"いそ"あらため、イソじいの’山’遍路’紀行’闘病、そしてファミリー

“いそ”のページは、若者のキャリア形成を、目一杯応援するためにも“いそ”改め“イソじい”でリニューアル。

パライソメッセージ20131129 No.33

2013-11-29 17:46:08 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.11.29 N0.33

  Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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  「パライソメッセージ20131129 No.33」を送ります。先週も超多忙に付き、また1週間跳んでしまいました。本メールが「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 「ブラック企業の見分け方~大学生向けガイド~」がPDFで無料でダウンロードできます。法政大学キャリアデザイン学部の上西充子先生、NPO法人POSSE代表で『ブラック企業』著者の今野晴貴氏、常見陽平氏のコラボで発信したもので、東京・関東中心に大学生のみならず教員・研究者、大学職員に相当大きなインパクトを拡げ、大ブレイクしています。以下のURLから無料ダウンロードが出来ます。   ⇒   bktp.org/news/144

 引き続き、ライフワークに多忙な日々です。生きているのが実感できることは、幸せなことだと思います。(ただ単に思い込んでいるだけのおめでたい人間かもしれませんが。)

 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:アメリカのデフォルト(債務不履行)が発するサジェッション③

(アメリカのデフォルトの最大の原因は、軍国主義と新自由主義②)

 アメリカのデフォルトのもう一つの原因は、新自由主義である。これは、軍国主義よりももっと直接的で、深刻な原因だろう。

 新自由主義はマルクス経済学とかケインズ経済学とかいった軸の通った、哲学の内在する理論でもなく、ガルブレイスやドラッガー、アルビン・トフラーのような現代の経営経済学の礎を築いた理念もポリシーも無い。あるのは『今だけ良ければ』『自分だけ良ければ』といった徹底した無責任で退廃したエゴイズムだけである。そのエゴイズムを糊塗する為のトリクルダウンの理論、つまり利益を上げられる産業や企業が、徹底的に利益を出せるように条件整備をする、そして利益が集中すればやがてその『おこぼれ』がまわり労働者の賃金も上昇する、といった『理論』がもっともらしく喧伝されている。企業利益が何よりも優先するため、例えばわが日本では東日本大震災の復興法人税は3年の予定が1年前倒しで廃止する、とか法人税の大幅な引き下げとか、大企業に至れり尽くせりである。安部首相はアベノミクスで金融の緩和や国土強靭化と称する大型公共投資を強行し、更には『日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする』と公言している。企業が利益を上げやすくするために、規制緩和、優良な公益事業をも含めた民営化、自由化、自由競争といった『環境整備』のみならず、労働力の流動化が企業活性化の大義として、例えば解雇自由特区や裁量労働制(つまりホワイトカラー・エグゼンプション)、みなし労働性(つまり残業代不払い)などなど、まさにやりたい放題である。

 トリクルダウン理論が機能しているか。実際は、2008年のリーマンショックまで続いた戦後最長の好景気時に、企業は内部留保を莫大に増やし250兆円越えとなる一方で、働くものの収入は1人あたり70万円以上も減っており、全くトリクルダウンなど起こらなかった。空疎で欺瞞的なトリクルダウン理論を述べる学者や官僚は多くいるが、それを政治に持ち込んでいるのが安部首相を先頭とする、大企業の利益代表の政治家であり、口だけでなく実際に実践している、その突出した、突撃隊長ともいえる政治家が橋下大阪市長である。しかし、彼のポピュリズムもよりどころとしていた『大衆』から飽きられたのか、見放されたのか、落ち目になってきている。

 そういった中で、重要かつ直接的な社会のサスティナビリティに対する阻害要因であり、それがデフォルトの直接的な原因ともなっているのが、経常収支の『入り』である税の問題である。法人税の異常なディスカウントつまり引き下げは、国際的な競争にもなっている。『法人税が高率だと企業が海外に逃避する』というのが世界共通の理由である。流石に、法人税の引き下げ競争の欺瞞と反社会性に対して最近ではEU諸国で反省と批判が轟々と起こってきている。

 アメリカ国内における法人税の引き下げ競争のマッチポンプとなっているのが、法人税の引き下げ競争にもかかわらず、世界の金融機関、ファンドあるいは企業のホールディングといった企業グループの資産管理部門(会社)がどんどんと逃避、脱出している世界各地のタックスへイブンである。タックスへイブンとは極めて低い税率または無課税で、企業を誘致する場所であり、そこでは諸法的規制からも逃れる為に情報も隠す。そこは究極の規制緩和地であり、超大規模な“特区”である。

 タックスへイブンで有名なのは、カリブ海のケイマン諸島であるが、そういったところは世界中で200箇所以上あるといわれている。そこに投機会社やファンド、富裕層やマフィアの有象無象が資産を退避させ税金を逃れている。私も調べてみたが、タックスへイブンは1970年代から急速に拡大して、ケイマン諸島はいまや世界5位の金融センターで、8万社の企業がここに登記し、世界のヘッジファンドの4分の3以上が集まり、150兆円以上の預金がここにあると言われている。世界の富の4分の1をタックスへイブンが飲み込んでいる。そして彼らは納税の義務から逃れ、社会的義務を果たさない。

 タックスヘイブンと言うとカリブ海の無税のパラダイスなど、浮世離れした話では全く無い。新自由主義は“今だけ良ければよい”“自分だけ良ければよい”というのが性であり、その台頭と軌を一にして税金逃れのための、世界的スケールでタックスへイブンの拡大・分散に相乗りしてきた。“特区”などは、日本でもそうだがドメスティックなタックスヘイブンの企てそのものではないか。アメリカはその先駆者であり、多国籍企業等の大企業、富裕層、ヘッジファンドなどの投機筋は、海外脱出をほのめかし税金を散々低率に押さえ込み、その上でタックスヘイブンに脱出を図っているのである。

 投機家でもあるオーウェン・バフェット氏が、受付け嬢のほうが自分より税率が高い、富裕層はもっと税金を払うべきだ、と主張するように、アメリカにも良心や英知は沢山おられる。しかし、新自由主義者の主張する、低い低い法人税率とタックスヘイブンへの富裕層、大企業の流出が、税収の構造をいびつに変え、財政赤字をもたらし、ひいてはデフォルトの直接的な原因となっているのだ。

 次回は(新自由主義者のユートピア・・・税金0の国)と、『デフォルト』のまとめの予定。

(続く)

 「一押しBook」

書名:POSSE no.20

発行: NPO法人POSSE

出版社:堀之内出版

書評:

 POSSEはNPO法人が年2回発行する刊行誌だが、毎号充実した執筆陣でなかなか読み応えがある。本号も『安部政権はブラック企業を止められるか?』の特集で、8月に京都で開催されたシンポジウム(今野氏、熊沢誠先生、木下武男先生、脇田滋先生が報告者といった贅沢な顔ぶれ)の報告や、濱口桂一郎先生他、塩見卓也弁護士、佐々木亮弁護士などの執筆で、大変理論的にも実践的にも興味深い論文が掲載されている。さらには、若手議員と言うことで、話題の山本太郎氏、共産党の吉良よし子さん他がコメントを寄せている。

 POSSEとしてのメッセージの発信というのは、もともとあまり鮮明では無い。だが、いろんな立場や思想・信条を超えて、第一線の論客から市井の市民運動への参加者までが自分の意見を寄せてくる。ある意味こういった、“新型市民運動”のプラザというのがPOSSEのポリシーでありメッセージなのかもしれない。

 

イソの評価:★★★★☆

蔵書:キャリアセンター就職資料で蔵書

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パライソメッセージ20131115 No.32

2013-11-15 18:25:43 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.11.15 N0.32

 Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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 「パライソメッセージ20131115 No.32」を送ります。「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 今年も残り少なくなってきました。それにつれて、私のフェードアウトもいよいよカウントダウンが始まります。フェードアウトしますが、自分のライフワークでは再び世の中にフェードインします。だんだんと、多感を覚えつつ超多忙な日々。

【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:アメリカのデフォルト(債務不履行)が発するサジェッション

(アメリカのデフォルトの最大の原因は、軍国主義と新自由主義①)

 アメリカのデフォルトの原因は様々あるだろうけれど、最大の戦犯は軍国主義と新自由主義である。特に1970年代頃からのアメリカ凋落は、ドメスティックな問題に止まらず国際的な問題となってくる。アメリカ経済の双子の赤字といわれるのは、貿易赤字と経常赤字(財政赤字)である。財政支出に占める軍事費の比重が極めて大きいので、経常赤字の直接的な原因としての軍国主義は明らかだが、貿易赤字に関しても軍国主義が大きな原因となっている。

 1990年代に旧ソビエト連邦をはじめ当時の社会主義国が崩壊し、東西冷戦時代が終結する。ところが、冷戦を原因とする膨大な軍拡によって、膨大な恩恵をこうむっていたアメリカ経済の基軸でもある軍需産業は、あくなき利潤の追求を求め次々と新たな戦争に突入していった。第二次世界大戦以降1950~60年代の民族独立運動への軍事介入やベトナム戦争の主戦者であったアメリカは、東西冷戦終結後もアフガンへの介入、虚偽のプロパガンダであった『大量破壊兵器を保有する』イラクへの軍事介入、『対テロ戦争』最近でも国際世論の中で実行に至らなかったが『化学兵器疑惑』でのシリアへの軍事介入を宣言するなど、アメリカには戦後は無く、第二次世界大戦以降一貫してそして未だに戦争を続けている世界で唯一の先進国なのである。

 このことが実際はアメリカの経常支出に極めて大きな負担となっていただけでなく、アメリカの軍国主義は、世界でナンバー1の科学技術国、物づくりの国の産業や技術構造を大きく歪めてしまった。アメリカ産業の30%を占める軍需産業は、再生産の無い持続不可能の産業なのだ。世界ナンバー1の技術やそのノウハウを持つアメリカ産業は、軍需産業偏重によって相当歪められてしまった。民需品や平和産業の裾野は拡がらず、国際競争力もヨーロッパや日本に遅れを取るようになる。

 第2次世界大戦後の世界の大きな情勢は、民族独立運動と帝国主義、植民地主義の戦いが根源であった。民族独立の運動は大きなトレンドとして世界の歴史を動かし、多くの国が形の上では『民族独立』を勝ち取っていくが、そのうねりの中で様々な複雑な要素が絡み合ってきて人類に悲劇をもたらす。宗教、民族、部族、資源を巡る争い、利権争い等が複雑に絡み合い悲劇をもたらしてきている。イスラエルとパレスチナ、イラク、イラン、アラブ、シリア、パキスタン…。戦後の日本でも『戦勝国アメリカ』による支配政策として、『公用語を英語とする』『生活のレベルはかつての日本が占領していた国々の生活レベル以下とする』『司法権の剥奪』等が実施されようとしており、民族の悲劇の火種が残される重大な可能性が実際にあった。しかし歴史は、戦後の東西冷戦の中で日本に対する『政策』が変更され、天皇制を温存し、アメリカの世界戦略の要、反共の防波堤、集団的自衛権の下でのアメリカの侵略戦争のパートナーとしての役割を担わされ、違った意味での悲劇が今日まで続いている。

 軍需産業の圧力によって、アメリカが世界に紛争にあれこれと理由付けて、第2次世界大戦後一貫して戦争を仕掛けている間に、国際政治は大きく変動している。ヨーロッパではEUが築かれ、経済的にもユーロ経済圏が形成され、アメリカドル経済圏を凌いでいる。かつてSEATO(東南アジア条約機構)といわれたアメリカ主導の軍事同盟を締結していた東南アジアは、冷戦の終結以降アジアの平和と発展という各国のミッションを共有するASEANとして、第3世界を築いている。軍国主義アメリカはそのような世界のトレンドに調和せず、絶えず新しい『敵』を作り続け、ひたすらにかたくなに戦争を続けてきた。

 世界のトレンドと秩序はアメリカ中心主義を既に乗り越えている。アメリカ覇権主義、アメリカ中心主義はもはや遠くなろうとしている過去のものである。現在進行形のシリアへの攻撃意思もパキスタンへの無人機での爆撃による民間人の殺戮も国際的な非難が轟々である。未だにアメリカ覇権主義、アメリカ中心主義に付き従っているのは、歴代の自民党政権の対米従属派であり、今日の安部政権である。彼らは、アメリカとともに世界から孤立するリスクを自ら取りに行っている。

 それらのことがアメリカ産業を極端に歪め、持続可能な発展を阻害してきた。それが国際競争力を劣化させ、新エネルギー開発や、国際市場戦略を伴う民需品や平和産業等々の新しい産業の創出を不可能にし、成熟国の宿命もあいまって負のスパイラルとなり、巨額の貿易赤字に陥るのは必然であっただろう。ちなみに日本は、憲法9条による制約もありアメリカほど軍事費のシェアは高くないが(金額的には、米中に続き世界第3位という問題を内包しているが)、屈辱的ともいえるアメリカへの寄り添いによって、憲法第9条を持ち各国からも信頼されているにもかかわらず、ASEANでのリーダー的役割を果たそうとしない。それどころか、最近では集団的自衛権の解釈を変え、憲法9条を解釈改憲しようという、愚以上の犯罪的行為を犯そうとしている。

 アメリカの双子の赤字の一方が貿易赤字であり、それは産業の劣化の表出であり、産業の劣化は健全な税収の重要な阻害要因となっている。しかもアメリカ軍国主義は、世界資本主義の中での信頼を、政治的にも失墜させている。したがって今回のアメリカのデフォルトは双子の赤字が原因であり、その本質を詰めると、直接的にも構造的にもアメリカの軍国主義に大きく起因している。

 さて、アメリカのデフォルトのもう一つの原因は、新自由主義である。これは、軍国主義よりももっと直接的で、深刻な原因であろう。

(続く)

 

「一押しBook」

書名:ネットワーク京都2013年11月号

発行: 特定非営利活動法人ねっとわーく京都21

出版社:かもがわ出版

書評:

 本書は月刊のフリージャーナルだが、毎号充実した記事と編集で、読み応えがある。11月号の特集は「原発三題」で、共産党前国会議員吉井英勝さんがインタビューで原発利益共同体の醜悪な癒着を鋭く解析し批判している。女性ジャーナリストの池永紀代美さんはドイツのメディアが伝える福島の状況をレポートし、日本の原発利益共同体の醜悪な意図を彼岸から暴いている。新谷鉄氏はJR常磐線の現状のレポートで、現場を伝えている。

 11月号は、他に京丹後のXバンドレーダー米軍基地撤回を目指す大型座談会が掲載されている。いずれのコメンテーターも徹底的な現場目線。

 他、多少手前味噌ではあるが、小生のインタビュー記事「ブラック企業に負けない」が6ページで掲載されている。ご一読いただければ幸甚。

 

イソの評価:★★★☆☆

蔵書:イソ蔵書、他に組合でも蔵書。COOPブック&サービスでも販売

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パライソメッセージ20131108 No.31

2013-11-07 20:11:29 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.11.08 N0.31

 Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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 「パライソメッセージ20131108 No.31」を送ります。「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 自分のライフワークのために、超多忙の日々が続き4週間パライソメッセージが跳んでしまいました。再開に当たって、『R学園の再生』を少し休載して、最近大変気になっているアメリカのデフォルト(債務不履行)問題について、思うところを述べます。

 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:アメリカのデフォルト(債務不履行)が発するサジェッション

(アメリカのデフォルトは、果たして『対岸の火事』だろうか)

 アメリカがデフォルトの崖っぷちに立ち、先日やっとのことで債務上限枠の4ヶ月間の拡大を議決した。アメリカでは国の債務上限枠が議会で議決される。共和党特にティーパーティの強硬姿勢で、新たな起債が不可となり、アメリカでは約2週間、国施設や国立公園の閉鎖、公務員のレイオフなどが実施され、それをマスコミがセンセーショナルに報じている。報じているといっても、そういった『絵になる』光景を垂れ流しているだけであって、デフォルトの本質を論及する姿勢は、マスコミには無い。日本経済新聞を筆頭にいずれの新聞も『対岸の火事』のような扱いで、興味本位の解説記事の垂れ流しで、ニュースのスペースも小さなものである。

 アメリカのデフォルトは果たして『対岸の火事』なのだろうか。アメリカ国債の保有高は、日本と中国が40%を保有しており、世界で突出して大きく、この2国がアメリカの国際的な信用を支えていると言っても良い。既にEUではアメリカ国債は売れない。それどころか、ドイツ、フランス、ブラジルや他国の首脳に対する盗聴問題で、アメリカは指弾され孤立化の状態にさえ陥りつつある。海外では『ヨーロッパとアメリカは冷戦状態』等といったことさえも報道されている。

 BRICsの国や途上国もドルやアメリカ国債を保有しているもののシェアは僅かである。アメリカ国債は日本と中国が40%を保有している。特に深刻なのは日本の場合で、日本ではプラザ合意以降、一方で円高が強いられ、もう一方でドル安の回避とドルの国際的信用の維持の為に、ドルやアメリカ国債を大量に買い支えるといった、国際経済におけるアメリカ中心主義スキーム維持の為に屈辱的ともいえる対米追随を強いられ、翻弄されてきた。日本は円高と同時にドル安を回避する為にドルやアメリカ国債を買い支えてきたのである。ちなみに、この屈辱的な対米追随は、今日でもTPPや、戦後の日米関係の厳然たる枠組みとなってしまった日米地位協定によって未だに続いている。中国の場合、アメリカ国債の買いは、買い支えというよりも投機目的でもあるから、今回のデフォルト騒ぎを機に、洪水の様な露骨なアメリカ国債の売りが始まるだろう。表に出ないようにして、既に始まっているかもしれない。そういうことは日本のマスコミは全くフォローしないのか、掴んでいても書かないのか。

 ドル国債は、多くは金融機関が引き受けたり金融機関やファンドが引き受け、彼らを通じて企業や個人も大量に保有している。デフォルトということになれば、ドルやアメリカ国債が単に紙屑になるだけでは済まない。ドルやアメリカ国債の担保価値も当然大きく下がる。まさか無いだろうとは思うが政府が信用保証を実行しても、市場は止まらない。担保価値が大きく下落すればどうなるか。大規模な不良債権の発生や取り付け騒ぎが起こり、金融の流れが超大混乱に陥るだろう。

 それだけでは収まるはずが無い。このデフォルトによって、デリバティブ(金融派生商品)の動きがどうなるのか。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ:債務履行の信用を証券化した金融商品)が実行されれば一体どうなるだろう。CDSの実態はウォール街の金融プロでも正確には把握できていないが、サブプライムローンの2桁~3桁大きいと思われている。倍ではない桁である。日本の金融機関や和製ヘッジファンドは、莫大なCDSを保有している。様々な訳の分からないような債権に対しても、それらをブレンドしたデリバティブのクレジット(信用)のデフォルト(不履行)をスワップ(交換して保証)する金融派生商品は何1000兆ドルといった規模である。それらが破綻すると資本主義経済は一体どうなるのか、忠実にドルとアメリカ国債を膨大に買い支えてきた日本は、ドルやアメリカ国債が破綻し、単なる紙屑になってしまったら、どうなるのだろう。

 しかし、アメリカ経済が危機に陥ったのは今回が初めてではない。1970年代はニクソンショックと言われる、ドルの金兌換停止を実行した。当時は世界の基幹産業であった繊維に関わり、当時大躍進する日本の繊維業界にとって極めて不利な日米繊維交渉が締結され、アメリカは自国の繊維業界の危機と貿易赤字を何とか乗り越えてきた。戦後史を見れば1960年代以降、一貫してアメリカ経済は低落への道を歩み、それに対して躍進する日本が、屈辱的な外圧に抵抗するどころか、ずっとアメリカに寄り添い、媚びへつらい、アメリカを支え続けてきたのではないか。

 但し、今回は調整不可能な大変な事態が眼前に来いると思っている。何故なら私の直感的な思いではあるが、新自由主義者というのは日米それぞれ相容れることはない。屈辱に対して免疫を失っている日本はともかく、アメリカの新自由主義者には妥協とか程合いとかは全く無いだろう。新自由主義というのは徹底的な競争原理であり、『自分だけ、今だけ良ければ良い』というのが本質であり性である。日米の新自由主義者が協力し合うなどといった光景は全く想像できない。想像できるのは、一歩的に打ちのめされる日本の姿だけである。その兆候は既にTPPなどで見えている。

 とはいっても、私はアメリカのデフォルトによって世界資本主義が崩壊するとは思っていない。しかし、資本主義のスキーム内で、富裕税の増税を主張するウォーレン・バフェットを始め世界の英知を集めて、99%の人々ための新しい世界観・価値観が人類的に共有され、国際的な経済の新しいルールが構築されていくだろうと思っている。

 次号では、アメリカをデフォルトに陥れた張本人や、ポスト新自由主義の国際経済のルールについて思うところを書きたい。

(続く)

 

「一押しMovie」

書名:そして父になる

監督:是枝裕和

出演:福山雅治 リリーフランキー 尾野真千子 真木よう子 他

感想: 私は是枝監督の作品が好きだ。彼はR学園附属高校出身で、大学での客員教授でもある。だから少しの身贔屓が有るにしても、映画監督としての彼の天賦の感性に大いに注目している。彼の映画はニヒルで無機質な空間の中に、その作品の主題となるある種の人間性の存在感が切なく光る、とでも言うような、独特の是枝ワールドの中で、曖昧なストーリーが展開していく。『奇跡』『誰も知らない』のように最近の作品はストーリーが随分とイメージできるようになってきて、国際的にも高い評価が定まり、『そして父になる』もカンヌ映画祭で特別賞・審査員賞を受賞したのだろうと思う。

 この映画は、かつてよくあった病院で新生児を取り違える事故で、6年間我が子として育てた子供を、他人に育てられた実子と交換する実際の話しを題材にしている。子供の思いや目線からも描く、極めて濃いヒューマンドラマなのだが、この題材をどのように是枝ワールドに仕上げていくのかに興味があったが、感想としては少し違和感を感じた。

 ヒューマンドラマであれば、主演者は福山君ではなくて、例えばではあるが上川隆也なら、相手の親もリリーフランキーでなく香川照之、上司も西田敏行とか鶴瓶なんかだったらどうだっただろうな、と思いながら見ていた。山田洋二とは異なった、是枝ヒューマンドラマを磨いて欲しい。

 イソの評価:★★☆☆☆(少し辛口評価だが期待を込めて)

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