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金融政策と雇用と賃金の関係 高橋洋一

2023-03-08 21:53:11 | 日記
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 金融政策と雇用と賃金の関係
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      高橋洋一


【日本の解き方】金融政策と雇用と賃金の関係 日銀総裁候補の植田和男氏は無難な説明だったがもっと踏み込んでもよかった 

日銀総裁候補の植田和男氏は所信聴取で、「構造的に賃金が上がる状況を作り上げる」と述べた。金融政策と賃金はどのような関係なのか。

欧米の中央銀行の責務には、しばしば「物価の安定」だけでなく「雇用の確保」があるとされる。そこでは物価上昇率と失業率の間に一定の負の相関関係があることが前提だ。これは「フィリップス曲線」といわれている。

もともと、経済学者のフィリップス氏は英国の長期データに基づき、名目賃金上昇率と失業率との間に負の相関があることに着目した。これは、失業率が低く労働市場が逼迫(ひっぱく)しているときには名目賃金上昇率が大きくなるが、失業率が高くなり余剰人員が多くなるにつれて名目賃金上昇率は次第に小さくなるからだ。この関係が元々のフィリップス曲線だ。

名目賃金上昇率と物価上昇率との間には正の相関がある。このため、物価上昇率と失業率の間にも負の相関関係がある。そして名目賃金上昇率は物価上昇率を若干上回るが、その差は労働生産性により基本的に決まってくる。

以上の考察から分かるのは、物価上昇率、名目賃金上昇率、失業率の間には一定の関係がある。その意味では、物価上昇率以外の名目賃金上昇率や失業率も中央銀行の目標となり得る。
 しかし、中央銀行の実務で数値目標になっているのは、基本的にインフレ目標としての物価上昇率にとどまり、名目賃金上昇率や失業率は「雇用の確保」という定性的な責務として語られることが多い。

この点について、植田氏は「日銀法の記述は第一義的に物価の安定、それを通じて国民経済の健全な発展に資するとなっている。私の学者としての理解は次のようなもの。物価の安定は経済にとって極めて重要なインフラだと考えている。インフラが確保されることによって一般の国民はマクロの物価が変な方向に動くことを心配せずに家計や企業としての経済活動に全力で取り組むことができる。無駄な心配を起こさせないための物価の安定が第一の仕事。それが達成されると国民が自由に経済活動を活発に行い、その結果として生産性が高い水準で伸びていく
可能性がある。それが実質賃金の上昇にもつながる」と話している。

かなり無難な答弁であり間違いではないが、賃金上昇率や失業率を明示的に数値目標としないのは、おそらく物価上昇率は政治が絡みにくいが、名目賃金上昇率や失業率を数値目標とすると、雇用慣行や制度に依存する部分も多いという政治的な理由からではないだろうか。

しかしながら、もっと雇用の確保に踏み込むべきという議論があるだろう。つまり、金融政策により実質金利に働きかけ設備投資や輸出という有効需要を変化させ、その結果、失業率を低くして、名目賃金上昇率を高めると説明できる。この観点からみると、植田氏の説明は物足りない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


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