カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

スタディーツアー報告⑤明日をつくる少女たち(HCCグッデイセンター訪問)

2008年10月06日 12時14分53秒 | Weblog
 今日は、スタディーツアー報告その5、HCC(Healthcare Centre for Children)グッデイセンターについてです。三関理沙さんのスタディーツアー報告その4にもありましたが、グッデイセンターは、HCCが保護活動の一環として、運営しているシェルターの一つです。スタディーツアー2日目の午後、ツアー一行は、グッデイセンターを訪問し、所長のサブンさんからの施設紹介を頂いた後、ツアー参加者とグッデーセンターの少女達の交流目的で、運動会が開催されました。そして、その日の夜、ツアー一行は、グッデイセンターに宿泊をしました。以下はツアー参加者鈴木智子さんからの報告です。

「明日をつくる少女たち」 鈴木智子(大学生)

 どうやって少女たちと接しようか、少し緊張した面持ちの参加者を和ませてくれたのは彼女たちの方でした。「チョムリアップスオ!(こんにちは!)」と屈託のない笑顔で私達を迎えてくれました。積極的な少女たちが多く、参加者の手を取ってHCCグッデイセンターの中庭まで手を繋いでくれる人もいました。この時から、楽しい時間が始まっていました。
 
 所長さんのお話によると、グッデイセンターでは最年少は6歳、多くは12~23歳の少女たちが共に寝起きしているそうです。人身売買や性的搾取、ドラッグ、孤児、貧困家庭など保護されている理由は一口では言い切れません。ここでは職業訓練も行っており、美容や洋裁などの訓練は、少女たちが将来自立した生活を送ることが出来る為のものです。さらに、文字と計算、簡単な英語を学ぶことが出来るほか、ライフスキルも身に付けることが出来ます。グッデイセンターは自主性を尊重しており、こうした活動を強要することはありません。しかし少女たちの活動意欲は高く、造花作りや踊り、家庭菜園、養豚など活動の幅を広げています。
 
 所長さんのお話が終わると、いよいよ運動会が始まりました。競技は「りんご食い競争」「壷割り」「バナナ早食い競争」「リレー」「風船割り」です。「りんご食い競争」は日本の「パン食い競争」に似ており、手を一切使わずに空中にぶら下がるりんごを完食しなければなりません。「壷割り」は「スイカ割り」みたいなもので、目を隠しながら周りの声を頼りに上から吊るされている壺を割らなければなりません。仲良くなった女の子に促され、二度チャレンジさせて貰ったのですが割る事が出来ず、皆で悔しがりました。「バナナ早食い競争」は最も参加者を苦しめた競技ではないでしょうか。二人ペアになり、一人が目隠しをします。目隠しをした人が目の前に置かれたバナナを手探りで探し、皮を剥き、相手に食べさせなければいけないハードな競技でした。「リレー」は大きな布袋を履いてパートナーとリレーする競技です。「風船割り」は自分の足に付けた風船二つを守りつつ、他の人の風船を割る競技で、最終的に残った人が勝ちです。最終戦に勝ち残ったツアー参加者と少女との壮絶な戦いがあり、大いに盛り上がりました。どの競技も皆で一緒にハラハラし、一緒に笑い、一緒に喜びを分かち合ったのが何より楽しかったです。
 
 気が付けばもう夕方になっており、夕飯の時間に移りました。少女たちに手を引かれながら、食堂に案内されました。皆とっても優しく、ご飯を自分たちの為によそってくれたり、オカズをとってくれたりしました。ご飯を食べ始めて、驚いたことは少女たちの食欲です。皆よく食べる食べる。私の隣に座っていた女の子はご飯4杯をペロリとたいらげていました。「お腹大丈夫?」と聞いても「へっちゃらよ」と言わんばかり、お腹をポンポン叩きながら笑顔でした。でも食欲旺盛なことは良い事だと思います。「生きるとは食べること。食べるとは生きること。」と以前テレビで聞いた事があります。グッデイセンターの子どもたちは生きることに貪欲なのだと思うと、何だか嬉しくなりました。
 
 まだまだ遊び足りないみんな。夕食後、外で遊び始める少女たちもいれば、寝室となっている広い部屋に案内してくれる人たちもいました。一階が洋裁や美容の職業訓練の教室になっており、階段を上がるとみんなの部屋です。「部屋」と言っても個人部屋がある訳ではありません。夜になると茣蓙(ござ)を敷いて皆で寝るため、家具はそれぞれのロッカーのみです。みんなで一緒に食後に敷地内を散歩などの運動に勤しんだ後、入浴時間となりました。カンボジアでは「サロン」(日本でプールの時に使うゴムの入った布みたいなものです。)と呼ばれる布一枚に着替えてから、お風呂場に向かいます。仲良くなった女の子が私に「サロン」を貸してくれたので、チャレンジしてみました。女の子たちだけなので布一枚になったところで、「セクシー、セクシー」の言い合い。もうすっかり皆と仲良しになっていました。入浴後、皆で輪になって座り、美しいアプサラダンスを私たちの為に少女たちが踊ってくれました。懐中電灯の明かりだけでしたが、より一層幻想的に見え、踊りに釘付けでした。しなる指先や足の動きなど、とても美しかったです。みんなからのプレゼントに対し、ツアー参加者は「幸せなら手を叩こう」「散歩道」「上を向いて歩こう」の歌を披露しました。その後、皆で踊ったり、歌ったり、はたまた追いかけっこをしたりととても楽しい一時を過ごしました。水浴びをしたのにも関わらず、上から水を被ったようにまた汗をかきましたが、少女たちと遊んでいるのが楽しく、気にも留めませんでした。
 
 寝る時間が近づいてきたのでしょうか。年齢の大きな女の子たちが中心となって蚊帳や茣蓙を引き、寝る準備を始めました。けれど、小さい子たちは気にもせず遊び回っていました。お絵かきや折り紙が始まると、皆で夢中になって取り組み、さっきまでのエネルギッシュさはどこへやら。折り紙で鶴を折ったり、可愛らしいハートを作ったりと皆とても器用でした。お絵かきも人気が高く、夜、電気がチカチカと消えたり点いたりする中、綺麗な植物や風景画を描いていました。そうした時間に手紙を書いてくれたり、絵や折り紙をプレゼントしてくれる人たちがたくさんいて、とても嬉しかったです。自分は何もプレゼントするものは持っていないけれど、楽しい時間をプレゼントできればと思いました。
 
 翌朝、起床の合図と共に皆一斉に起きました。会う少女たちに「グッドモーニング!」と声を掛け、外でまだ星が出ている中で元気よくラジオ体操を行い、身体にエンジンをかけました。朝食の時、歌がとても上手な女の子が一人、歌を披露してくれました。言葉はよく分からなかったけれど、思わず聞き入ってしまいました。女の子は拍手喝采を受け、少し照れくさそうにしていましたが、とても良い表情だったのが印象的でした。
 
 朝食後、出発まで時間があったので職業訓練をしている少女たちにネイルアートをしてもらいました。日本のネイル雑誌もあり、勉強に力を入れていることが分かりました。少女たちの目も真剣で、仕上がりはプロさながら。順番を待っている間、小さい女の子が爪を一生懸命整えてくれたのが、とても可愛いらしかったです。きっとネイルアートをしている大きいお姉さんに憧れているのだなぁっと感じました。自分が憧れる人、目指すものが傍にあるというのは、とても素晴らしいことだと思います。そうした選択肢が今後も増えていくことを願っています。
 いよいよタイムリミット。出発の時です。生きていれば、必ず会える、だから泣かないと決心していたのに泣いてしまいました。他の参加者もみんなとの別れが辛くて、目に涙を浮かべていました。バスに乗り込んでもなお、涙が止まらない時、少女たちに「泣かないで」「元気出して!」と励まされました。
 
 日本に戻ってから、あの一日がとても恋しいです。「今頃みんなは何してるのかなぁ」と考えたりしています。みんな、何かしら理由があってグッデイセンターに集まっています。けれど、皆笑顔で、純粋で、優しい少女たち。一緒に生活する仲間から学ぶことや職業訓練で身に付ける技術が力となって、少女たちがもっともっと笑顔になる未来を作って欲しいです。グッデイセンターは、多くの笑顔を生み出す場所ではないかと感じました。

写真は、運動会での「風船割り」競技前の写真です。

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