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原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

第7章 メルトダウン再び ※4回目の紹介

2015-04-09 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第7章 メルトダウン再びを複数回に分け紹介します。4回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介

前回の話:第7章 メルトダウン再び ※3回目の紹介

 その、官邸内に設置された原子力災害対策本部のオペレーションルームには、元旦早々、原子力規制委員長や原子力規制庁長官、その他の専門職員たちが、そして本部員たる閣僚たちも、関東近県が選挙区の者から続々と駆けつけてきていた。

 フクシマの事故以降、原子力発電所の免震重要棟、オフサイトセンター、関東電力本店、新崎県庁・・・それらと官邸とは、直接、テレビ会議システムでつながれるようになっている。

 このとき官邸オペレーションルームも、騒然とした状況になっていた。

「原子力緊急事態宣言が発せられましたので、2回目の記者会見を午前9時から行います。原子力規制庁と関東電力の同席をお願いします。対応は官房長官です。午前8時半には、官邸で事前ブリーフをお願いします。

 と、内閣広報官が伝達する。

「ベントの連絡を県庁から周辺市町村にお願いします」

 そう、原子力災害対策本部の事務局長である原子力規制庁長官が述べた。

 すると県庁の危機管理監が叫ぶ。

「PAZの住民避難の確認ができるまで待ってください!」

「避難の確認はどのくらいでできるんですか?」

 と所長代理。

「わかりません!」県庁危機管理監は憤然と答える。「いまから市町村経由で住民に連絡ですから、なんせ正月ですからっ」

「早くしてください!格納容器が破壊されたら、元も子もないんですから・・・」

 と、再び所長代理。

「ちゃんと避難訓練はしてあったんだろ、早くしろ!」

 原子力防災担当の内閣府制作統括官が叫ぶ。

 県庁の危機管理監は言葉を失った・・・あれだけ万全の安全を期するといっていた関東電力や政府ではあるが、いざメルトダウンが進行し始めると、住民の避難が遅いことが被害拡大の原因だといわんばかりなのだ。

 所詮、電力会社や国にとって、住民の安全というのは、原発再稼働のためのお題目に過ぎない。メルトダウンが起きれば、事故の極小化が優先で、周辺住民は単なる足手まといということだ。

 午前9時過ぎ、少し待たされた挙句、官房長官の緊急記者会見が再度行われた。NHKは正月番組を中断して放送する。官房長官は少し疲れ気味のようで顔色が悪かった。ただでさえ浅黒い顔に、うっすらと脂汗を浮かべている。

続き第7章 メルトダウン再び」は、4/10(金)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第7章 メルトダウン再び ※3回目の紹介

2015-04-08 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第7章 メルトダウン再びを複数回に分け紹介します。3回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介

前回の話:第7章 メルトダウン再び ※2回目の紹介

(23)

 新崎原発では、午前7時の段階で、原子炉を冷却中のバッテリー電源の残量がほとんどなくなりかけていた。そのため非常用のディーゼル発電機を始動させようと、現場の当直の作業員が努力していた。

 前日夕方からの冷え込みは非常に厳しく、気温は氷点下9・5度に達していた。キンキンに冷え込んでいるためか、ディーゼル・エンジンがかからない。経由に含まれる成分が、気温の低下によって流動性が低くなり、フィルター部で詰まってしまったのだ。そこが詰まると、当然、エンジンには燃料が行かない。

 作業員は、エンジンをかけようと焦る。ただ、原子炉についての知識はあるが、ディーゼル・エンジンについての基礎知識は欠落していた。

 新崎原発の所長は、正月休みをとって、東京へ帰省していた。作業員が昨夜から免震重要棟の緊急時対策室に詰めている所長代理に無線電話で連絡を入れる。

「ディーゼル・エンジンがかかりません!」

 所長代理が怒鳴る。

「そんなことあるか、バカ野郎!」

 午前7時半にバッテリー電源が切れたあと、原子炉の圧は急速に上昇し始めた。中央制御室の緊張が、俄然、原子炉の圧の上昇に比例して、ぐんぐんと上り詰めていった。

 所長代理は、外部電源車の出動を命じた。

 外部電源車は、フクシマの事故の反省から、原子炉のある海岸線から少し離れた高台の車庫棟のなかに格納されていた。作業員が外部電源車の車庫棟に向かおうとするが、そこに行く道は、5センチメートル以上の深い積雪に覆われていた・・・・吹雪も強まっていた。

「車では近づけません!」

「バカ野郎、歩いていけ!」

 現場の作業員と所長代理のあいだで、こんなやり取りが何度も交わされた。

 海岸線から海抜4メートルの高台にある車庫棟へ歩いて近づくのは、雪山登山の様相を呈した。いったんシャーベット状になった積雪は、昨夜からの冷え込みで、カチンカチンに凍結している。アイゼンもピッケルもない状況で、吹雪のなか車庫棟に登っていくのは、遭難の危険すら感じられるほどだった。

「除雪車を呼べ、すぐにだ!」

 緊急時対策室の所長代理が、必死の形相で施設課長に指示する。その施設課長は除雪業者に連絡を取ったが、業者の事務所の電話は通じなかった。

 しかも、除雪業者の保有する除雪車は、この吹雪のなか、幹線道路の除雪にすべて出払っていた。発電所で除雪車の運転手の携帯番号を把握していない以上、業者が捕まらない限り、連絡を取ることは不可能だ。

「原子力災害対策特別措置法に基づく15条通報です。原子力緊急事態です!」

 と、所長の留守を預かる所長代理が官邸のオペレーションルームに報告する。

続き第7章 メルトダウン再び」は、4/9(木)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第7章 メルトダウン再び ※2回目の紹介

2015-04-07 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第7章 メルトダウン再びを複数回に分け紹介します。2回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介

前回の話:第7章 メルトダウン再び ※1回目の紹介

「昨夜12時前、関東電力の高圧送電線の鉄塔が倒壊する事故があり、新崎原発が緊急停止いたしました・・・現在、原子炉を非常用電源で冷却中であります。周辺住民の方々は冷静に対応願います。この事態によりまして、関東電力の供給区域内で、現在、50万世帯に停電が起きておりますが、順次、復旧する見込みであります」

 緊張した面持ちで官房長官がこう述べる。民自党時代とくらべると、政権復帰後の保守党政権の危機管理は、つねにスピーディであるとの評価が定着している。

 記者から次々と質問が浴びせられる。

「放射能漏れはありますか?」

「一切ございません」

「現在、原子炉は冷却できているのでしょうか?」

「非常用電源が稼働中であります」

「非常用電源の燃料はどのくらい備蓄しているのでしょうか?」

「発電所内に1週間分は確保しておりますが、念のためタンクローリー車による輸送を、官邸から指示したところであります」

「鉄塔の倒壊の原因は何でしょうか?」

「現在、調査中です」

「停電の復旧にはどのくらいかかりますか?」

「関東電力において、火力発電所の出力上昇を現在、行なっておりまして、本日午前中には復旧できる見通し、との報告を受けております」

「明日の電力需給には問題が生じないのでしょうか?」

「現在、関東電力において、計画停電の実施の必要性について検討中との報告を受けております。他電力からの融通の可能性についても鋭意検討中とのことであります」

 ・・・新崎原発の緊急停止となれば、仙内と厳海が稼働して比較的余裕のある筑紫電力から、西から東に向け玉突きで電力を融通しなければならない。筑紫電力から、嶋根を稼働させている山陽電力へ、そして高花と大井を稼働させている近畿電力へと、次に東海電力を経由して関東に電力を融通することになる。

 もともと50ヘルツと60ヘルツの壁が電力会社の競争を妨げているといわれ、福島の事故前から東西の連系線を強化すべきと、有識者から指摘されていた。しかし、フクシマの事故時には、周波数変換ができる変電所は3つだけ・・・両周波数間で融通できる最大電力は90万キロワットに過ぎなかった。

 ようやく、事故後2年経って、変電所が一ヵ所新規に運用を開始し、東西間で融通できる電力は120万キロワットとなった。しかしそれ以上の融通については、電力会社から6年後に90万キロワットの関東 ー 東海間連系設備を整備する、との方針が公表されただけだ。

 原発の再稼働に向けて、高さ20メートル超の防潮提を始め、あらゆる投資を惜しまない電力会社であるが、市場競争用のインフラとなる東西連系設備の投資を渋っていることは、火を見るより明らかだった。

 120万キロワットの融通であれば、結局、再稼働した新崎原発6・7号機の一基分にも満たない量であった・・・。

続き第7章 メルトダウン再び」は、4/8(水)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第7章 メルトダウン再び ※1回目の紹介

2015-04-06 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第7章 メルトダウン再びを複数回に分け紹介します。1回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介

第7章 メルトダウン再び

(22)

 日本全国で15基の原発が次々と再稼働することになった記念すべき原発再稼働元年の大晦日の夜・・・大雪が続くなか、大陸の朝鮮族の工作員、崔は、関東山地の奥深く、日本海側に連なる鉄塔の足元に辿り着いた。ちょうど「紅白歌合戦」が終わりに近づくころだった。

 吹雪は激しいままで、「ホワイトアウト」と呼ばれるような、大雪で視界が遮られ何も見えない状況だった。

 崔が手慣れた様子で鉄塔の基礎の部分にダイナマイトを装着し、発破器をつないだ。そして携帯電話で何者かと話を終えた後、同行している若者に顎をしゃくってうながした。

 若者は朝鮮語で何事かを叫びながら発破器のスイッチを押した。轟音が山中にこだました。雷にも似た火花が暗い山中を不連続に切り開いた。

「原発ホワイトアウトの始まりだ・・・」

 崔は右側の頬を少しだけ歪めて笑うと、すぐに下山の準備にかかった。汗のひとつもかいていない。

 かつて特殊部隊の隊員として訓練を受けた崔にとって、雪山を登り、山中の、何の防護も施されていない何百本の鉄塔のうち手近なひとつを爆破することくらい、文字どおり朝飯前のミッションだ。

 実際、1998年2月20日には、香川県坂出市坂出町の聖通寺山に立っている四国電力の送電用鉄塔(高さ72・9メートル、重さ40トン)が突然倒れ、15本の高圧電線(18万7000ボルト)が断線した。鉄塔は、地上約1メートルのところで、4本の脚がボルトで基礎部分の鉄柱に固定されていた。この繋ぎ目部分ですべての脚が外れ、倒壊する結果となったのだ。

 つまり山中の送電用鉄塔を倒すことなど、足腰に地震があれば素人でも、仮にダイナマイトがなくとも、簡単に実行できる・・・。

 新崎原発で発電された電気は、北新崎感染と南新崎幹線という2系統の50万ボルトの高圧電線で、それぞれ約200基の鉄塔を介して、関東電力のエリアに送られていた。

 もし送電線に支障を来たし発電した電気を送り出せない、そんな事態に陥れば、エネルギーが蓄積され、原発自体をスクラム(緊急停止)したとしても、外部電源か非常用電源かで冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする ー。


 「関東地方で大規模な停電が発生、原因は調査中」ーテロップがNHKの「ゆく年くる年」の放送の途中に流れたのは、新年を迎える数分前だった。

 停電が起きたのは関東地方の50万世帯・・・だが、停電を食らった世帯ではテレビのテロップを確認することもできず、そのまま床についた。たいていの場合、大雪のせいによる停電なのだろう、くらいにしか受けとめられていなかった。

 翌、元日の早朝6時から、官房長官の緊急記者会見が官邸で行われた。

続き第7章 メルトダウン再び」は、4/7(火)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※12回目の紹介

2015-04-03 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。12回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
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さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※11回目の紹介

 この元総務官僚の新しい知事は、伊豆田前知事とは違い、エネルギー政策や福祉政策といった個別の行政分野の政策の内容には、一切興味がなかった。

 自治体財政の健全化判断比率だの基準財政需要学といったマクロの経営指標にばかりに目が行き、全国47都道府県のなかでの新崎県の位置付けがどうなっているか、それだけが彼の行政の尺度であった。

 原発の再稼働によらなくとも県の経済を活性化させるようなアイディアをひねり出し、政策として実行するということよりも、原発の停止によって工事などのカネが落ちなくなった地域経済のカンフル剤としてストレートに原発再稼働に頼ることを是とし、再稼働にGOサインを出した。

 そして再稼働容認の際に、新しい知事は、記者会見で次のように述べた。

「長年、新崎県は原発の再稼働により国のエネルギー政策に貢献してきたわけであります。このたび、万が一にも事故のないよう事業者の側で安全の徹底に万全を期する旨の経営姿勢が関東電力に確認でき、また国の側でも安全性の審査をしていただきましたので、本日の寺沢経済産業大臣からの要請を受け、新崎原発の再稼働を認めることとします」

 ・・・すべては経済産業省資源エネルギー庁次長、日村直史の予定するシナリオ通りだった。

 原発の再稼働には多くのプレーヤーが関係する。日村からすれば、多くのプレーヤーというのは、それぞれパチンコ台の釘のような存在だ。

 パチンコ玉が打ち出され、原発再稼働という結論にたどり着くまでには、多くの釘にぶつかっていく。計算された強度でパチンコ玉を打ち出せば、計算されたスピードと角度で釘に当たり予定された角度で跳ね返る。

 そういう予定調和的な世界のなかで、一本の釘が独自の意思を持って、パチンコ台の釘師や客の意思に反して動き始めるというのでは、それはもうパチンコとはいえない。

 避難計画が本当に機能するのかとか、原子炉等規制法の審査が真に世界最高水準の安全性を担保するのかといった本質論に、1プレーヤーに過ぎない首長が迫ること自体、シナリオとしてあってはならないことだった。

 事業者が安全のために万全を尽くすと表明し、原子力規制委員会が規制基準に適合していると判断し、地元自治体が避難計画を策定し、経産大臣がエネルギー政策から地元自治体に要請を行う・・・それぞれのプレーヤーがそういう立場を演じるという歌舞伎のような約束事なのだ。

 そういう約束事を守っていれば、電源立地交付金も、新幹線も、高速道路も、すべて原発の地元自治体にやってくる。これが日本の政治のお作法であり、守らなければならないパチンコのルールであることを、一本の釘に過ぎない総務官僚出身の新しい知事は、よく理解していたのである。

 第6章 再稼働に隠された裏取引の紹介は、本日で終了します。

引き続き第7章 メルトダウン再び」の紹介を始めます。4/6(月)22:00投稿予定です。

(一部紹介)

・・「今日中には、ベントしなくても、自然にベントになります」

・・「原子炉建屋から放射性物質が溶け出るってことですよ。格納容器がもたずに爆発するか、メルトスルーするか」

・・格納容器の内圧が、フクシマのときのように減少せず、最高使用圧力を超えたままで高止まり

・・ド、ドッ、ドーン!!という激しい大音響と振動が、テレビ会議システムを通じて伝わってきた。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※11回目の紹介

2015-04-02 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。11回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※10回目の紹介

「中長期的脱原発派」は、多かれ少なかれ電力マネーの独饅頭を食らった連中である。結びの党出身者にも徐々に電力マネーの独饅頭は浸透していた。「原発即ゼロ」といって党を割っても生き残れる目算はない。しかし、このまま原発に関して歯切れのいいスタンスを取れないまま、清新なイメージがすっかり剥げ落ちた改新の党にいても、座して死を待つことになりかねない。

 これは必ずしも改新の党だけの問題ではなかった。共産党、生活党、社会党を除いては、民自党、おいらの党にも共通する悩みであった。

 こういう野党のどっちつかずの悩みを蹂躙、粉砕するように、政府の再稼働路線は進んだ。

 ゴールデンウィーク明けには、高花3・4号機、厳海3・4号機の再稼働が続いた。7月には、夏の電力ピーク対策という名目で、戸麹1・2・3号機、大井3・4号機、井形3号機、嶋根2号機が相次いで再稼働した。

 すると秋には、原子力規制庁の審議官が天下りの約束と引き換えに日本原発に情報漏えいをしたとのスキャンダルが、朝経新聞でスクープされ、紙面を賑わせていた。

 そしてその数カ月後、原子力規制庁総務課の西岡進課長補佐が、情を通じた再生可能エネルギー研究財団主任研究員の玉川京子にそそのかされて機密漏洩をしたとして、国家公務員法違反の容疑で逮捕されたのだ。

 ところが、情報漏洩をしていた原子力規制庁の審議官はお咎めなしだった。西岡と大学が同期で、経産省では入省年次が2年上の原子力防災課長の守下靖にとっても、事務官と技官の差こそあれ他人事ではなかったが、出世の遅れている西岡の自爆としか思えなかった。

 ー明らかに、原子力発電をめぐる世の中の潮目は変化していた。


 そして、年末、いよいよ関東電力の新崎原発6号機と7号機も再稼働することになった。

 新崎県では、再稼働に慎重姿勢を示すも、1年前に収賄で逮捕された伊豆田知事のあとを受け、旧自治省出身で、かつて新崎県庁に総務部長として出向経験のある総務官僚が知事選で当選していた。与野党相乗りだった。

 与野党相乗りは、利権の分配構造にメスを入れられたくない既得権者の守護神である保守党系と、地方公務員労働組合によって安定的で恵まれた給与等の労働条件を維持したい民自党系との談合の所産であった。地方行政を変革や改革から無縁のものとし、安定した県政運営をもたらす絶好の手法なのである。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、4/3(金)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※10回目の紹介

2015-04-01 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。10回目の紹介

 

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作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
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こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※9回目の紹介

(21)

 2月の仙内原発再稼働、それに続く3月の電力自由化法案の附則で示された原発推進路線で、統一地方選挙のある4月第一週のNHKの世論調査では、加部政権の支持率は10ポイント下がり、33%となった。一般的に政権の支持率は2割を切ると危険水域といわれる。

 特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認、原発再稼働、原発推進で、もともと加部政権と親和的ではない、いわゆる進歩派は、ほとんど政権支持から離れてしまっている。大規模な金融緩和をテコにデフレ脱却を狙う、「カベノミクス」という経済政策の成果に陰りが見えてきたことも、それに追い打ちをかけた。

 しかし、この国民の3分の1という支持は根雪のように固い支持層であり、日本経済が大幅に暗転しない限りは、これ以上大きく離れないだろう・・・NHKから密かに生データを入手した官邸は、そう分析していた。

 大泉元総理が顧問を務める再生可能エネルギー推進会議は、独自に候補者を立てての選挙活動はやらないとしていたものの、全国の統一地方選の候補者のなかから脱原発を公約に掲げる候補に対し、独自に、推薦を発表していた。希望する候補者には、お日様と大泉らしき似顔絵が書かれたシールを交付し、選挙ポスターに貼って宣伝することを許していたのだ。

 こうした動きに対して官房長官は、会見で大泉の動きについての所感を問われ、

「エネルギー政策は地方選の争点にはなり得ないですから」

 と、冷たく言い放っていた。

 会長が政権によって政治任用されたNHKも、この統一地方選挙に際し、政党の党首でもない1NPOの動きであるとして、大泉元総理の言動をまったくといっていいほど報じなかった。

 たしかに、地方議員にも首長にも、エネルギー政策に影響を与えるようなツールがないことは事実である。しかし本当は、地域の住民にエネルギー選択の自由を与えず、地方自治体の関与を認めない国のエネルギー関係の法律の、その規定自体がおかしいのである。地域のことは地域で決めるという地方分権の理念が正しいのであれば、地域で消費するエネルギーは、地域で決められるはずだ。

 日本人は与えられたルールを疑うよりも、与えられたルールの範囲内で考える性癖があるといえよう。

 選挙結果はどうだったか? 投票行動において政策を考慮する投票者は全体の1割・・・大泉元総理率いる再生可能エネルギー推進会議の活動も大きなうねりとなることはなく、シールが付されたポスターの候補者に一定の票の上積みをしただけで終わった。

 特筆すべきは難波であった。4年前は、改新の党と公命党が選挙協力を行い、府市ともに難波改新の会が圧倒的な第一党となっていたが、今回は保守党と公命党の選挙協力で、難波改新の会の候補者の当選数はいずれも1桁と、ほぼ壊滅した。

 これを見て浮足立ったのは改新の党の国会議員である。このまま国政選挙を迎えれば、難波改新の会の二の舞だ。党代表の越本が原発について相変わらず明確な立場を表明しないことも、改新の党の国会議員を苛立たせていた。

 もともと越本は、難波府市エネルギー戦略会議を立ち上げ、大井原発再稼働の直前までは、政府の原発再稼働に最も懐疑的な立場を表明していた。それなのに、多い原発再稼働の直前に急遽、再稼働容認に転じ、それ以降、党の迷走が始まっていた。

 原発推進の老年の党といったん合流し、分裂・・・結びの党と合流した改新の党であるが、統一地方選での壊滅を前に、党所属国会議員は「やっぱり原発即ゼロ派」と「中長期的脱原発派」に割れていた。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、4/2(木)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※9回目の紹介

2015-03-31 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。9回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※8回目の紹介

(20)

 福田家で並びの別室で待機していた日本電力連盟常務理事の小島が呼び込まれたのは、日村資源エネルギー庁次長が松村と臼田の席を辞してから5分後であった。

「小島さん、しっかり附則に書き込まれるから、心配ないよ」

「そうでないと、政審や総務会は通さないから」

 口々に恩着せがましく、松村と臼田が声をかけた。

「あ、ありがとうございますっ」

 と、小島は平伏する。上目遣いに2人を観察する。

 庭の鹿威しがコーンと鳴った。福田家の和風の庭に、ようやく静けさが戻ったようだ。

「電力モンスター・システム」を維持して利益を得るのは、自分たち電力会社だけではない。この松村と臼田も、日本最大の裨益者なのだ

 平伏すべきは果たして自分なのだろうかという疑念が頭をよぎりつつも、政治家の前で平伏できる演技力が、ここまでの小島の地位を築いたともいえる。


 結局、閣議に提出された法案の附則には、

「本法の施行までの間に政府は原子力発電の経済的措置について速やかに法制的な措置を講じ、電力自由化と原子力発電の推進との両立を確保するものとする」

 との文言が付け加えられた。

 最後の最後まで、資源エネルギー庁側は、

「本法の施行までの間、政府は原子力発電の経済的措置について速やかに検討し、電力自由化と原子力発電の推進との両立を確保するものとする」

 という表現でまとめようとしていた。

 この表現であれば、「本法の施行までの間」が「検討し」までにかかるのか、「確保する」までにかかるのかが玉虫色だ。エネ庁側からすれば、「経済的措置について確約はしていない」と言い逃れができるし、それを狙っていた。「霞が関文学」の新骨頂である。

 しかし松村と臼田は、さすがに元通産省官僚である。そういった表現の爪の甘さを許すことはなかった。

 法案閣議決定当日、寺沢経産大臣の記者会見では、この附則の文言について、記者からは何の質問もなかった。もちろん寺沢大臣も、そんな細かい附則の文言の存在が追加されていること自体、気が付きもしていなかった。

 同日、日本電力連盟の定例の記者会見では、日本経済産業新聞の記者から質問が飛んだ。

「本日、閣議決定された電気事業法の一部を改正する法律の附則に、電力自由化と原子力発電の推進との両立という規定がありますが、この点については、どのように受け止めていらっしゃいますか?」

 典型的なヤラセ質問である。常務理事の小島が依頼した質問だった。

 近畿電力の社長である日本電力連盟の会長が応える。

「これは、電力自由化と原発推進との両立確保策が実現しなければ、本改正に定める発送電分離にかかる規定は施行されない、という趣旨であると、理解いたしております。政府として、地球温暖化等の問題を踏まえ、現実的なエネルギー戦略を構築する立場を表明されているものと受け止めております」

 こう、さらりといってのけた。

 原発推進の日本経済産業新聞はもちろん、原発反対の朝経新聞や毎朝新聞も大きく報道するのは間違いない。こうした報道は、支持率という点では政権にとって一時的なマイナスにはなるが、先日の再稼働に続き原発推進が現政権の既定路線であると、世の中の相場観が定着し浸透することは、電力会社にとって実はプラスなのかもしれなかった。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、4/1(水)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※8回目の紹介

2015-03-30 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。8回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※7回目の紹介

 附帯決議とは、法案が衆参の各委員会で可決されるに際して、法案の施行にあたって政府が留意すべき点につき注文を付ける決議である。法的な拘束力はないが、内閣として尊重すべき事実上の責務は発生すると考えられている。

 「付帯決議は全会一致が慣例だぞ」と、臼田が指摘し、最後に釘を指す。

「原発推進施策と電力自由化の両立なんて、社会・共産は死んでも呑まないぞ。だから付帯決議は付けられないよ。附則なら、保守党と公命党だけで書けるんだからな」

 法令のことであればどんな議員との関係でも負けない日村ではあるが、国会の先例については、正直、内閣の役人として知見に限りがある。これは国会の委員部の職員の専権事項であり、委員部の職員に知恵を付けられた臼田にはかなわなかった。

「官邸の総理にはよく話をしておくよ。附則でちょこちょこっとうまく書いてくれるよう、法制局長官に総理から指示するようにいっとくから、大丈夫だよ」

 ニヤリと笑い、そう松村が続けた。

 松村は総理の出身派閥である聖和会の会長である。総裁選で派閥の先輩である松村にあえて反旗を翻して、派閥横断で勝利した可部総理との関係は、必ずしも円滑ではない。しかしだからこそ、派閥の兄貴分である松村から明示的に依頼をすれば、総理としても断りにくいだろう。

 内閣法制局も、官邸の意向ということであれば、素直にいうことを聞くはずだ。

 集団的自衛権の解釈変更のために、生え抜きではない外交官が内閣法制局長官に初めて政治任用された。それまでは内閣法制局長官は参事官、部長、そして次長という生え抜きの経験者が就任していたが、内閣法制局長官の突然の政治任用に、内閣法制局全体が凍り付いたといってよい。

 役人にとっては、出世が唯一の仕事のモチベーションである。にもかかわらず、政治のいうことに従わないと出世はさせないぞという脅し、それが政治任用なのだ。

 集団的自衛権容認の閣議決定は、官の最後の砦である内閣法制局が政にひざまずいた瞬間ともいえる。いまの内閣法制局長官は、政治任用された長官が病気で退任をしたあとの生え抜きではあるが、脅しに屈して長官に就任した以上、総理直々の頼みであれば、屈するはずであった。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/31(火)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

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第6章 再稼働に隠された裏取引 ※7回目の紹介

2015-03-27 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。7回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※6回目の紹介

 可部総理の出身派閥である聖和会は、いまや保守党最大の派閥である。政府調査会審議会、いわゆる政審や総務会のメンバーには、聖和会所属議員が8名ずついる。松村自身が政審や総務会のメンバーではなくても、一声かければ、8名の国会議員が自動的に拒否権を発動するということだ。

「電気事業法の部分には、原子力という文言はありません。電気事業法の事業規制は電源ニュートラルってことです」

 日村は立て板に水のごとく答える。

「・・・おい、日村君、カタカナは使うなよっ」

 いきなり2人の国会議員は不機嫌になった。

 国会議員はつねにカタナカが嫌いだ。比較的開明派が多いといわれる経産省出身の議員も同じだ。東京はともかく田舎の選挙区では、カタカナを理解する有権者は少ないのだ。自然と国会議員も、カタカナにアレルギー反応を示すことになる。

「すみません。電気事業法の事業規制は、電源がどんな電源であれ平等に扱うという考え方で整理されている、ってことです。電気事業法のなかには、特定の電源のことは、法制的に書けません」

 先輩も経産省OBなんだからわかるでしょ、といいたいところではあるが、日村はぐっとこらえた。いまは保守党の大御所の2人なのだ。下手に機嫌を損ねると、足を掬われる。
「電気事業法の保安規制の部分には原子力と書いてあるから、大丈夫だろ?」

 と、臼田が今度は凄んだ。眼鏡の奥の目はしかし、冷たく研ぎ澄まされている。

「・・・いえ、発送電分離は、保安規制とは関係ありません。事業規制の部分です」

 ここが日村にとっても踏ん張りどころだ。

 「そんなら別法で用意しろ。再生可能エネルギー買い取り法案みたいに」

 と松村が追い打ちをかける。

「それは間に合いません」と、日村は動揺しない。すると今度は、臼田が攻めてくる。

「政府は、発送電分離の施工までに、原子力の優遇制度を法律で規定します、っていうプログラム法くらいできるだろう。中央省庁等改革基本法みたいにな」

 プログラム法とは、特定の政策を実現するための手順や日程などを規定した法律のことである。しかし、この段になって、提出予定法案として、文書課長会議を経ていない別の法案を国会に提出することは不可能である。
 
 国会では、内閣のように政省令といった明文化されたルールがない代わりに、憲法に基づく議員規則制定権による規則と先例によって拘束される。あらかじめ内閣提出予定法案として説明されていない法案を、突如、閣法で国会に提出することは、事実上不可能なのだ。

「別法は、この期に及んで無理です。法案の附帯決議であれば、思い切り先生がたのご懸念を表現することができます。附帯決議のほうが、内閣法制局には関係がありませんから、表現に自由度があります」

 こういって、日村は再考を促す。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/30(月)22:00投稿予定です。

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第6章 再稼働に隠された裏取引 ※6回目の紹介

2015-03-26 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。6回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
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過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※5回目の紹介

(19)

 仙内原発の再稼働から1週間後、予算提出から7週間後の3月上旬のある日、ひっそりと電気事業法の一部を改正する法案が閣議決定され、国会の大海原へと舟を漕ぎ出していた。

 再稼働の直後に、保守党の政務調査会審議会(政審)と総務会で法案は了承された。ただ、その根回しの段階で、日本電力連盟常務理事の小島厳が頼りにする経産省OBの国会議員、聖和会会長の松村修孝と、電力供給安定化議員連盟会長の臼田浩之から、資源エネルギー庁次長の日村直史は密かに呼び出しを受けていた。

 場所は千代田区紀尾井町の福田家 ー 日本で最も格式の高い料亭の一つである。

 最近、料亭は、パブル崩壊以降の官僚接待の消滅とともに激減しているが、最高峰は最高峰であるがゆえに接待客を惹きつけ、未だ日本一の料亭としての品格と人気を保っていた。

 その福田家の上得意客は、昔も今も電力会社幹部であり、この宴席も、電力会社幹部は同席こそしていないが、電力マネーでセットされたことは間違いなかった。

 日村にとっては、松村も臼田も通産省の先輩ではあるが、年次は10年以上も上であるし、日村の入省の際には2人とも退官直前だったから、現役時代の面識はない。

 松村も臼田も政治家2世ではあるし、当時の通産省も、そもそも将来の大物商工族の候補として期待して採用していた。経産省には、血筋が悪いにもかかわらず、政治家の娘を娶って政治家を目指したりする連中もいるが、そういう輩は、やはり野心が先走るし、幼少期からの帝王学も身につけていないので、どうも利に敏いところが否定できない。

 この点、松村も臼田も、サラブレットとして満を持して政界に出馬し、見事に商工族の大物として育ってくれていた。こうした大物は本来、次官か官房長か、最低でも担当局長が対応すべき政治家ではある。

 しかし今回は、松村と臼田のほうから、

「エネ庁次長の日村君と電事法改正法案について意見交換がしたい」と、日村を指名してきた。

 経産省の場合、職制上のランクと政策決定への影響力とは一致しない。日村が将来の次官候補であることは、松村と臼田も承知していたし、電力会社の側からも、日村が事実上の政策の決定権者であることを聴取していたのだろう。

 松村と臼田が原発再稼働に加えて出してきた条件とは、経産省の審議会、総合資源エネルギー調査会において報告書がとりまとめられる原子力発電の推進策を、発想電分離の施工までに着実に実施に移すことであった。

「とにかく法案の附則にでも、発送電分離に関する規定の施工までに原発推進策を実施すると書き込んでくれ。そうでないと党の政審や総務会は通さないぞ」

 と、松村は凄みを利かせて、日村に迫ってきた。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/27(金)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※5回目の紹介

2015-03-25 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。5回目の紹介

 

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「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※4回目の紹介

「仙内原発の周辺の道路は一本道ですが、本当に緊急時には渋滞が起きないんでしょうか?」

「あらかじめ定められた避難計画に基づいて、冷静に、住民の方々に対処していただけると、自治体から聞いております」

「フクシマ事故の際に活用された免震重要棟・・・これがまだ完成していないんですけれども、本当に大丈夫なんでしょうか?フクシマ事故から約4年も経過しているのに、免震重要棟ができあがっていないというのは、ちょっと筑紫電力も、再稼働の最初から緊張感が欠けているという気がするのですけれども、どうでしょうか?」

「原子炉等規制法に基づく基準には猶予期間が定められておりまして、基準には適合している旨、原子力規制委員会で判断されたものと承知しております」

「フィルター付きベントの工事もできていませんよね?」

「原子炉等規制法に基づく基準には猶予期間が定められておりまして、基準には適合している旨、原子力規制委員会で判断されたものと承知しております」

「原子力規制委員会で基準地震動が540ガルから620ガルへと引き上げられていますが、その後、補強工事はされていません。本当に工事なしで大丈夫なんでしょうか?」

「原子炉等規制法に基づく基準には適合している旨、原子力規制委員会で判断されたものと承知しております」

「テロ防止のために必要な、原発で働く下請け孫請け企業の社員の身元確認の義務化なども見送られていますが、アメリカでは、アル・カイーダとつながりのある人物が5つの原発でスパイとして働いていたことが明らかになっています。そういう点は本当に大丈夫なんでしょうか?」

「原子炉等規制法に基づく基準には適合している旨、原子力規制委員会で判断されたものと承知しております」

 ・・・もう何を聞いても同じ答えなのであろう。

 寺沢にとってみても、よく知らない原発の問題について、記者の質問に気の利いた答えをしようとリスクを冒すよりも、役人のアドバイスに従って安全運転に徹することのほうが、自分の政治家人生にとってはプラスなのだ。きっと叔父である亡き寺沢元総理も、同じ判断をすることだろう。

 結局、記者からの質問は、事前に広報室長が記者クラブに所属する会員社の記者に聞いて回った範囲にとどまった。経産省記者会見室は、民自党に政権交替した際に会員社以外のフリーの記者にも出入り自由とはなったが、閣議後記者会見での突然の発表だったので、記者クラブ会員社以外の記者はいなかったのである。

 この国ではつねに、何千人もの記者を擁する大新聞ではなく、数十人規模の週刊誌の編集部か、あるいは個人のフリージャーナリストが、権力者の心胆を寒からしめるスクープを放つ。記者クラブ会員社の記者にとっては、大臣のスキャンダルを追求するよりも、大臣の家族の誕生日を知ることのほうが重要な仕事となっている。

 それを称して、「権力者の懐に入らなければ真実を得ることはできない」の法則、とでもいうのだろか。前経産大臣、小口陽子の政治資金問題でも、何千人もいる新聞記者は、誰一人として、その公開されている資料を調べようとしなかった・・・。

 さて、一方の寺沢。朝、議員宿舎に迎えに来た大臣秘書官から、事前に記者クラブ所属記者から広報室長が聞きとった質問に対する想定問答を、みっちりと教えてもらっている。

 所詮、参議院議員では、事実上、総理は目指せない。かつての大泉旋風のように国民を煽動する必要は、寺沢にはない。大臣秘書官から教えてもらう答弁範囲を逸脱するだけの動機も、度胸も、寺沢は持ち合わせていなかった。

 大井原発が停止してから1年半、とうとう日本の原発ゼロが終わったのだ ー。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/26(木)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※4回目の紹介

2015-03-24 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。4回目の紹介

 

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恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
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過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※3回目の紹介

(18)

 2月末の火曜日の朝、テレビの緊急ニュースが流れた。寺沢洋二経産大臣の閣議後記者会見の中継だ。

 国会期間中、普段は院内食堂で閣議後の記者会見が行われるはずであるが、今日は経産省本館10階の記者会見室だ。寺沢大臣は紅潮した顔つきで、相当の決意であることが画面から伝わってくる。フラッシュに眼鏡の奥の充血気味の目をしばたたかせ、かなり緊張しているようだ。

 寺沢大臣が口を開いた。

「本日、仙内原子力発電所の再稼働の件で、私からご報告いたします。

 このたび、仙内原子力発電所につきまして、昨秋の知事、地元自治体の首長による再稼働の同意に続き、原子力規制委員会による工事計画および保安規定の認可がなされ、使用前検査に合格し、無事、安全性が確認されました」

 寺沢が記者たちの目を見回していく。

「・・・そして、筑紫電力において仙内原発の再稼働をするとの報告を昨日、社長から受けましたので、本日、仙内原発第1・第2号機の再稼働がなされるものと承知いたしております。

 事業者である筑紫電力においては、万が一にも事故を起こすことのないよう、緊張感を持って仙内原子力発電所の稼働に当たっていただくとともに、国としても、責任の持てるエネルギー戦略の確立に向けて、電力の安定供給を確保しつつ、可能な限りの原発の依存度を減らす前提で、再生可能エネルギーや省エネルギーの最大限の推進を図ってまいります・・・私からは以上です」

 記者から質問が飛んだ。

「原子力規制委員会は、安全性が確認された、とはいっていないと思うのですが?」

 記者の指摘の通りである。

「たしかに、原子力規制委員会は、規制基準に適合、と表現しておりまして、安全性が確認されたという表現は、直接は使っていないと承知しております。ですが、原子力規制委員会がおっしゃっている規制基準の規制というのは、原子炉等規制法のことを指しております。原子炉等規制法は第1条の目的に『公共の安全を図る』とございますので、これをもって私のほうで、安全性が確認された、という趣旨と理解させていただきました」

「寺沢大臣は、これで安全だ、と判断されているのでしょうか?」

「原子力規制委員会において、規制基準に適合、と判断されていると承知しております」

 冗長、リダンダントな答えであるが、これ以上、寺沢大臣を問い詰めても仕方がないと、現場の記者も思っているようだ。就任直後には、仙内原発を「せんうち」原発とよんだくらい、所詮エネルギー政策には素人の大臣なのである。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/25(水)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※3回目の紹介

2015-03-23 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。3回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※2回目の紹介

「電力会社が、原発再稼働しないと発送電分離の法案は提出させないって、議員会館で陳情して歩いてんですよ」

 投げやりな口調だ。そして、こう続ける。

「それに、電力自由化と原発推進との両立策も考えろってことに、実は与党との関係でなってまして、これはさすがに法案は間に合いませんが、法案提出前に審議会の報告書で方向性を打ち出しておかないと、関係者が収まりませんので・・・」

 重苦しい空気が部長室に漂う。

「で、どうすんですか?」

「とりあえず、C法案で様子を見させて下さい」

 この高畑も内閣法制局を、参事官として5年、総務主幹として1年、部長としても半年経験している。法案の準備が間に合わないので泣く泣くC法案にする例はよくあるが、各省庁のキャリア事務官と法制局参事官が汗を流し、法案のマス目は完成しているのにC法案にするというのは、聞いたことがない。

「取りやめではなくって、まだ提出する余地もあるってことですか?」

「そうですね・・・今年を逃すと、来年は国政選挙があるでしょ。そうなると、もう二度と発送電分離のチャンスが巡ってこないかもしれないですから。3月までには、とにかく仙内原発だけでも動かして、法案は提出しますよ」

 と宇治木が説明する。

「対外的には、どうやって法案を説明するんですか。原発再稼働と法案提出とは、論理的な関係は、まったくないですよね?」

 対外的な説明ぶりは、法案提出省庁にとっても、内閣法制局にとっても、最も重要な部分だ。それをそのまま外に説明すると、マスコミが騒ぎ出し、かえって関係者の態度を硬化させる。世間の注目を浴びる法案となると、野党も張り切って審議時間は長くなるし、議員修正などを提案されてしまっては、かえって面倒になる。下手をすると与野党対決法案になって、政争の具にされかねない。

 法案はとにかく、世の中の注目を受けずに、静かに漕ぎ出さなくてはならないーこれが役人の鉄則である。

「対外的には、法案の量が膨大で準備が遅れているって、いっていただいて結構です」

 事務的な検討作業の遅れは、役人としては恥である。優秀な役人は、できることだけにコミットし、できないことにはコミットしない。そうであるならば、事務的な検討作業の遅れというのは発生しない。

 したがって、普通は準備が遅れているという言い方は、決してしない。関係する事務官たちの士気にも関わるし、担当する内閣法制局参事官に対しても失礼である。

 しかし、この電気事業法の担当参事官は経産省からの出向者であるから、「親元」の官房総務課長がそういっていいとしている以上、経産省のことを気にする必要はない。

「原発が再稼働すれば法案は必ず提出するわけですから、C法案に格下げするもっともらしい理由をつけたところで、今度はそれに縛られるのも困りますので」

 と、宇治木官房総務課長は、もっともらしく説明した。

 仮に、C法案にした理由を「電力自由化と原発推進策との両立策が固まっていない」という台詞にしたのでは、今度は再稼働したところで、「まだ両立策ができていないじゃないか」という台詞が、法案を提出しない理由として通用するようになってしまうのだ。

 宇治木の対外的な言い方がもっとも合理的であると高畑も得心し、電気事業法の一部を改正する法律案は、C法案として位置づけることとなった。

 内閣法制局第4部長の高畑と経産省官房総務課長の宇治木ーこの2人の間では、「原発再稼働は本当に安全か」といった議論はまったくなかった、それが問題だという意識すらまったくないまま、法案の取り扱いが決まったのだ。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/24(火)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


第6章 再稼働に隠された裏取引 ※2回目の紹介

2015-03-20 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。2回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※1回目の紹介

 新年早々の中央合同庁舎第4号館11階。日の射さない内廊下はどんよりとつねに暗く、オフィス内もいつも陰鬱な雰囲気が支配する。御屠蘇気分がまだ冷めやらぬなか、内閣法制局の審査部では、年末の衆議院の解散・総選挙の喧嘩のあと、正月返上で法案作成に働いた参事官と各省庁の若手の汗臭い匂いが、廊下まで充満していた。

 その一角に、内閣法制局第4部長室がある。

「電気事業法の改正法案は当然、Aでいいですね」

 と、メラミン樹脂化粧合板の白く安っぽい審査テーブル越しに、内閣法制局第4部長の高畑優は、相対する経産省大臣官房総務課長の宇治木 覚に、軽快な口調で確認した。

 スチールパイプの脚にブルーの背の座がついた座り心地のよくないスタッキングチェアがいかにこの打合わせが事務的なものであるかを示している。

 高畑部長は財務省出身の切れ者で、将来の法制局長官の有力候補だ。実際、いままで数々の難解な法律を仕上げてきた。とっとと事務的な打ち合わせなど片付けてしまいたい・・・軽快な口調が、それを物語っていた。

「ふふっ、普通はそうですよね」

 と、宇治木官房総務課長は思わせぶりな口調で返答した。

 その返答自体が普通ではない。宇治木は、頭のキレ、見通しのよさ、腹の据わり具合と、どれをとっても秀逸で、これまた将来の経産次官候補の最右翼である。

「普通じゃないってことですか、どうしたんですか?」

 少しイライラした感じで高畑が応える。

「ご案内の通り、3年越しの電力自由化ですから、もうとっくのとうに条文は仕上がっています。ところが、事務的ではない理由がありまして・・・」

 と、思わせぶりな答えを宇治木は返した。

「事務的ではない理由とは?」

 高畑が続きを促す。

 こういう事務的ではない業界の動きや政治的な背景こそが、実は内閣法制局長官以下の幹部が知りたいことなのだ。内閣法制局の威厳を守りつつも、内閣法制局そのものが世の中、とくに与党から非難、指弾されないように、内閣法制局としての法制的な判断と、業界や国会議員の要望との間合いを測る。

 ーそれこそが内閣法制局の「政治的判断」である。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、3/23(月)22:00投稿予定です。

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