"いそ"あらため、イソじいの’山’遍路’紀行’闘病、そしてファミリー

“いそ”のページは、若者のキャリア形成を、目一杯応援するためにも“いそ”改め“イソじい”でリニューアル。

パライソメッセージ20131220 No.36

2013-12-21 13:49:43 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.12.20 N0.36

  Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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  「パライソメッセージ20131220 No.36」を送ります。本メールが「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 特定秘密保護法に引き続き、共謀罪の立法化が取りざたされている。また、集団安全保障を巡っては『積極的平和』などと御託を並べ、憲法違反の戦争参入へと突き進もうとしている。こういった強引な右傾化、軍国主義化は単に安倍首相の個性だけではないという思いがする。自民党総裁が自らの自民党に対する批判や支持率急降下に平然であるわけは無い。自民党議員が地方に戻れば批判の渦に巻き込まれ、更には次回選挙で落選する現実的なリスクがある。であるにもかかわらず自民党首である安倍首相をしてここまで強引に、クーデター的に政治のトレンドを捻じ曲げようとさせているのは一体何か。以下、私の分析と批判。

 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:『特定秘密保護法』を告発する②

(特定秘密保護法を強行した内的要因と『公約違反・裏切りの政治』を強いるのは『誰』だ!)

 特定秘密保護法の拙速な強硬が、アメリカの待ったなしのデフォルトが外的な要因だろうということは前章で述べたが、もう一方で、安倍自民党政権の内適な“事情”を考えてみたい。

 7月の参議院選挙で自民党が圧勝し、権力に媚へつらう公明党との連立政権が国会で安定多数を占めて以降、参議院選挙で一切公約にも論点にも挙げてこなかったどころか公約違反も含め、国民の利益に反する悪法が次々と法令化されてきた。消費税増税法の強行、増税分は社会保障のためといいながら震災復興税の法人税への1年前倒しでの廃止や法人税減税など大企業への優遇、社会保障の切捨て・自己負担の増大、TPPの交渉への参加、原発の推進、オスプレイの配備の拡大と我が物顔の訓練の実施、内閣法制局長の人事で集団安全保障を合憲と解釈する人物への挿げ替え、NHK経営委員に安倍首相の『仲良し』を強引に送り込む等々。こういった動きに対して、反原発や沖縄の反基地の運動、国内のオスプレイ配備反対等、国民・市民の新しい形の運動が広範に巻き起こっている。

 『政治家は二枚舌』等といわれることがよくある。多くの自民党議員は地元でTPPは絶対反対とか『守るべきは守る』等と言っている。沖縄でも自民党議員全員が『基地の県外移設』と言って議席を獲得した。それが民意でありそう公約しなければ議席を得ることが出来なかった。今、権力者の行っていることは公約違反であり、裏切りである。しかし、おそらく確信をもって公約違反や裏切りを自ら繰り返す政治家はまずいないだろう。彼らは有権者に対して後ろめたい思いをしているだろう。そして大変な後ろめたい思いをしつつ、次の選挙の心配をしているはずだ。そんな彼らをしておそらく意に沿わないであろう公約違反や国民への裏切りを、一体『誰』がさせているのか。

 そのことに言及する前に、こういった政治の流れの背景で、看過できない『本音の吐露』が繰り返されている。このことの背景を考えることによって『誰』を推測したい。

 この間の一連の政治家の動向で、特徴的な動きが見て取れる。党派は異なるが、橋下大阪市長は「慰安婦はやむをえなかった」と言い放ち、旧日本軍の残虐非道の行為に対して是認し合理化をしようとした。当然のことながら、世界中から轟々たる批判が起こると、「新聞(特に朝日新聞)が真意を書いていない」とマスコミのせいにしたり、「慰安婦制度はどこの国でもあった」と問題の本質が人格・人権に関わる根源的な問題であるにもかかわらず、弁護士らしくない低俗な論点のすり替えで居直り続けている。橋下市長の言動に対しては、世界中から批判され、大阪府・市民を先頭に広範な国民から連日にわたる抗議行動が繰り返された。しかし、彼は辞任も、何らかの責任を取ることもなく、未だに大阪市長に未練たらしく居座っている。彼が少し変わったところは、かつてはマスコミをコントロールし、彼のポピュリズムのためにマスコミを最大限に利用していたのが、最近はマスコミにへつらうような雰囲気が感じられることだ。

 麻生副総理・財務大臣は、7月に粛々と憲法を変えるためにナチスの憲法改定の『手口を学んだら』と言い轟々たる批判を浴びた。世界では全く通用しない低俗さどころかナチスを肯定すること自体が犯罪行為とされる国が多くある。ナチスは気付かれぬよう粛々とワイマール憲法を蹂躙したのではない。自ら国会に放火し、謀略的にドイツ共産党を弾圧・非合法化した上で、翼賛議会で全権委任法を制定し、憲法を蹂躙してファシズムへと突っ走っていったのだ。今日の権力者はすでに『ナチスの手口』を踏襲しているかのように、ナチスを髣髴させている。このような発言を行なったのに、麻生氏は『発言訂正・言い訳』でその場をしのぎ、責任を具体的に取らない。

 石破幹事長は7月に、軍事裁判所の設置と『戦争に行かないと死刑』と発言した。これについては取消しも謝罪も無い。日本国憲法はそもそも軍隊を持たず、戦争を放棄している。そのことが世界に対して大きな日本のステイタスになっているのに、一体何を言うのか。彼は更に今回の『テロ』発言である。これは取消しとは言うものの、不承不承で不満やるかたない雰囲気である。特定秘密に関わって、報道した報道機関に対して処罰されるとも言い、従来の説明と全く食い違い、さらにこのことに関しても取消しも無く、曖昧にしたままではないか。

 共通して、謝罪もせず責任も曖昧にする『本音の吐露』の本質は何か。誰が言わせているのか。

 私には、政治的にも経済的にも行き詰まり、打つ手も無く、一方で高まってくる市民運動を敵概視し、不安定な政権に業を煮やし、アメリカの巨大な重圧に重大な危機感を持つ優秀な官僚達が、強権的に政治を進めようとしているように見える。彼らはファシズムにしか生き延びる術がなく、ファシズムへの道へと国をリードしようとしているのだろうか。最近の政治家の動向が余りにも強引で拙速でしかも支離滅裂であるのをみると、どうにも一部エリート官僚による政治家コントロールの強い思いが実感してくる。次回は、それではどうすればよいのかのメッセージを書きたい。

(続く)

 

「一押しBook」

 

書名:「職業教育」はなぜ根づかないのか

著者: 田中萬年(たなか かずとし)1943年生まれ。職業訓練大学校卒業、職業能力開発総合大学名誉教授・博士(学術)。職業訓練、職業教育を現場で実践し続け、その実践から教育に対する批判的アプローチを深める。『働くための学習‐「教育基本法」ではなく「学習基本法」を』(学文社)、『教育と学校をめぐる三大誤解』(学文社)等の著作

出版社:明石書店 

書評:

 本書は、『教育』に対する根源的な疑問、Educationと『教育』への根本的な問題提起から、今日のキャリア教育への批判、そして氏のメッセージであろう『「働く」ための学習権の確立』と職業教育へと論点が進む。氏の世代や本書の読み出し『承前 教育問題の本質』からして、少し重たい、『そもそも論』的批判が軸かと思ったが、そうではなく大変真摯な『教育』論であり、豊富な事実検証、最近の論点や研究者への論評などで構成されており、真面目で丁寧な良書であった。

 何故日本では職業教育が根付かなかったのかを、メンバーシップ型(濱口桂一郎)といった日本型雇用形態から論及している。愛国心が強制され昔からの“富国強兵”の教育原理が伝統的に為政者にとって、教育のポリシーである。その誤謬を正し、個人の個性と能力が開花するすることが、本来のEducationではないか、といったメッセージを丁寧に伝えてくれる。

 

イソの評価:★★★★☆

蔵書:キャリアセンター資料にあり

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パライソメッセージ20131213 No.35

2013-12-13 21:56:04 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.12.13 N0.35

  Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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 「パライソメッセージ20131213 No.35」を送ります。本メールが「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 2013年12月6日、安倍首相、自民・公明の野党は、国民の轟々たる批判を省みず、それどころか石破自民党幹事長は、国民の大きな怒りの抗議行動をこの法律で特定されたテロと本質的に変わらないと言い、国民への抑圧と弾圧に露骨な意図を剥き出しました。

【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:『特定秘密保護法』を告発する①

(『特定秘密保護法』は世界の機密保護に関わる法律よりも、特別厳しいのは何故か)

 特定秘密保護法で特定される分野は、安全保障(防衛・軍事)、外交、テロ、スパイとされ、今回の強行採決で法律化し、お抱え評論家や一部のマスコミでは『他の先進国並にやっとなった』『同盟国(アメリカ)と情報が交換できるようになった』とか言っている。果たしてそうだろうか。確かに諸外国には、スパイ防止法やテロ防止法などの法律があり、刑事罰が厳しい国はある。しかし、それらの法律では、秘密にされるべき事項が明確に指定されており、事項に直接抵触しない情報については、むしろ積極的に公開され、秘密にされる事項そのものも期限が到来すれば全て公開される。厳格な機密事項外の情報は国民の判断に資するために公開され、マスコミもポリシーを持って報じているのが先進諸国の民主主義のひとつの形ではないか。

  一方わが国の特定秘密保護法はどうか。原案が30年後に原則公開と言っていたのが、維新の会が“修正”案として60年後公開と言うと、60年後に原則公開と、秘密の期間を倍にした上、公開についても“原則”として曖昧にし、実質的には永久秘密とした。また、何が秘密かということ自体が秘密である。秘密の事項は行政の長が定めるとなっている。行政機関の長とは、国では総理大臣であり、省庁では大臣であり、都道府県では知事・市長であるが、実態は官僚だ。つまり、官僚にとって“都合の悪いこと”はすべて秘密となる。チェック機関には総理大臣が関与するようなことも言われている。これでは自分で決めて自分でチェックすることになり、第三者機関には実効性が無いし、論理としてもおかしい。実態は官僚が決めて、長は追認するだけである。その長が“第三者機関”としてチェックをするという。こんな『秘密保護』をする国は世界にない。

 今日の現状を見れば、3・11東日本大震災での福島県の原発事故では、放射能飛散のSUPER1情報を秘密にした結果、避難が遅れ基準以上の放射能に、多くの人が晒された。原発のメルトダウンは長らく公表されず、未だに秘密(曖昧)にしたままであり、同様に多くの人が放射能に晒された。非核3原則を唱え、ノーベル平和賞を受賞した佐藤首相は、実は非核どころか核持込の核密約を締結し、アメリカ国会図書館でとっくに公開されているにもかかわらず、日本政府は未だに『密約はなかった』と言い張っている。同じ佐藤首相は1970年の沖縄返還時の日米地位協定による米軍基地に対する売国的協定については未だに存在すら認めていない。これは、当時の毎日新聞の西山太吉記者のリークで、彼が筋違いの公務員法違反の強制で厳しい刑事罰が課せられ、ことの本質が強大な権力によって握りつぶされた事件であった。これは山崎豊子さんの最後の小説「運命の人」のモデルになった事件である。

 これらは、世界の先進国に比して異質で大変恥ずかしい民主主義の不在であるのだが、今般の特定秘密保護法では、これらのことが曖昧になるのではなく、それどころか堂々と合法化されるということである。だから、諸外国からこの法の厳しさと民主主義破壊に対する懸念が表明され、危険性が指摘されているのだ。

 第一次安倍内閣の時に『共謀罪』が画策され、轟轟たる反対によって廃案となった。そのことによって第一次安倍内閣の辞職、国会解散、総選挙となり自民党政権が崩壊してしまった。ところが今回の安倍内閣では『共謀罪』の復活が図られている。特定秘密の漏えいに対する教唆、扇動、強要も刑事罰の対象とされている。よほど執念深い官僚機構なのか高級官僚なのか、とにかく陰湿な公安・警察官僚の影が国民に対して、ひしひしと圧力をかけ迫ってくる。

 これらの企みを勘案すると、こういう情景が想定される。

 デモ⇒デモはテロ(石破幹事長)⇒したがってデモはテロと本質的に変わりがないのであり(石破幹事長)、テロの扇動・強要だ⇒厳しい刑事罰。原発反対のデモ⇒原発はテロ対象で特定秘密⇒原発反対・原発情報公開要求の意思表示は特定秘密漏えいの強要に繋がる⇒厳しい刑事罰。TPPに反対⇒TPPは外交問題で特定秘密(現に厳格な秘密交渉が進められている)⇒TPP反対は特定秘密漏えいの教唆・強要になる⇒厳しい刑事罰、等々。多くのことがテロ(と決め付けられ)扇動・強要、あるいは反対の意思表示は教唆・強要とされることにより、官僚権力に反対の意思表示どころか、ものすら言えなくなってしまう。

 私たちは、真の情報を伝えることなく、大本営発表という権力者の統制のもとの腐敗・堕落しきった虚偽の情報操作で、300万人以上の犠牲者(日本人だけで)を出した痛苦の歴史を経験した。歴史の教訓は、国民主権者が自らの正しいジャッジメントを為すために、正しく・幅広い情報公開をすることを求めている。にもかかわらず、世界に類を見ない厳しい特定秘密法案を強行したのはなぜか。アメリカのデフォルトとの関連は前章で述べたが、その内的な要因を考えてみたい。

(続く)

 

「一押しBook」

 

 

書名:ブラック企業の見分け方~大学生向けガイド~

著者: 上西充子、今野晴貴、常見陽平

出版社:共著(ダウンロード用冊子、無料DL可)

書評:

 本冊子はブラック企業を社会問題と位置づけ、その対策を実践する関係者による著作。大学生向けにブラック企業の見分け方をわかりやすく解説してある。内容は充実しているが商業ペースの出版物とはせずに、学生も手軽に読みやすいように、無料でダウンロードできる冊子(資料)となっている。

 著名な方々で改めてだが、上西充子先生は法政大学キャリアデザイン学部教授で、学生の視点に立った研究・実践でご活躍中。今野晴貴氏は『ブラック企業』の著者。常見陽平氏は人材コンサルタント。ブラック企業の実態についての論評や現場の視点での解説、就職四季報の活用の仕方の平易で深堀した解説等、内容は小冊子ではあるが充実している。何よりも“上から目線”でなく、学生自身が主体的にブラック企業を見分けることができ、対応できるようにサポートする視点で書かれている。学生が主役を貫いている。

 何よりも、改めて勉強になるサジェッションも豊富。いい意味でのパラポラとして、良い会社の探し方にも繋がる。学生のみならず、大学の教職員や父母も是非一読することを勧めたい。現在首都圏の学生、教職員(大学に限らず)等に、大拡散、ブレイク中とのこと。

 

イソの評価:★★★★★

蔵書:以下のURLから無料ダウンロード可能   http://bktp.org/news/144

 

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パライソメッセージ20131206 no.34

2013-12-07 21:28:25 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.12.06 N0.34

 Mail : isokawas@goo.jp

   Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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  「パライソメッセージ20131206 No.34」を送ります。本メールが「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 『特定秘密保護法』が2013年12月6日の深夜に強行採決されました。この背景には、私は2月に迫っているアメリカのディフォルトの猶予期限との関わりが極めて強いと確信しています。まさしくこれは日米国家権力者による、戦後日本の原理・原則を根底から覆すクーデターであると思います。

【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:アメリカのデフォルト(債務不履行)が発するサジェッション④

(アメリカのデフォルトの最大の原因は、軍国主義と新自由主義③)

 アメリカには新自由主義者、つまり今だけ良ければ、自分だけ良ければと言う人たちにとってのパラダイスがある。つまり税金が0のエリアだ。このことは、以前に『一押しBook』で紹介した、堤美果さん著の『㈱貧困大国アメリカ』の第4章にレポートが記載されている。富裕層やヘッジファンドや投機筋たちが集まり、共同体での暮らしを営んでいる『町』には福祉も公的教育も公的扶助も何も無い。福祉や公的扶助などといった、社会的コストは徹底的に排除して、住民達が雇った武装ガードマン達が治安維持を請負い、貧困層は寄せ付けず、水道、電気などのインフラも調達し、教育も企業が請け負っている。受益者負担とはいえ、負担割合など一定のルールがあるのだろうが、それがどうなっているのかは分からない。

 一方では、デトロイトのように破産して福祉も公教育も公的扶助も無くなり、大変な凶悪犯罪の多発や治安の悪化、不衛生、教育崩壊で末世の様相をしている『都市』も全米で7市ある。それが今日の『貧困大国』アメリカの実相なのだ。今日のアメリカにおいては、新自由主義者のエゴイズムの本性は、まるでアメリカを胎内から蝕むインベーターのようではないか。

(もう一度、アメリカのデフォルトは“対岸の火事”では決してない)

 本章では、アメリカのディフォルトの最大の原因は、軍国主義と新自由主義だと言ってきた。10月末に緊急にドル国債の発行枠が拡大されることが決定されたが、その猶予期間は4ヶ月である。2014年2月末には再びデフォルトに直面するのは確実であるのに、いまや内外の世論は、過ぎ去ったトピックようにそのことをフォローしない。私は、この間の経済・政治等の動向を意識しながら見ている。そこで特徴的な最近の動向で、気になることを指摘したい。

(特定秘密保護法とアメリカのディフォルトは実は密接な関係があるのではないか)

 2013年12月5日の夜遅くに『特定秘密保護法』が国家安全保障特別委員会において自・公両党により採決が強行され、参議院本会議に送付されることとなった。『特定秘密保護法』については別途思うところを述べたいと思うが、この法案がまさにクーデターとでもいうようなやり方で強引に採決が強行されようとしている背景には、アメリカのデフォルトがあると、確信している。

 前に述べたように、アメリカは一貫して軍事大国であり、冷戦後も世界秩序をアメリカンスタンダードで、軍事力を行使しながら自らの世界戦略を構築してきた。しかしその戦略の欺瞞と誤りが、これも前にも述べたようにベトナムやイラクを始めとして検証され、汚点の歴史として記録されてきている。それが本年の化学兵器所有を介入への好日としたイランへの武力行使を、世界の世論に包囲され断念した事実となって繫がっている。しかしアメリカの本質的部分での軍国主義立国は全く変わっていない。アメリカは未だに圧倒的な軍事力を背景に、その使用も含めてアメリカンスタンダードの世界戦略構築を確固として目指している。

 今回の『特定秘密保護法』の秘密の対象は、安全保障、テロ、外交、スパイと言われてる。何ゆえに大急ぎで、クーデターとでも言うような強権で成立させるのか。それはつまり、財政破綻=デフォルトの一方の巨大な重石である軍隊も含めた軍事費を日本に肩代わりさせる。そのために集団安全保障の名の下に、アメリカの軍事戦略に組み込み、高度な軍事機密も日本に漏出させる。そのためには高度で極めて厳格な機密保護が必須となる。アメリカでの秘密保護に関わる法令どころではないもっと厳格な法令が必要となる。なぜなら、アメリカは徹底的に自国と自国の富裕層の利益を追求するし、他国の犠牲など全くいとわない。アメリカの共和党やティーパーティなどを見れば、極端なアメリカ至上主義が露骨である。アメリカが自国民を対象とする国内法よりも日本国民への法適用は、およそ人間性を持たないほどに厳罰を課し冷酷であるのは、この国の国民性の歴史を見れば明らかである。従って、待ったなしで『特定秘密保護法』を強行し、情報公開であったとしても『機密漏洩』として万死に値する極刑で日本国民を威圧・弾圧しながら軍備や軍事行為を日本に肩代わりさせることが、アメリカにとって喫緊のことである。

 アメリカのデフォルトの猶予期限が2月末に迫ってきており、日本の株価も乱高下の様子であるが、マスコミはあまり大々的には取り上げない。おそらくドル国債からヘッジファンドや多国籍企業の投機資金が日本の国債やら株にもシフトしてきているのだろう。株価の乱高下をセンセーショナルに取り上げると、どうしてもドルやドル国債売り、そしてアメリカのデフォルトが連想されるので、マスコミでは『そっと』しておいているのかもしれない。

  いずれにしても、アメリカのディフォルトが決して“対岸の火事”などではなく、それは、われわれの生活のみならず、日本国憲法や日本の平和をも重大に踏みにじろうとしているのであり、われわれがあきらめてしまえば、戦前の治安維持法の時代、ファシズムの時代への逆戻りの危険性も現実にありうることではないかと、大変に憂いている。私は、物言わぬ諦めと虚無感には決して埋没するまいと、心に決めている。

 (この章おわり。次回は『特別秘密保護法』について思うところを)

 

「一押しBook」

書名:戦後史の正体

著者: 孫崎 享(まごさき うける)1943年生まれ。東京大学中退、外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を経て防衛大学校教授。著書『日米同盟の正体‐迷走する安全保障』(講談社現代新書)『日本の国境問題‐尖閣・竹島・北方領土』(ちくま新書)

出版社:創元者

書評:本書を読んだのは今年の1月で、その時から何らかの形で本書を広く紹介したいと思っていたが、やっと適った。

 孫崎氏は、経歴どおりずっと外務官僚権力の中枢におり、イラン・イラクや紛争地域の現場最前線でもトップの外務官僚として働いてきた人物である。本書では、戦後の戦勝国アメリカによる『敗戦国』日本に対する『占領政策』から、東西冷戦時のアメリカの世界戦略のための日本の利活用、高度経済成長を経て先進国となった日本への圧力や謀略・戦略について、その歴史と事実を述べている。

 60年安保と仕組まれた岸首相(安倍首相の祖父)の退陣や、田中角栄がロッキード事件で刑事犯罪人となり失脚した闇の部分とキッシンジャーの怒り、1980年代ではプラザ合意やBIS規制の思惑とそれを契機に日本経済が、がんじがらめにアメリカに従属させられていく背景などは興味深い。

 彼のメッセージは、誇りも無く卑屈にアメリカに従属する属国日本の権力者への告発である。しかし決して絶望することなく、独立国として誇りを持った日本の再生が可能であることも述べられている。本書は高校生が読めるようにと大変平易で分かりやすく、文体も“ですます調”で書かれてあり好感が持てる。今の教育では戦後史を学ぶ機会が少ない若者達に、分かりやすく戦後史を伝えたいというのも、孫崎氏のメッセージの一つであるのだろう。

 『特別秘密保護法』が強行採決された。施行されれば孫崎氏は『外交』『安全保障』等の秘密事項の漏洩で苛酷な刑事罰を課せられる危険性が大だ。是非この本を読んで、『特別秘密保護法』の暗闇の背景にも想いを至らせて欲しい。

 

イソの評価:★★★★★

蔵書:イソ蔵書。貸し出しOK

 

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