付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★ライトノベルのサラリーマン小説化

2020-11-04 | 雑談・覚え書き
 「ライトノベル」と呼ばれる文芸作品群がある。1980年代にニフティサーブの会議室で生まれた言葉で、表紙イラストとしてマンガ家のイラストやアニメのような一枚絵(以下「アニメ絵))を使い、挿画もふんだんに盛り込んだ本のパッケージスタイルを指す言葉である。当時、想定されていたのはソノラマ文庫やコバルト文庫といった、ティーンエイジャーの少年少女向けのレーベルであったため、ライトノベルという言葉についても今風に出版されたジュブナイル小説とイコールになる一面があった。ジュブナイル小説では、物語の主人公はあくまで同世代の少年少女であって、大人はそれを横から助ける存在か立ちはだかる壁に留まることが多い。それゆえに、ジュブナイル小説=ライトノベルと判断してもさほどおかしくはない。
 しかし、2010年代になるとライトノベルに区分されるべき、イラストにアニメ絵を採用する文芸作品に、少年少女以外が主人公になる作品が増えてきた。その初期作品群の代表が、理不尽な孫の手『無職転生~異世界行ったら本気だす~』(2012)である。
 『無職転生~異世界行ったら本気だす~』の主人公は、34歳になるまで一度も働いたことがなく、親の葬式にも顔を出さないことから兄弟に家から放り出された先で自動車事故に遭い死亡。異世界に転生し、あらためて人生を本気でやり直そうと決意する。物語は主人公の幼年時代から始まるが、これは少年少女の成長譚ではない。人生に失敗した男の再チャレンジ・ストーリーであり、喪われた家族を再生する物語なのである。
 こうした傾向の作品は、その後も増え続ける。考えてみれば当然の流れである。
コメント
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