことなのです。ですから、今回の福島の場合も、国は30年以内に他県に汚染土を移す、そのことを法律に定める、そう言って、あたかも「中間」というようなことを強調していますけれども、そもそも、最終的な行き場がないのですから、中間である道理がないのです。
そして何より日本の政府というのは、自分で決めた法律を守れなくなった途端、それを平気で反故にするという習性がありますので、まったく信用できません。私は彼らは一度やったらば動かないと思いますので、一旦、受け入れれば、置かれた汚染物や核のゴミは、その場所に永久に留まるということになると思います。そして、「処理」とか「処分」とか言われていますけれども、放射性物質というのは煮ても焼いても消すことができません。一ヵ所に集めたところでなくなるわけではないのであって、基本的には処理も処分もできないのです。できることはただ一つ、その置き去りにされた放射性物質を、これからずっと、お守りし続けるということです。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/2(水)22:00に投稿予定です。
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