付け焼き刃の覚え書き

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「駆逐艦キーリング〔新訳版〕」 セシル・スコット・フォレスター

2020-07-03 | 戦記・戦史・軍事
 黄金と白の目玉焼きがクラウスを見あげていた。細長いベーコンのうまそうなにおいが鼻腔をくすぐった。そしてコーヒー! コーヒー! 注いだときのこの香りたるや。

 第二次大戦にアメリカが正式に参戦して数ヶ月めの早春、北米から英国へと37隻の輸送船団が出発した。護衛するのは、4隻の小艦隊。これを指揮するのは今回が初陣となる米海軍中佐、ジョージ・クラウスだった……。

 小さな護衛船団が水曜の朝に出発してから金曜日の昼前までの物語。
 艦長は不眠不休で艦橋に立ち続け、コーヒーを飲んで、コンビーフサンドを食べ、コーヒーを飲み、薄切り冷製肉とバタートーストを食べ、コーヒーを飲み、ベーコンエッグをつつきながら、ひたすら便所に行くタイミングを計ります。
 80年に翻訳されて40年、なんと新訳版の登場です。トム・ハンクス脚本&主演で映画化されるのに合わせたのでしょうか。訳には好みもありましょうが、表紙イラストは変わらず生頼範義。タイトルロゴが映画っぽく派手に格好良くなっています。
 細かい訳語とか言い回しの違い以上に特徴的なのは、巻頭にいきなり用語集が掲載されていること。海洋冒険小説はここしばらく下火でしたから、これを機会に広く読者を呼び込もうということでしょうか。普通なら巻末に用語解説とかはありますが、まず読んで基礎知識を一通り頭に入れてね……ということかな。
 映画のタイトルは「グレイハウンド」。主役艦の名前がキーリング(竜骨)からグレイハウンドに変更されているのは残念。原題の「グッド・シェパード」と同タイトルの映画「グッド・シェパード」が既に2006年にロバート・デ・ニーロ監督で製作されているので重複を嫌ったのかな。そして輸送船団を羊の群に見立てたグッド・シェパード(良き羊飼い)から転じてグレイハウンド……かな。でも、グレイハウンドは基本猟犬であって、牧羊犬じゃないよ。

駆逐艦キーリング〔新訳版〕】【セシル・スコット・フォレスター】【生頼範義】【ハヤカワ文庫NV】
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