「わらしべ長者と猫と姫」 岸若まみず

「おーおー、美人も一皮剥けばこんなもんか」
　誘拐されて、義体をバラバラにされた姫は、外部センサーも切られた剥き出しのパーツ状態で放置された。その場で殺されなかったのは、単に殺してしまって残留思念に祟られるのも面白くないという宇宙海賊の都合だけだった。

　現代社会にダンジョンが出現し、そこに潜ってモンスターと戦ったりするようになったり、逆にダンジョンを通って別の世界から狼人やらケット・シーやらさまざまな種族が訪れるようになって20年そこそこ。貧乏大学生の川島翔坊ことトンボに突然、アイテムボックスのスキルが覚醒した。なんでも収納できるレアスキルだ。しかし、どうやら普通のアイテムボックスではないらしい。入れて置いたものが勝手に別のものと入れ替わっているのだ。しかも頻繁に。
　ゴミ箱代わりにしまっていたミカンの皮が「ポプテ雄（冷凍）」になったとき、トンボは仰天した。そのポプテとやらが、死んでしまった愛猫マーズと瓜二つだったのだ……。

　ダンジョンが出現している現代社会を舞台に、ある日突然アイテムボックス的なスキルが覚醒した主人公……という定番のシチュエーションから始まった『わらしべ長者と猫と姫』。肝心のアイテムボックスあらため交易スキルが主人公に一方的に有利なものではなく、銀河宇宙の交易ネットワークに接続しちゃってるんだけど、利用者のほとんどが犯罪者らしく、どうやら宇宙海賊のジャンクヤードとつながったらしい……と扱いを間違えると後に祟るというバランスの取れたものになっているのも注目点。そこでいきなり宇宙冒険になるかと思わせておいて、ダンジョンで行商して資金稼ぎするという展開となり、その後もあっちへ跳ぶかこっちへ跳ぶか予想もつかないジェットコースターに、ついつい夜更かしして一気読みしちゃった身体に悪い作品。ハリイ・ハリスンのノリが好きな人にお勧め。
　したたかな宇宙商人も登場しますけど、これは双頭の半人半馬ではありませんでした。

【わらしべ長者と猫と姫～宇宙と地球の交易スキルで成り上がり!? 社長！ 英雄？ ……宇宙海賊!?～ 】【岸若まみず】【TEDDY】【カドカワBOOKS】【宇宙交易】【カクヨム】【簡易トイレ】【灰皿】【巨大ロボ】