━━━━━━━━━━━━━━
大激変に目醒(めざ)めぬ日本
━━━━━━━━━━━━━━
【櫻井よし子 美しき勁き国へ】
ウクライナ侵略戦争の結果、世界情勢も安全保障環境も激変した。欧米 諸国が完全に適応しつつある中で、わが国の認識は緩く鈍い。
変化の大きさは核の問題においても際立つ。米国が初めてロシアの核の 脅しに屈し、軍事侵攻を許した。結果、これからの世界は中露両国の核に 対する戦闘的な考え方に直面することになる。
プーチン露大統領が大東亜戦争末期の日本降伏の経緯に強い関心を抱い ているとの指摘がロシア問題専門家の中にある。核攻撃でウクライナを降 伏に追い込むプーチン氏の意図を示唆する情報ではないか。他方、ロシア を擁護する中国の習近平国家主席はすさまじい勢いで核戦力強大化を続行 する。
米政策研究機関「ハドソン研究所」のクレピネビッチ上席研究員が米外 交専門誌「フォーリン・アフェアーズ5、6月号で、中国の核戦力の急速 な増強で世界は米露核二極体制から米中露の三極体制に入った結果、各国 が問題解決の手段を核使用に求める危険性が増す、三国間の核戦力競争が 激化し、世界はより危険になると予測した。
その上でクレピネビッチ氏は、最も危険なのが中国の抑止の考え方だと する。西側諸国は核はまず抑止力と位置づけ、相手の攻撃を思いとどませ るためにこちらにも強くて速い核があるを示す。しかし、習氏は、核は抑 止だけでなく、目的達成に使える強い圧力手段ととらえているという。核 攻撃の回避という、いわば受身の抑止にとどまらず、積極的に核で脅して 相手を中国に従わせることを意図しているというのだ。また先述のように プーチン氏は核は勝利をもたらすための武器だととらえている。
中露の核に対処するには米国は核戦力の倍増が必要だが、クレピネビッ チ氏はそれは困難だと見る。
自国の核の使用が第三次世界大戦につながると恐れる米国が、米国の核 戦力が相対的に弱まるとみられる三極体制の下で、日本を拡大抑止の核の 傘で守ってくれると安心してよいのか。否であろう。わが国は欧米諸国よ りもなお真剣に核や安全保障問題に向き合わなければならないが、それが できていない。
日本の最大な脅威は中国だ。彼らはウクライナ侵略戦争の後、大国の地 位を確立した米国に取って代わる夢を描く。日米関係を引き裂いて日本を 中国圏内引き入れ、影響下に組み込むのが中国の戦略だ。
習氏はウクライナ戦争の混乱の中でも着々と戦略を進める。4月21日、 中国海南省で開かれた「ボアオアジアフォーラム」で「世界安全保障構 想」を提起した。習氏の世界戦略、「人類運命共同体」の安全保障版である。
直近の事例が4月の中国とガダルカナル島を含むソロモン諸島との安全 保障協力であろう。太平洋上での米豪間の連携を断ち切る楔(くさび)とも なる島に中国が手を掛けたのだ。これに先立ち、中国は2月、南米大陸の アルゼンチンを一帯一路に取り込む覚書を交わした。1月にはロシアの足 元で中央アジア5カ国と「中国・中央アジア運命共同体」の構想を表明し た。昨年11月にはアラブ首長国連邦(UAE)での軍事施設の建設も明ら かになった。
中国は昨年9月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加申請し たが、2カ月後には、デジタル貿易に関する新たな枠組み「デジタル経済 パートーナーシップ協定(DEPA)」にも加盟を申請した。デジタルに よる情報管理は中国共産党の最も切望するところだ。
彼らは2014年以降、世界インターネット大会を開催し、昨年9月には、 デジタル分野での運命共同体の構築を打ち上げた。
中国共産党は軍事、情報、経済分野で人類運命共同体のスローガンを打 ち出し、国際社会のリーダーたらんとする。その上で大国の地位を強い核 で担保し、台湾問題など解決困難な課題も必ず中国の考えに沿って解決す る強い決意を隠さない。
この中国の脅威をわが国は直視できているか。核戦力についてどこまで 現実を見てとっているか。中国の脅威にどんな戦略で立ち向かうのかと問 うと、多くの日本人は日米同盟の強化、と答える。だが、中国の戦略目標 は米国を凌駕(りょうが)する強い帝国の樹立だ。彼らの核は米国が予想 する「2030年に1千発」の水準では止まらないだろう
米国が中露両国の核戦力に対峙(たいじ)しなければならないとき、日 本の国防戦略が「日米同盟堅持」で十分なはずはない。日本は日米同盟重 視とともに、自立を目指す必要がある。まず、憲法改正である。その中の 一つであり当面の焦点の一つでもある核に関しては明確な政策を打ち出す ことが必要だ。
その意味で自民党安全保障調査会が4月に政府に提出した提言は弥縫 (びほう)策である「反撃能力」の保有を認め、今後5年で国防費を国内 総生産(GDP)比2%以上をめどに引き上げるとしたことの意義は認め るが、根底にある国防意識も、国家像についての考えも変わっていない。
危機に直面して自国を守ることは自明の理である。危機に際して、命や 財産よりも大切なものがあるという価値観、国家は守るべきもので守らな ければ滅びてしまう。それでよいはずはないという考え方、国家観が、自 民党から伝わってこない。なぜいまだに憲法9条の精神とされる「専守防 衛」を引きずるのか。なぜ世界大激変を目撃しながら岸田文雄首相は非核 三原則を国是というのか、納得し難い。
いま首相の最重要な責務は日本国の危機に正対できる国民意識を醸成す ることであろう。空想的平和主義を捨て、国家防衛の大切さについて、首 相自ら語るときだ。中国の脅威に立ち向かうには、日本国が独立国として の気概を持つことが大事でその第一歩が憲法改正である。政治家がまずそ のことを認識し、全力を傾けて日本の目醒(めざ)めを実現すべく国民に 説くべきである。
大激変に目醒(めざ)めぬ日本
━━━━━━━━━━━━━━
【櫻井よし子 美しき勁き国へ】
ウクライナ侵略戦争の結果、世界情勢も安全保障環境も激変した。欧米 諸国が完全に適応しつつある中で、わが国の認識は緩く鈍い。
変化の大きさは核の問題においても際立つ。米国が初めてロシアの核の 脅しに屈し、軍事侵攻を許した。結果、これからの世界は中露両国の核に 対する戦闘的な考え方に直面することになる。
プーチン露大統領が大東亜戦争末期の日本降伏の経緯に強い関心を抱い ているとの指摘がロシア問題専門家の中にある。核攻撃でウクライナを降 伏に追い込むプーチン氏の意図を示唆する情報ではないか。他方、ロシア を擁護する中国の習近平国家主席はすさまじい勢いで核戦力強大化を続行 する。
米政策研究機関「ハドソン研究所」のクレピネビッチ上席研究員が米外 交専門誌「フォーリン・アフェアーズ5、6月号で、中国の核戦力の急速 な増強で世界は米露核二極体制から米中露の三極体制に入った結果、各国 が問題解決の手段を核使用に求める危険性が増す、三国間の核戦力競争が 激化し、世界はより危険になると予測した。
その上でクレピネビッチ氏は、最も危険なのが中国の抑止の考え方だと する。西側諸国は核はまず抑止力と位置づけ、相手の攻撃を思いとどませ るためにこちらにも強くて速い核があるを示す。しかし、習氏は、核は抑 止だけでなく、目的達成に使える強い圧力手段ととらえているという。核 攻撃の回避という、いわば受身の抑止にとどまらず、積極的に核で脅して 相手を中国に従わせることを意図しているというのだ。また先述のように プーチン氏は核は勝利をもたらすための武器だととらえている。
中露の核に対処するには米国は核戦力の倍増が必要だが、クレピネビッ チ氏はそれは困難だと見る。
自国の核の使用が第三次世界大戦につながると恐れる米国が、米国の核 戦力が相対的に弱まるとみられる三極体制の下で、日本を拡大抑止の核の 傘で守ってくれると安心してよいのか。否であろう。わが国は欧米諸国よ りもなお真剣に核や安全保障問題に向き合わなければならないが、それが できていない。
日本の最大な脅威は中国だ。彼らはウクライナ侵略戦争の後、大国の地 位を確立した米国に取って代わる夢を描く。日米関係を引き裂いて日本を 中国圏内引き入れ、影響下に組み込むのが中国の戦略だ。
習氏はウクライナ戦争の混乱の中でも着々と戦略を進める。4月21日、 中国海南省で開かれた「ボアオアジアフォーラム」で「世界安全保障構 想」を提起した。習氏の世界戦略、「人類運命共同体」の安全保障版である。
直近の事例が4月の中国とガダルカナル島を含むソロモン諸島との安全 保障協力であろう。太平洋上での米豪間の連携を断ち切る楔(くさび)とも なる島に中国が手を掛けたのだ。これに先立ち、中国は2月、南米大陸の アルゼンチンを一帯一路に取り込む覚書を交わした。1月にはロシアの足 元で中央アジア5カ国と「中国・中央アジア運命共同体」の構想を表明し た。昨年11月にはアラブ首長国連邦(UAE)での軍事施設の建設も明ら かになった。
中国は昨年9月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加申請し たが、2カ月後には、デジタル貿易に関する新たな枠組み「デジタル経済 パートーナーシップ協定(DEPA)」にも加盟を申請した。デジタルに よる情報管理は中国共産党の最も切望するところだ。
彼らは2014年以降、世界インターネット大会を開催し、昨年9月には、 デジタル分野での運命共同体の構築を打ち上げた。
中国共産党は軍事、情報、経済分野で人類運命共同体のスローガンを打 ち出し、国際社会のリーダーたらんとする。その上で大国の地位を強い核 で担保し、台湾問題など解決困難な課題も必ず中国の考えに沿って解決す る強い決意を隠さない。
この中国の脅威をわが国は直視できているか。核戦力についてどこまで 現実を見てとっているか。中国の脅威にどんな戦略で立ち向かうのかと問 うと、多くの日本人は日米同盟の強化、と答える。だが、中国の戦略目標 は米国を凌駕(りょうが)する強い帝国の樹立だ。彼らの核は米国が予想 する「2030年に1千発」の水準では止まらないだろう
米国が中露両国の核戦力に対峙(たいじ)しなければならないとき、日 本の国防戦略が「日米同盟堅持」で十分なはずはない。日本は日米同盟重 視とともに、自立を目指す必要がある。まず、憲法改正である。その中の 一つであり当面の焦点の一つでもある核に関しては明確な政策を打ち出す ことが必要だ。
その意味で自民党安全保障調査会が4月に政府に提出した提言は弥縫 (びほう)策である「反撃能力」の保有を認め、今後5年で国防費を国内 総生産(GDP)比2%以上をめどに引き上げるとしたことの意義は認め るが、根底にある国防意識も、国家像についての考えも変わっていない。
危機に直面して自国を守ることは自明の理である。危機に際して、命や 財産よりも大切なものがあるという価値観、国家は守るべきもので守らな ければ滅びてしまう。それでよいはずはないという考え方、国家観が、自 民党から伝わってこない。なぜいまだに憲法9条の精神とされる「専守防 衛」を引きずるのか。なぜ世界大激変を目撃しながら岸田文雄首相は非核 三原則を国是というのか、納得し難い。
いま首相の最重要な責務は日本国の危機に正対できる国民意識を醸成す ることであろう。空想的平和主義を捨て、国家防衛の大切さについて、首 相自ら語るときだ。中国の脅威に立ち向かうには、日本国が独立国として の気概を持つことが大事でその第一歩が憲法改正である。政治家がまずそ のことを認識し、全力を傾けて日本の目醒(めざ)めを実現すべく国民に 説くべきである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます