剱岳山行⑥
仙人池に写るモルゲンロートの裏剱、八ツ峰
2009年8月19日(水)(第4日目)
【行程】7:00仙人池ヒュッテ発→9:15仙人温泉小屋9:45→雲切新道→12:45雲切新道終点(大休止・昼食)13:40→15:10阿曾原温泉小屋(泊)
朝5時から仙人池畔で裏剱モルゲンロートを撮影するために待機。すでに同宿の登山者の皆様もカメラをセットして待機中。徐々に明るくなってきたが、朝日に薄雲がかかっているのかいまいち「燃えるようなロート」にならない。まあしかしそれなりに赤くなった八ツ峰、チンネ、ジャンダルム、少し見えにくいがクレオパトラニードル、そして僅かに見える剱岳本峰の裏剱のヨーロッパアルプスを思わせるような見事な山並みを写真に収めた。
モルゲンロートのジャンダルム、チンネ、八ツ峰の頭、剱
岳本峰、クレオパトラニードルの針峰群
朝食を済ませ、静代オーナーと別れを惜しみ朝7時のゆっくりした出発。仙人谷を降りていくが、道は崩落があったりしてはっきりいって余り良くない。多少難渋して歩いていくとやがて雪渓のトラバース。雪渓を慎重に渡りさらに行くとやがて対岸の中腹に仙人温泉の源泉の湯気がもうもうと立ち上るのが見える。湯気を見ながら少し行くと道端の大岩にペンキで「お疲れさま 仙人温泉小屋」と書いてあり、その先に昨日宿泊予定だった仙人温泉小屋があった。ここまで2時間15分。コースタイムでは1時間15分~30分とあるが、それは登山道が良くて軽い荷物の条件の時だろうと思う。
仙人温泉小屋でポカリスエットを飲み小休止後出発。従来は仙人谷をそのまま降り阿曾原温泉小屋まで直接行ったのだが、現在は仙人谷が崩落やらで通行不可能となっており、対岸に渡り仙人温泉源泉の横を通り、雲切尾根に取り付いていく雲切新道を行くこととなる。
わが一行は仙人温泉小屋を振り返りつつ、雲切新道のピークを目指して歩く。道は整備されている。1645メートルのピークからは降り。尾根を忠実に降りるが要所要所には鎖やフィックスロープ、梯子が整備されている。新道を作ってこられた皆さんの多大なる労力と努力に感謝感激しつつも、これを逆に登って来るとしたら中途半端な労力ではないなと感嘆するような道であった。途中昨日仙人新道で追い越された2組の中高年のご夫婦が、本日は先行されていたのだが抜きつ抜かれつになっていろいろ話しながら降りてくる。やがて雲切尾根の終点の沢に到着しここで昼食大休止。沢の水で顔を洗いタオルを洗い少し飲んでみたが、甘くは無いが美味しい。軽く体を拭き最後の行動食を食べる。
昼食後沢にかけられた丸太橋を渡り阿曾原を目指して更に歩く。ここからはアップダウンという道ではないがところどころにフィックスロープが張られている。しばらく行くと仙人ダムが見えてくる。さらに行くと仙人ダムサイトに降りていく梯子がある。この梯子がちょっと曲者で下に着地点が見えない。それどころか「ストーンと」ダム湖に落ちていく感じ。ダム湖が「おいで、おいで」と言っている。そんな多少ビビる梯子で、とにかく慎重に降りていく。とにかくダムサイトに降り立った。もっともダムサイトと言っても立派な道があるわけではなくダム湖のコンクリート辺にむりやり取り付けられた土道の「へツリ道」だが、ダムに向かって歩いていく。ダムに上り管理事務所の中を通り、熱気の充満する作業トンネルを通り、トンネル内のトロッコ軌道を横断し、「熊の侵入を防止するため必ず閉じてください」旨書かれた鉄柵扉から、やっと外に出る。関西電力の立派な鉄筋の宿泊所や管理棟が立っている。この秘境の山中にダムだけでも違和感があるのに、鉄筋の建物まである。しかしなぜか不思議と大自然の中に溶け込んでしまっている感じもする。これは自然の懐の深さなのか偉大さなのか。
さて、ここから水平歩道まで再び登り。30分ほどのアルバイトの後、阿曾原までの水平歩道に出る。これは明日の黒部水平歩道の予行演習。40分ほどの水平歩道の後阿曾原温泉小屋への降路となり、15時10分小屋着。
阿曾原温泉小屋のオーナーは佐々木さんで、長年富山県警山岳救助隊として活躍してこられた。現在「念願の」山小屋オーナーとなられ、毎年黒部下の廊下の登山道の整備を率先して行っておられたり、雲切新道を構想し実際に切り開いてこられたり、登山者には歯に衣を着せない厳しく辛口ではあるが適格なアドバイスをされている。昨日の静代オーナーともども一昨年のNHKスペシャルで大きく紹介されている。
本日は源泉かけ流しの阿曾原温泉の露天風呂に浸かり、わが山行フィナーレ前夜の感慨に浸る。しかしまだまだ。登山は無事ゴールして完了なのだ。明日も気を抜かないように。
<続く>
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