*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第7章 メルトダウン再び」を複数回に分け紹介します。1回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
----------------
**『東京ブラックアウト』著書 「第8章 50人の決死隊」の紹介
朝日新聞(2011年3月24日・朝刊一面)
「水道水『乳児は控えて』 東京23区・多摩5市で放射性物質検出 福島原発事故影響」
東京都は23日、金町浄水場(葛飾区)の水道水から1キロあたり210ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表した。同浄水場から給水している東京23区と多摩地域の5市を対象に、乳児に水道水を与えるのを控えるよう呼びかけている。
金町浄水場は利根川水系の江戸川から取水している。同じ利根川水系から取水している千葉県も同日、全域に同様の呼びかけを始めた。
都の対象は23区全域と武蔵野、三鷹、町田、多摩、稲城の5市で計489万世帯。
都によると、対象地区に1歳未満の乳児は8万人おり、粉ミルク用の緊急対応として、放射性物質検出前に詰めた水道水550ミリリットル入りのペットボトルを乳児1人につき3本、計24万本を配布する。24日にも各区・市役所などで配り始める。
東日本大震災を受け、都は21日の降雨の影響を調べるため、22日午前9時に同浄水場からサンプルを採取。23日午前11時ごろ、基準を超える値を検出したと報告を受けた。同日午前9時のサンプルでも190ベクレルを検出した。
(28)
新崎原発では、1000人以上の所員たちが退避を選択し、50名の決死隊がとどまった。のちにいう「ニイザキ・フィフティーズ」である。
退避を止める手段は何もない。フクシマの「吉田調書」を読んでも、吉田所長が認識しない間に9割の所員がフクシマ第二原発に退避していたのは事実だ。
日本の法律上、監督者には、作業員への安全配慮義務がある。戦時中の軍隊ではないのだから、突撃させて全滅させることはできない。
・・・そしてそれは、警察、消防、自衛隊も同じだった。
官邸では、原子力災害対策本部長の総理から、国家公安委員長、総務大臣、防衛大臣に対して、新崎原発への対応に協力するよう既に指示が下されていた。しかし、拡大する一方の極大放射能汚染に、警察、消防、自衛隊の現場からは、反対が起きていた。
「ちょっと、さすがに線量が高すぎます。電力会社の社員が現場から退避しているのに、なんで我々が突撃させられるんですか? 私には、部隊にそんな命令はできません。いっそ指示ではなく、命令してください・・・ただ従いませんから、命令違反で罷免してください!」
統合幕僚長が江藤徳之防衛大臣に噛みついている。
「軍法」のない、自衛隊という、軍隊かどうかもわからない、いってみれば「鵺」のような組織では、隊員が命令を拒否しても、そのことをもって獄につなぐことはできない。そしてこの統合幕僚長を罷免したところで、次の人間も同じリアクションをするだろう。
※続き「第8章 50人の決死隊」は、5/8(金)22:00から投稿予定です。
===「第8章 50人の決死隊」の一部紹介===
・・・法律は無力だった。経産大臣には、新崎県のパニック下でガソリンがどのように売られているか、そもそも知る由もなかったから、石油需給適正化法に基づく指示など出しようもなかった。
・・・結果として、弱いものが出遅れ、仮に避難の車が手配できたとしても、ガス欠で幹線道路の路肩に自動車ごと取り残されることになった。路肩で、家族全員が嘔吐のうえ窒息死している自動車や、家族全員が凍死している自動車が、いくつも並ぶことになったのだ。
===========================
![]() |
![]() |