沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル (2024年2月16日号) *講演会のお知らせ

2024-02-16 15:38:35 | 日記
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2024年2月16日号)
*講演会のお知らせ
 24日(土)に李登輝友の会、台湾セミナーで講演する。会員でなくとも参加申し込み可能。
以下、転載
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 選挙イヤーの先陣を切って台湾の総統・立法委員選挙が1月に行われ、総統選では民進党の頼清徳候補が当選し、与党が初めて3期連続して政権を担うこととなり、また、蔡英文路線を踏襲することも明確となり、台湾海峡の平和と安定を重視する日米や英豪などに安心感をもたらしました。

 一方、日韓関係や日米間の連携を強化することで抑止力を強化し、北朝鮮による核やミサイルの脅威から韓国を守るという戦略に立つ尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、一昨年12月に外交・安全保障の指針となる「自由・平和・繁栄のインド太平洋戦略」を発表していますが、この韓国で4月10日に行われる総選挙は、東アジアの安全保障を考える上で注目すべき大事な選挙です。

 尹大統領を支える少数与党「国民の力」と最大野党「共に民主党」、第3勢力「改革新党」の議席数がどのようになるかに注目が集まっています。韓国と米国は相互防衛条約を結ぶ同盟国ですので、韓国の国会情勢は日米韓の安全保障協力に直結し、台湾有事にも影響します。

 そこで、韓国の安全保障問題にも詳しい軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏に、米韓関係や日韓関係、日米韓の安全保障協力はどのように発展させてゆくのが望ましいのか、日米韓台の同盟はありうるのかなどについてお話しいただきます。

 セミナー終了後は、講師を囲んで懇親会を開く予定です。ご参加の方は、申し込みフォ
ーム、メール、FAXにてお申し込み下さい。

*参加は平熱の方のみとし、熱っぽい方は参加をお控え下さい。
*懇親会のキャンセルは、必ず前日までにご連絡ください。
当日キャンセルは参加費をお支払いいただくこともございます。

令和6年(2024年)2月吉日

日本李登輝友の会


やっぱり財布は底をつきかけていた   旧正月の中国、90億人が移動する筈だったが。。。。

2024-02-16 15:36:40 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)2月17日(土曜日)
        通巻第8136号  <前日発行>
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 やっぱり財布は底をつきかけていた
  旧正月の中国、90億人が移動する筈だったが。。。。
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 パール・バックの名作は『風と共に去りぬ』。英語はGONE WITH THE WINDである。
 「去った](GONE)と『サウスチャイナ・モーニングポスト』が皮肉を込めて報じた(2月16日)。中国の経済繁栄がおわり、不動産バブルが破綻し、贅沢を楽しんだ時代が去った、と多くの中国人が認識している実態を伝えた記事である。 

 中国の旧正月といえば獅子舞ならぬ龍舞いが練り歩く。世界中のチャイナタウン名物で凄まじい人出がある。コロナ禍があけて、旅行ブームが再開、旧正月の八日間の連休には90億人が移動すると当局が薔薇色の予測を出していた。
 旧正月がおわり、雇用の鳴る人は職場に戻る。失業者は職探しの続き。どれほどの人が動いたのか、最終統計はまだ発表されていないが、中間報告的な数字を見てみよう

 2月14日、この日一日だけの中国新幹線乗客は1425万人だった。上海から杭州、蘇州などの名勝見学が圧倒的で短距離が特徴。1月26日から2月14日までに中国の国内新幹線を利用した人は2億3000万人だった。

 「安い、近い、短い」(安近短)が合い言葉、杭州から香港への「日帰り」ツアーも新記録となり、また日頃地方の庶民とは無縁の北京、上海、哈爾浜への国内旅行もやや盛況だった。

 香港旅行がなぜ「日帰り」かと言えば、店が完全に休みとなって買い物が出来ないこと、ディズニーはアトラクションが少なくて魅力に乏しく、幸運の占い、神頼みは黄大山へ行く。そもそも香港人は自由を弾圧されたため中国人を歓迎しない。

かわりに中国人が集中したのはマカオだった。通年でも一日平均12万人の博徒が襲来するが、旧正月は一日平均20万人、旧正月五日間で90万人にのぼった。不景気だと、逆にギャンブラーが増えるわけだ。

 海外旅行の行き先はタイ、次にマレーシア、シンがポールである。いずれも中国人にはビザが不要。また格安航空券も稼ぎ時なのに、上海─済州島が2・6万円、昆明からシンガポール往復が2・8万円だった。
タイは中国人ツアーが二倍となって入国審査に三時間。旧正月期間中、45万人強が訪れた。通俗的にエメラルド寺院や暁の寺にも行くが、中国人ツアーがまっさきに行くのはバンコックやチェンマイのチャイナタウンである。

 あれほどの日本ブームはやや冷却した。中国人のアンケートで「一番行きたい国」のトップは日本だった。2019年のピーク時、中国人の日本旅行は960万人だった。2023年は回復基調だったとは雖も、往時の四分の一、240万人だった。

 インバウンドを期待した旅行業者の思惑はおおきくはずれ、ツアー客が殆どいなくなった。個人旅行が増えたのはビザの関係と言われる。日本において嘗ての「爆買い」は蒸発したが、来日客は宝石、宝飾品、骨董に狙いを定めた。
 たとえば年代物のウイスキー。昭和の郷愁が残るフィルムカメラも骨董品でかれらの投機対象となる。一本三十万円もする包丁に名前を彫ってもらう一点買い。ブランド物もまだ人気があるものの、換金能力の高い順番に物色しているのが実態である。
日本製の日常実用品も人気がある。とくに医薬品、それも目薬から胃腸薬、化粧品、オロナイン軟膏の人気は高く、ドンキホーテでは「消せるボールペン」とかステンレスボトルとか、日本人があまり興味を聞かない品物が売れる。

日本でも風景が変わった。
外国人観光客のインバウンドは盛んだが、最大の理由は円安である。ドルの所有者なら嘗て200ドルだったビジネスホテルが120ドルくらいで宿泊できる。レストランは北東アジアのなかで一番安い。
「おもてなし」は世界的に有名で珍しくもない。観光地で騒がしかった中国人がほとんどいない。白人系、それも高級ホテルか、民宿組にはっきりと分かれた。ニセコも団体客はほとんど不在、個人旅行がスキーと温泉を楽しんだ。著者の近所に外国人で賑わう民宿的なホテルがあるが、早朝から深夜まで大きな荷物をごろごろと音たてて、地下鉄駅を往復しているのは白人が多い。あの中国人はどこへ行ったのか?

国家には機密があるが、AI時代には機密を何処まで保護できるか?   機密漏洩のアサンジ、米国送還となると懲役は175年

2024-02-16 15:34:35 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)2月16日(金曜日)弐
        通巻第8135号  
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 国家には機密があるが、AI時代には機密を何処まで保護できるか?
  機密漏洩のアサンジ、米国送還となると懲役は175年
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 ジュリアン・アサンジはウィキリークスの創始者。西側の機密文書をつぎつぎと暴露してロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んだ。しかも七年間も同大使館に居座ったが、ついに御用となって、英国の裁判は米国へ送還するか、どうかを審議する。
米国送還となれば、おそらく懲役175年となる。

比較されるのがCIA工作員でありながら米国の機密文書を英国の左翼新聞『ガーディアン』などに漏洩したエドワード・スノーデンだ。かれはモスクワに亡命し、ロシアの市民権を与えられて英雄扱いだ。オリバーストーンもスノーデンの映画を製作した。

エクアドルはなぜアサンジを匿ったのか?
第一の理由は病的な反米姿勢だが、不思議なことにエクアドルの通貨は米ドル。反米は南米に拡がる風土病かもしれない。あのガラパゴス諸島は、エクアドルに帰属する。

2019年4月になって、エクアドルのモレノ大統領は「アサンジ容疑者が大使館を「スパイ活動の拠点として使っていた」と批判しはじめた。「アサンジは他国の内政に干渉するための設備を提供していた」と非難してエクアドルが7年間にわたっての保護しを中止した。「エクアドルは政情不安を引き起こすいかなる行為も非難する。なぜなら我々は主権国家であり、どの国の内政も尊重する」と述べ、急転直下、アサンジの拘束となった。

 波紋は地球の裏側に及んだ。アサンジは豪州生まれである。アルバニーズ豪首相は、アサンジの故郷への送還を許可するよう英国と米国の当局に求める動議に賛成票を投じた。2024年2月14日の豪議会で無所属のウィルキー議員が提案し、労働党政府の支持を得た。同提案は圧倒的多数で可決された。

 ロンドンのベルマーシュ刑務所に拘留されているアサンジは現在、米国への身柄引き渡し差し止めを求める控訴審の判決を待っている。結審は2月21日に予定されている。

 ブリンケン米国務長官は「アサンジに対する米国の政策は不動である」と発言しており、減刑や豪への送還はありえないと示唆した。


先進国が軒並み出生率を低下させているが   何れ国家の衰退と分裂を助長し、移民が国を乗っ取る懼れはないのか?

2024-02-16 15:32:47 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)2月16日(金曜日)
        通巻第8134号  <前日発行>
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 先進国が軒並み出生率を低下させているが
  何れ国家の衰退と分裂を助長し、移民が国を乗っ取る懼れはないのか?
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日本の新生児は2024年2月15日のNHKニュースで、726000人(23年の推定値)、出生率は1・2とでた。
 この日本より出席率の低い国が韓国、台湾、香港である。2022年統計で韓国の出生率は、なんと0・78だった。

 中国などでも同じ傾向が続いており、日本より低いと推定される。因みに台湾の出生率は、2023年度のCIA推計で1・09,香港は1・23。G7(先進七カ国)の出生率を見ておくと、フランスが2・02,米国1・84,英国1・63,ドイツ1・58,カナダ1・57,イタリア1・24(このCIA統計では日本は1・39で実態より高い数字だった)。先進国が日本よりやや高いのは移民が押し上げているからである。

 韓国国立青少年政策研究所が2月14日に発表した調査結果では「結婚が必要だ」と考えている十代の若者は10人中わずか3人だった。また「結婚したら子供を産むことが不可欠だ」と考えている若者はわずか19%だった。この韓国の調査は2023年の5~7月、全国の小中高生7718人を対象に実施された。

なぜかくも急激に若者たちの価値観が変化したのか。
韓国の男子で「結婚は義務である」と考えているのは、2012年の82.3%から23年には39.5%まで減少した。女子学生は 63.1 パーセントから 18.8 パーセントに減少した。
 彼らの約81.3パーセントは、男女は結婚せずに同棲できると信じており、91.4パーセントは外国人との結婚に反対せず、あまつさえ52パーセントが同性婚を認めている(『ジュスト・ファクツ・ディリー』、2024年2月7日)

 人生観、結婚観、家庭、家族の価値が激変している。同じ傾向は日本でも認められているが、韓国ほどではない。

 ▼女性は強い男性に憧れ、こどもを産みたいと熱望した時代

 世界史の興亡を振り返ると、強い男性に憧れた女性が、婚姻状態を抜きにしても、強い男性に抱かれ、たくさんの子を産んだ。それによって国力が富み、国民はエネルギーに満ち溢れ、新しい文明を築いた。ヨーロッパ文明はそして築かれたのだ。

適者生存が原則である。
この歴史の原則を適用すると、出生率の低い国は衰退せざるを得ない。逆に出席率の高い、ベトナム、インド、インドネシア、パキスタンなどはこれからも逞しく成長をつづけるということになる。

出生率の低さを補う政策が移民である。
民族単位を除外すると、欧米先進国は、その国内で人種に逆転が起こる。端的にいえばアメリカの白人人口比率はまもなく過半を割り込む。いまでさえ、国内は分裂しているが、この傾向に拍車をかけ、国内戦争を勃発しかねないだろう。
国家の衰退と分裂を助長し、移民が国を乗っ取る懼れはないのか?

アメリカはとうにワスプの国ではない。コアパーソナリティが変わったのだ。
そして、この移民が、アメリカでは有権者登録をいとも簡単にできる。移民の奨励とは民主党政権の票田であり、選挙予測をいっそう難しくしている要因である。

 イーロン・マスクはXへの投稿で、(1)不法移民は「連邦選挙での投票を妨げられない」、(2) 「投票するために政府発行の身分証明書は必要ない」、(3)民主党は「有権者を輸入している」と書いた。

有権者登録に政府発行の身分証明書や市民権の証明は必要がない。
「公共料金請求書」や「銀行取引明細書」でも法律を遵守するには十分なのである。連邦法と全 50 州の法律では、連邦選挙に有権者登録するには米国市民であることが求められており、連邦法は有権者登録のために市民権を偽って登録することを禁じている。

ヒスパニック系の13%は、2013年に有権者登録をしていたことを認めた。不法移民の 14% が2012 年に有権者登録をしていたことを認め、9% が 2012 年の米国大統領選挙で「間違いなく投票した」と述べた。
国勢調査局は米国に不法移民による成人がおよそ2,000万人いると推定している。
そのうちのわずか5%が投票したとしても、連邦選挙ごとに100万件の不法投票が投じられることになる(なるほどこれがバイデンの秘密兵器か)。

不法移民の民主党への偏った投票は、違法か合法かを問わず、米国移民組に無料の医療、恩赦、市民権を与えるという民主党政治家の言動と一致している。
移民2,900人を対象とした2012年の世論調査では、62%が民主党員、25%が共和党員、13%が無党派だった。


反スパイ法のない日本、外事警察の苦闘         櫻井よしこ

2024-02-16 15:31:21 | 日記
わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
                 頂門の一針 6778号 

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 反スパイ法のない日本、外事警察の苦闘
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            櫻井よしこ

わが国は、四桁に迫る数の自国民を北朝鮮という国家権力によって拉致されたまま、約半世紀、取り戻せないでいる。

13歳で拉致された横田めぐみさんは59歳になった。母上の早紀江さんは、日本はなぜ、国民を取り戻せないのかと問い続け、新しく拉致担当大臣が就任する度に「真剣に取り組んでほしい」と要望する。歴代内閣は拉致解決を政権の最優先課題と位置づけるが、吉報は未だ訪れない。

第二次安倍政権の7年8か月間、安倍晋三総理を支えて国家安全保障局長等を務めた北村滋氏は、近著『外事警察秘録』(文藝春秋)の冒頭で当時の拉致問題への取り組みを記した。めぐみさんのものとされる遺骨が螺鈿(らでん)装飾の漆器調の器におさめられて日本側に手渡された時、その遺骨は警視庁鑑識課で横田御夫妻に示された。目に涙を浮かべた父上の横田滋さんが無言で坐る傍ら、早紀江さんが沈黙を破った。

「めぐみは生きていますから。これは警察の方でしっかりと調べて下さい」

早紀江さんは毅然と言い、「遺骨」を証拠として鑑定処分に付することを承諾して下さった。「それは娘の生存に対する確固たる信念の発露」だったと、北村氏は書いた。

周知のように、遺骨はめぐみさんとは無関係だと判明し、日本国内の怒りは頂点に達した。だが、振りかえってみれば拉致は金正日総書記が2002年に認めるまで日本での関心事にならなかった。遡って1988年3月、梶山静六国家公安委員長及び警察庁の城内康光警備局長が、「一連のアベック失踪事件は北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚」と答弁した。

北村氏の指摘だ。

「拉致事件について国会で閣僚と警察の責任者が断言し、それと前後して日本人が拉致されたことを示す具体的な情報が複数取りざたされていたが、それでも捜査に追い風は吹かなかった。北朝鮮の国家犯罪の追及は当時、日本政界を支配していたムードに逆行するものだったのだろう」

事実、89年7月には土井たか子、菅直人の両衆院議員らが北朝鮮の工作員・辛光洙の釈放を求める要望書を韓国に送り、90年9月には自民、社民両党が「金丸訪朝団」を結成して訪朝した。当時は日朝友好親善の機運が高まっていたのだ。

世界一、与し易い国

警察が拉致を防げなかったこと、捜査が進捗しないことについての批判は依然として強い。北村氏は言い訳するつもりはないとしたうえで、日本国の体制に注視する必要性を指摘する。まず第一に、スパイをはじめわが国の国益を深刻に侵害する犯罪を直接、適切な量刑で処罰する法律がないことだ。米国では死刑、終身刑、数十年の懲役刑となるような犯罪が、わが国では北朝鮮のスパイ事件に見られるようにほぼ全員、軽微な刑罰にとどまると北村氏は指摘する。

警察庁が認定してきた1950年から81年までの北朝鮮スパイ事件42件に限れば適用された罪名は「出入国管理令違反」等の微罪にすぎず、執行猶予が付くケースが多いという。

第二次安倍政権が「特定秘密の保護に関する法律」(特定秘密保護法)を難産の上成立させたとはいえ、今もまだ拉致問題に典型的に見られる対日有害活動を直接処罰する法律は制定の動きすらない。安全保障に疎いわが国の、これが現実である。

『外事警察秘録』の頁をめくる度に、日本の安全保障体制が法的にも国民の意識という点においても如何に貧弱かを思い知らされる。北村氏が41年間のキャリアを振りかえって取り上げた事件は拉致問題、重信房子の日本赤軍、麻原彰晃のオウム真理教、暗躍する中国スパイなど、実に幅広い。一連の事例から浮かび上がるわが国の姿は、悪意を持った犯罪者にとって恐らく、世界一、与し易い国のそれではないだろうか。

日本と日本国民を守る手段(法整備)に事欠く中で、北村氏らは国内世論の無理解、日本政府内に蔓延する気概の喪失とも戦わなければならなかった。たとえばオウム真理教事件で、早急に打つべき手のひとつが麻原彰晃ら最高幹部の国外逃亡阻止だった。

彼らは当時頻繁にロシアに渡り、レーザー兵器、ウラン、軍事用ヘリコプター、毒ガス用の検知器、自動小銃などを入手した可能性があった。そこで北村氏ら外事警察は「旅券法に基づいて、麻原に旅券返納命令を出してほしい」と外務省に要請。95年3月30日、警察庁長官の国松孝次氏が狙撃された当日のことだ。外務省担当者はこう返答したという。

「返納命令を発出してもし報復テロの対象として我々が狙われたらどうなりますか。警察庁長官ですら銃撃から守れなかった日本警察に部外者の我々を守り切れるのですか」

テロリストの思う壺

最終的に旅券返納命令は発出されたが、恐怖心を煽って政治的目的を果たそうとするテロリストの思う壺にはまっている日本の姿がそこにあった。氏はまた警察庁外事情報部長だったとき、スパイ事件に関する日米の分析検討会議に出席した。日本の摘発事例を説明した際、米側の出席者がたまりかねた様子で尋ねた。

「日本警察が摘発した事件では、そもそも公訴の提起がなされなかったり、スパイ協力者に対する求刑が懲役一年から二年程度だったりすることが多い。判決では執行猶予が付され、釈放されるケースばかりだ。なぜなのか」

日米同盟という関係の中で、日本から情報が漏れれば米国も一蓮托生だ。米国側が懸念するのは十分に理由のあることなのだ。

北村氏は、日本の刑事法にはスパイ行為を直接罰する罪が存在しないこと、したがって捜査機関は、スパイがその情報を入手するためのプロセスを徹底的に精査し、あらゆる法令を駆使して罪に問える罰条を探し、スパイ協力者はその共犯として立件すると説明したが、到底、理解してもらえなかったという。

「米国では、情報を漏らした者はもとより、情報を探知し、盗み出した者を、より重罪とする。量刑は最高で死刑だ。(中略)終身刑や被告の寿命を遥かに上回る数十年の拘禁刑という事例も散見された」

北村氏はこう書いたが、これは中国、ロシアを含めておよそ世界の国々の常識であろう。

インテリジェンスの専門家が振りかえる安倍政権、7年8か月の軌跡は、案件のひとつひとつが生々しい記憶をよび起こす。独立国としての日本の再起に文字どおり命をかけた安倍晋三総理。第二次政権発足の翌日、内閣情報官としての第一回総理ブリーフィング(報告)を終えて退出する北村氏に安倍総理が声をかけた。

「これからも時々、報告に来てください」

週一回だった定例報告はそれ以来、週二回となった。安倍総理はインテリジェンス報告に多くの時間を割いた。情報こそが国の命運を決することを正しく理解していた宰相なき後、わが国の前途は多難である。