原発問題

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第6章 再稼働に隠された裏取引 ※9回目の紹介

2015-03-31 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第6章 再稼働に隠された裏取引」を複数回に分け紹介します。9回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第6章 再稼働に隠された裏取引」の紹介

前回の話:第6章 再稼働に隠された裏取引 ※8回目の紹介

(20)

 福田家で並びの別室で待機していた日本電力連盟常務理事の小島が呼び込まれたのは、日村資源エネルギー庁次長が松村と臼田の席を辞してから5分後であった。

「小島さん、しっかり附則に書き込まれるから、心配ないよ」

「そうでないと、政審や総務会は通さないから」

 口々に恩着せがましく、松村と臼田が声をかけた。

「あ、ありがとうございますっ」

 と、小島は平伏する。上目遣いに2人を観察する。

 庭の鹿威しがコーンと鳴った。福田家の和風の庭に、ようやく静けさが戻ったようだ。

「電力モンスター・システム」を維持して利益を得るのは、自分たち電力会社だけではない。この松村と臼田も、日本最大の裨益者なのだ

 平伏すべきは果たして自分なのだろうかという疑念が頭をよぎりつつも、政治家の前で平伏できる演技力が、ここまでの小島の地位を築いたともいえる。


 結局、閣議に提出された法案の附則には、

「本法の施行までの間に政府は原子力発電の経済的措置について速やかに法制的な措置を講じ、電力自由化と原子力発電の推進との両立を確保するものとする」

 との文言が付け加えられた。

 最後の最後まで、資源エネルギー庁側は、

「本法の施行までの間、政府は原子力発電の経済的措置について速やかに検討し、電力自由化と原子力発電の推進との両立を確保するものとする」

 という表現でまとめようとしていた。

 この表現であれば、「本法の施行までの間」が「検討し」までにかかるのか、「確保する」までにかかるのかが玉虫色だ。エネ庁側からすれば、「経済的措置について確約はしていない」と言い逃れができるし、それを狙っていた。「霞が関文学」の新骨頂である。

 しかし松村と臼田は、さすがに元通産省官僚である。そういった表現の爪の甘さを許すことはなかった。

 法案閣議決定当日、寺沢経産大臣の記者会見では、この附則の文言について、記者からは何の質問もなかった。もちろん寺沢大臣も、そんな細かい附則の文言の存在が追加されていること自体、気が付きもしていなかった。

 同日、日本電力連盟の定例の記者会見では、日本経済産業新聞の記者から質問が飛んだ。

「本日、閣議決定された電気事業法の一部を改正する法律の附則に、電力自由化と原子力発電の推進との両立という規定がありますが、この点については、どのように受け止めていらっしゃいますか?」

 典型的なヤラセ質問である。常務理事の小島が依頼した質問だった。

 近畿電力の社長である日本電力連盟の会長が応える。

「これは、電力自由化と原発推進との両立確保策が実現しなければ、本改正に定める発送電分離にかかる規定は施行されない、という趣旨であると、理解いたしております。政府として、地球温暖化等の問題を踏まえ、現実的なエネルギー戦略を構築する立場を表明されているものと受け止めております」

 こう、さらりといってのけた。

 原発推進の日本経済産業新聞はもちろん、原発反対の朝経新聞や毎朝新聞も大きく報道するのは間違いない。こうした報道は、支持率という点では政権にとって一時的なマイナスにはなるが、先日の再稼働に続き原発推進が現政権の既定路線であると、世の中の相場観が定着し浸透することは、電力会社にとって実はプラスなのかもしれなかった。

 続き第6章 再稼働に隠された裏取引は、4/1(水)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


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