恐懼に堪えない日々

【恐懼】(きょうく)・・・ おそれかしこまること。日々の生活は恐懼に堪えないことばかりですよね。

12/28(月)池袋演芸場「富Q祭り」(主任:三遊亭白鳥)

2020年12月28日 | 噺とか
昨年に引き続き、今年もこの池袋へやってきました。
新作で人気の師匠方が豪華に顔付けされているのとともに、
古典からは菊之丞師匠や一之輔師匠が出るとあって、もうすごい。
以前からこの「富Q祭り」は開場前からの行列が必至なのですが、
それを耐えてでも行く価値があると考えるお客さんの多いこと多いこと。
今年も一時間以上前についたのにそれでも20人近い行列。
開場時には軽く70人はいたような。
行列の間の時間は読書で有意義な時間を過ごしました。

「堀の内」     ごはんつぶ
「グレコ奮闘記」  ぐんま
「不良クラブ」   天どん
「替り目」     菊之丞
「漫才」      ホンキートンク
「掛け声指南」   彦いち
「睨み返し」    一之輔
 -仲入り-
「新しい生活」   粋歌
「ぐるんぐるん」  小ゑん
「ものまね」    小猫
「富Q」      白鳥

昨年は前座だったぐんまさんは二つ目となってこの「富Q祭り」へ凱旋。
以前も聞いたことのある「グレコ奮闘記」ですが、久しぶりだったので、
大筋をほとんど忘れておりました。
高校時代にレスリング部に入っていたぐんまさんの自伝的新作。
白鳥師匠のお弟子さんだけあってやはり見せ場は座布団芸ですかね。
座布団を使ったバックドロップと、そこからの高座でのブリッジは、
この池袋の自由な空気を象徴するものですね。

天どん師匠はここに来る前の末廣亭で披露して痛い目にあったという「不良クラブ」。
高齢者3人が公民館に集まって不良のまねごとをしようというストーリーは、
高齢者の多い今日の末廣亭のお客さんにマッチしなかったとか。
そこは池袋、天どん師匠の新作は抜群の切れ味を発揮しておりました。
最後に高座で転げまわるのは織り込み済みとして、
ぐんまさんと同じく高座の上でのブリッジはなかなかの見ものでありました。

菊之丞師匠はここで落ち着きましょう、と「替り目」。
それでも、通常通りではなくて、おかみさんがおでんを買いに行くシーンで、
小ゑん師匠の「ぐつぐつ!」を入れ込む。
今日は古典派は私と一之輔さん。まともなのは私だけ、と言いつつも、
ここにそういう新作ファンを喜ばせるネタを突っ込んでくるのはさすが。

漫才のホンキートンクはメンバー変更になってから2回目。
前回見たときは以前とほぼ同じネタだったわけですが、
今回は大部分が新ネタになっておりました。
ちゃんと進化しているんですね。
弾さんが嫌いな奴、ということで某漫才師と某人気講談師の名前を挙げていましたが、
あれはいったいどういうことなんだろう・・・。

彦いち師匠はちょっとご無沙汰であります。
マクラでは以前マンタ倶楽部の会で聞いたアウトドアでのエピソード。
そんなマクラから全く関係のない本題に入ってみたい、と、
「掛け声指南」でございました。かなり久しぶり。
ムアンチャイのキャラクターがいい味出してますよね。
新作の会にふさわしい一席です。

もう一人の古典、一之輔師匠は年末らしく「睨み返し」でした。
コンパクトな池袋だからこそ、顔の表情の変化がよく見て取れるわけで。
新作派の中にあって、きちんと古典をやっても爆笑を誘う一之輔師匠、さすが。
三遊亭白鳥が圓朝を継ぐ夢を見た、なんていうくすぐりも白鳥ファンを喜ばせます。

粋歌さんは今年の6月に作ったという「新しい生活」。
コロナ禍のリモートワークが進む中で、家にいる夫とそれに悩む主婦の噺。
かなりこういうことって実際にありそうだなーなんてあるあるネタですが、
今年一年振り返ると同じような思いをした人も多いはず。
あるあるネタが多いものの、ぶっ飛んだ要素があって、そんなところが笑いを誘います。
現実との中にこそ笑いがあったり。面白い一席でした。

小ゑん師匠は「ぐつぐつ」オマージュの「ぐるんぐるん」。
振り返ってみると昨年の1月に聞いているので、実質2年ぶりぐらい。
この池袋でも先日かけているようで、15分でもできることが分かったらしく、
今後も寄席で聞くことができるかもしれません。
久しぶりに聞きましたが、さすが面白いですね。
「ぐるんぐるん」のポーズも久しぶりに思い出しました。
67歳という年齢を公表しつつ、ここまで頑張る小ゑん師匠。さすがです。

混雑の影響もあってか押しに押して持ち時間が7分少々の小猫さん。
初春の鶯から始まってヌーまできっちりと。
客席全員でヌーの鳴き声をやるのはおそらく初めてでしょうか。

トリの白鳥師匠。
この日は最初に口演時間が50分あると宣言してからネタに入ります。
昨年2度ほど聞いていますが、話の筋の細かいところも聞くと思い出しますね。
今年ならではのネタや、小ゑん師匠の「ぐるんぐるん」なんかもネタにしつつ、
開場を熱狂の渦に巻き込んでいきます。
売れない若手落語家の悲哀は白鳥師匠の若手時代そのもの。
その当時は全く受け入れられない新作であっても、
時代が変わり、客が変わるとコロナ禍にありながら、
立ち見客が出るまでの盛況をもたらすことができる。
なにごともうまくいかないからと腐っちゃいけないんですよね。
爆笑に次ぐ爆笑、ナンセンスなネタも多々あるんですが、
この噺の根底にはそんなテーマがあるのかもしれません。

噺が終わった後で会場全体で三本締めで終了と相成りました。
今年もおそらくこれで落語納めになります。
一年の最後に大変に満足な一日を過ごすことができました。

恐懼謹言。

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