"いそ"あらため、イソじいの’山’遍路’紀行’闘病、そしてファミリー

“いそ”のページは、若者のキャリア形成を、目一杯応援するためにも“いそ”改め“イソじい”でリニューアル。

パライソメッセージ20130426

2013-04-26 19:20:10 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.04.26

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【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:私がブラック企業を告発する理由(2)-ブラック企業とは何か②-

 今野著「ブラック企業」の中で、ブラック企業が若者を食いつぶす動機を3つのパターンに分類している。第1が①「選別」『(大量募集と退職強要)である。大量に採用したうえで、「使える」者だけを残す』(今野・同書)である。第2は②「使い捨て」『(大量採用と消尽)という動機がある。これは文字通り、若者に対し、心身を消耗し、働くことができなくなるまでの過酷な労働を強いる』『大量に新卒を募集して、次々に遣い捨てるため、労働不能の若者を大量に生み出す』『従来の大企業では見られなかったこと』(今野・同書)だ。第3は③「無秩序」『つまり動機がない場合。これは明らかな経営合理性を欠いているようなパターンである。パワハラ上司による(辞めさせるためではない)無意味な圧迫や、セクハラ』(今野・同書)と分類し、各々を特徴付けている。

 さらにブラック企業の行動特性のパターンを示している。①月収を誇張する裏ワザ、②「正社員」という偽装、③入社後も続くシューカツ、④戦略的パワハラ、⑤残業代を払わない、⑥異常な36協定と長時間労働、⑦辞めさせない、⑧職場崩壊、などブラック企業のパターンを特徴付けている。

 こういった分類やパターンは、新型ブラック企業についての今までになかったカテゴライズとして試みられており、貴重な視点である。若者のトレーニングに厳しい会社は、いわゆる『ホワイト企業』でも多くあるが、新型ブラック企業の場合は、有名会社であっても怪しげなベンチャーIT企業であっても共通して「お前らは荷物だ、屑だ、害だ」などといって若者を追い込み、人格否定をし若者の精神・肉体を蝕み、無神経に使い捨てる。人格否定を徹底することによって若者はあらゆるサジェッションに対して従順になり、平伏する。そして求められる目標(例えばとてつもなく高いノルマであっても)に到達できなければ、自分の努力や力が足らなかったと、自己責任と自己否定の負のスパイラルに陥る。それは、マインドコントロールの手法でもあり、そこに新型ブラック企業の反社会性、社会問題としての新型ブラック企業の一端がある。

 具体的に見ると、最近柳井社長自らが多くのマスコミ・メディアに登場し躍起に「ブラック企業は誤解だ」と否定し、「それでも若者を鍛える」と居直っているファーストリテーリィング・ユニクロは典型的な選別型と使い捨て型の複合型ブラック企業だろう。最近の日経新聞の記事では、来年度もユニクロは630名以上の新卒採用を計画している。そして300名以上は身も心もぼろぼろにされて3年以内に退職していく。柳井社長への批判は後述する。

 『選別型』はベンチャー型IT企業、ITコンサル業と称している企業などに見られる場合が多い。例えば社員総数80名くらいで新卒採用25名。入社前の内定の時期から『研修』が始まり、資格取得が求められる。その前に『お前らは先輩や会社が稼いでくる利益をむさぼっている。人間以前の害だ。』といわれ、入社前つまりまだ学生の時期から超ハードな研修を課し、企業理念やマニュアルの丸暗記、スキルの習得、まったく仕事と関係の無い街角で大声でプレゼンをするなど徹底的にしごきあげる。早く『害から人間になれ』と言われ、着いていけなくなったり、少しでも疑問を持ち質問をすると『害』が何を言うかととばかり『個人研修』『特別研修』に追い込む。皆の中で一人だけトレーナー姿を強いられ真ん中に座らされ一日中自己否定と反省の自分史を書かされ、いつまで書いてもOKが貰えない。そんな異常なハラスメントが行われているが、会社の狙いはトレーニングでもなんでもない。25人の内定者を2~3名に絞り込むことなのだ。内定ではあっても雇用契約の成立と一般的には見做されるし、社名公表のリスクがあるから、そういった会社は『内定取り消し』とはせずに『自己都合による内定辞退』へと追い込む。その結果20名以上の若者のメンタルが潰れてしまおうが、肉体が蝕まれようがブラック企業は平気である。この話は、実際にあった話だ。

 『使い捨て型』は、コンビニの『名ばかり店長』などが典型だろう。経験も少ない若者を店長として管理監督者の裁量労働制とし、残業代は払わず過酷な勤務を強いる。多くの裁判にもなっている若者の過労死や、実質的には裁量労働でもなんでもない『名ばかり店長』の残業代の不払いなどによって、若者は精神・肉体が疲弊し正常に働けなくなる。ブラック企業は、名ばかりでも「正社員」を看板に上げるといくらでも若者が集まるといった状況を利用し、次々と使い捨てる。

 また、異常な36協定による過酷な長時間労働も『使い捨て型』の典型だろう。労働基準法では労働時間は週40時間と定められている。しかし、法36条に基づき協定を締結すればその時間内は残業をさせることが出来ることとなっている。36協定により厚労省の定める過労死ラインの月80時間を越える残業時間での協定を強制する企業は少なくない。「過労死ライン」を超える36協定を締結しても違法にはならないというのが現状であり、そもそも協定が無いとかサービス残業といった違法・脱法行為ではないために、『ホワイト企業』と見られる企業でもまかり通っているのが現状である。

 『無秩序型』の典型は、裁判で結審している『電通事件』などがある。

 1991年に電通入社2年目の社員が自殺した事件は、90年4月入社の0さんが、非常識なほどの長時間労働を強いられ、懇親会の場で靴にビールを注がれて飲まされた。0さんは過酷な労働と非常識なモラルハザードのハラスメントの挙句、うつ病に罹患し翌年自殺した事件である。この事件は0さんの両親が電通を告発し、最高裁まで争われ、結果電通のほぼ全面敗訴で結審した。詳細はインターネットで「電通事件」と検索すればたくさん出ている。

 今回は加筆の余裕があまり無いので、次回のパライソメッセージでは、この間のユニクロの柳井社長の『居直り』の『弁解』を徹底的に批判する予定。

 

【一押しBook】

書名:過労自殺と企業の責任

著者:川人 博(弁護士・過労死弁護団全国連絡会議幹事長、1949年生まれ)

出版社:旬報社 1,600円

内容:

 Karoshi Suicide Salaryman (description)= “Karoshi”is a Japanese word means “death by overwork.”と『過労死』は今日では世界語となっている。これは「日本語であり・・・」と書かれているように、日本特有の現象だ。昨今、竹中平蔵氏、三木谷社長や経団連などが声高に、あるいは口汚く日本の雇用慣行である終身雇用や年功序列賃金を批判している。戦後の日本における雇用慣行は、終身雇用や年功序列賃金であったし、労働者はそのことによって安心感を持ち生活や人生設計をしてきた。一家の大黒柱は家族を支え、マイホームを手に入れるために、高度成長期には過酷な労働にも耐え抜いて働きまくり、また日本の高度成長を支える原動力にもなっていった。ただし、この本に紹介されている過労死は、高度成長期の話ではない。現在の話だ。

 超過酷な労働の質と量、モラルハザードされたハラスメント、非現実的な過大なノルマ等々に心身にひどいダメージを受けて死に至る、あるいは自殺した例がいくつも報告されている。全ての事例が労災に認定されたものや裁判で確定判決となったもので、オリックス、電通、ニコン、ネクスター(ニコンへの人材派遣会社)、大和製罐、等々の事例が報告されている。若年労働者の自殺は昨今急速に増えている。彼らの言う「解雇自由化」や「ホワイトカラーエグゼンプション」は、雇用の流動化や衰退産業から成長産業へ、などのきれいごとでは決してなく、過労自殺といった重たい現実がバックグラウンドにあることを見なければならない。本書は単に告発に終わらず、「「自殺大国」日本から脱却するために」「働くもののいのちと健康を守るため」などの重要な提言に富んだ、われわれ働くものの必読の書である。

(続く)

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パライソメッセージ20130419

2013-04-19 19:18:15 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.04.19

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【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:私がブラック企業を告発する理由(1)-ブラック企業とは何か①-

 大学院生や学生、若者が活動しているNPO法人 POSSE の代表である今野晴貴さん(一橋大学社会学研究科在学)が著した「ブラック企業-日本を食いつぶす妖怪-」という本が大ヒットしている(文春新書:770円)。著書の中でブラック企業という言葉は、2010年頃から若者たちの間で拡がってきたネットスラングだと説明されている。最近では『ブラック企業』のタイトルでブログが解説されたり、『ブラック企業大賞』やブラック度のランキング等も紹介され、若者たちの間で読まれている。ネットスラングやツイッターネタであったのだが、この本の出版を機に、社会の認知度も高まり、今や国会答弁で安部首相が「ブラック企業」と発言してその問題に言及したり、世間でも問題視されるようになってきた。

 よく言われ、語られる言葉だが『ブラック企業』とは一体何なのか、ちょっと考えてみたい。今野は本の中でブラック企業の特徴として、①選別型、②使い捨て型、③無秩序型を上げている。これは実際にブラック企業を理解するうえで大変分かり易いし、今までそういったカテゴライズというか特徴づけが整理されていなかったので、重要な指摘であると思う。ただ、『ブラック企業』というのは最近言われだしたネットスラングに限定された呼称ではなく、以前から言われていたと私は考えている。労働運動やキャリアカウンセリングに関わってきた人たちの間で『ブラック企業』という呼称は使われてはいたが、今回の今野のような明快な特徴づけでは無く、反社会的な会社といったイメージであったと思う。

 つまり、以前は暴力団のフロント企業や、お年寄りに高額商品を売りつけたり不必要なリフォームを強要するような詐欺商法や脅迫商法、ねずみ講まがいのマルチ商法など違法・脱法・反社会的行為を生業とする企業をそう呼んできた。典型例としては、京都にはかつて日栄という中小企業金融の会社があった。日栄は結局解散したが当時の本社ビルは持ち主が変わって今でも西大路七条に現存している。その会社は、即決融資を売り物にして急成長し、当時はベンチャーとか社長はあたかも中小企業の救世主であるかのように、経営者団体やマスコミに天まで持ち上げられるほどに賞賛された。ちなみに当の社長はR大学法学部卒業であり、一時は時代を牽引する社長として校友会でも紹介されていた。しかし、日栄のやり方は、債務者が返済を滞らせると、

 「腎臓を売って来て金を作れ。腎臓を取るために○○に連れて行く。」

 「家族に何が起こるかわからない。」

 などと脅迫し実際に会社や自宅に暴力的に押しかけてくるとか、実際に腎臓摘出手術を強要するなどの脅迫犯罪行為を、会社を挙げて行っていた。強引な取立ては刑事罰とされ、社会的批判の前に日栄は解散に追込まれた。しかし、日栄は商工ローンという会社に姿を変え営業は存続させた。商工ローンは相変わらず犯罪的な取立てを行い、営業社員は厳しいノルマと暴力団のような上下関係で、『特異な』人間しか残らない異常な会社となり、厳しい社会的批判も受け、結局自壊してしまう。こういった会社は以前からブラック企業と呼んでいた。

 なぜ改めてそんなことを言うかは理由がある。一つには、労働運動や生活を守る運動等に取組んできた人たちは、かつてのブラック企業に対して批判し闘ってきたのだが、最近のブラック企業の実態については理解が及んでいないところがある。

 以前も最近もブラック企業といわれる企業の本質は同根であり、その意味ではブラック企業を批判し告発する運動を幅広い世代で共有するためにも、私はあえて最近のブラック企業を『新型ブラック企業』と称し、その問題点を国民的に共通理解とし、若者の独自の運動から広範な国民的告発へと拡げていく必要があると思っている。

 もう一つの理由は、『新型ブラック企業』というのはかつての『ブラック企業』と違い、極端に品性が無いとか犯罪的匂いがするというのではなく、いわば今日の日本の社会構造的が生み出してきた癌であるということ、そしてターゲットを主に若者に向けているということ、そういった特徴を持つものを『新型ブラック企業』と称することにより、いっそう分かりやすく解明する必要があると思ったからである。

 ブラック企業、特に『新型ブラック企業』とは、若者の身体・精神を蝕み、人格を破壊し使い捨てることによって生業を成り立たせる反社会的・反人間的企業と定義付けられると思う。次週「ブラック企業とは何か②」では①選別型、②使い捨て型、③無秩序型、について今野著の「ブラック企業」からの紹介と、実例を述べたいと思う。

 

 

【一押しBook】

署名:就活前に読む-会社の現実とワークルール-

著者:宮里 邦雄(弁護士・日本労働弁護団会長、1939年生まれ) 川人 博(弁護士・過労死弁護団全国連絡会議幹事長、1949年生まれ) 井上 幸夫(弁護士・日本労働弁護団常任幹事、1952年生まれ)

出版社:旬報社 987円(税込み)

内容:

 本書は労働裁判事件の最前線で、労働者の立場に立って反社会的企業を告発する弁護士からのメッセージである。第Ⅰ部は「会社で何が起こっているか-事件で知る-」について書かれている。例えば『電通(広告)◎「靴でビールを飲め」過重労働・パワハラと二四歳での死』『兼松(商社)◎男女賃金差別』等々の事例が、会社の実名とともに報告されている。これらは裁判で結審した事件であり、いわゆる密告・暴露本の類ではない。日本マクドナルド、オリックス、関東リョーショク、中部電力、光文社、トヨタ自動車、キャノン、東芝、等々日本を代表するリーディングカンパニーで繰り広げられている人間破壊に繋がる労働の強制や、常軌を逸したモラルハザードのパワハラが裁判で告発され、それら反社会的行為が断罪された事実にもとづいて反社会的・反人間的企業を告発している。

 第Ⅱ部は「就活前に知っておきたいワークルール-要注意企業の見分け方」として【就職・採用内定・試用期間】【求人票と労働条件】【労働時間】【給与と残業代】【職場での人権】(セクハラ、パワハラと法律に関わる話)【休む権利】【解雇と退職】【ワークルール】(労働基準法や就業規則の話)【税金と社会保険】【労働組合】【就職や入社後の相談先と解決方法】の内容で、分かりやすく論述されている。

これらは、就活前の若者にとって理解しておいたほうがよい、ワークルール(法律)の必読書であるだけではなく、日々のキャリアカウンセリングにおいて、クライエントにていきょうする情報としても重要なケースメソッドが紹介されている。そして何よりも自分自身の仕事とワークルールを足元から検証するためにも、大変有効な本である。

(続く)

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パライソメッセージ5

2013-04-12 18:27:10 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.04.12

 

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 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:新聞をどう読むか-パナソニックの巨額の赤字はなぜ?-(朝日新聞より)

 2013年4月6日の朝日新聞の経済欄に「パナソニックの巨額の赤字はなぜ?」という、Q&Aの記事が掲載された。リード文では「不振部門で減損処理」「営業黒字を吹き飛ばす」とある。この記事をどう読むかを考えたい。

 添付している記事によるが、その概要は営業損益は黒字だが、利益が見込めない工場設備などの資産価値を見直す「減損処理」を迫られたため、13年3月期決算は2年続けての7,500円を超える赤字となる見込と解説されている。「減損処理」とは工場設備や営業権などの買収した資産を、思ったような利益が見込めないため損失計上するということ。具体的には2011年度は、薄型テレビ製造設備などの固定資産で△3,343億円、電池事業などの「のれん代」△2,850億円、2012年度では、太陽電池や携帯電話などの「のれん代」△2,378億円計上している。一方2012年度では内部留保として資産計上されている「繰り延べ税金資産」も4,125億円取り崩し損金処理をする。そのため2012年度(2013年3月決算期)も引き続き営業利益は1,400億円(予測)計上しているのものの、減損処理によってすべて『ぶっ飛んで』しまう。単年度を個別に見ると2010年度3,053億円、11年度437億円、12年度1,400億円(予想)の営業利益は減損処理によって、逆に10年度は純利益740億円に減り、11年度△7,722億円、12年度△7,650億円(予想)の純損失が生じる。新聞記事は「パナソニックは3月28日に、こうした費用の削減も含めて業績を改善し、16年3月期に3,500億円の営業黒字を目指す中期計画を発表した。これ以上、赤字を重ねないためにも計画通りに収益を上げていくことが必要」と、書いてある。

 この、記事をなんの疑問も批判も無く単に目を通すだけなら、『ああそうか。パナソニックも大変だなあ。大丈夫かなあ。頑張ってもらわなければ。』ということになる。

 しかし、パナソニックの財務処理は端的に言うなら、工場等の有形固定資産と「のれん代」という無形固定資産の大企業優遇の減価償却の大幅な前倒しと、「繰り延べ税金資産」といった内部留保の取り崩しといった資産の出費を伴わない帳簿上の赤字の計上ではないか。新聞記事は『パナソニックは赤字です。大変です。利益を上げないといけません。』といったことをQ&A形式を借りて、なんの論評も無い記事を書いている。端的に言えばこの決算は財務経理処理による、出費の伴わない「造られた赤字」である。そのことは誰もが否定できないだろう。

 そのことは間違いないのだが、問題は『何故膨大な赤字を計上しなければならないのか』だ。パナソニックの経営者や経済団体は「サムスンやハイアール、鴻海精密工業等との厳しい国際競争に勝ち抜く為に迅速で強い決断が必要であり、スリム化し強靭な筋肉質の企業にしなければならない。」と言うだろう。そしてその実践の一環として、赤字決算を計上しながら、一方で2万人、関連会社を含めて4万人のリストラを実施し、『追い出し部屋』まで造っている。その一方では2013年3月に約300人の新卒採用をしている。入社式では津賀社長は厳しい状況のときに入社した新入社員に激励と謝意を述べる一方、早急に利益を計上し社会貢献を果たしたい、といったようなことをスピーチしている。なぜ、パナソニックはそのような行動をとるのだろうか。

 1990年ごろから日本の産業はダイナミックに淘汰され合併されてきた。高度成長期には15行あった都市銀行はシティバンクやアメリカンバンクとの対応を視野に、4つのメガバンク(+みずほコーポレートの5行の都市銀行)に再編された。流通の業界では、やはり高度成長期にイズミヤ、ダイエー、長崎屋等々多くのスーパーが発足したが、今では旧岡田商店のイオンが一人勝ちし、ヨーカドーとの2社になってしまった。

 電機業界は近々再編されると思うし水面下では再編統合の動きが進行しているだろう。電機業界は現在は順調そうに見える、東芝、日立、三菱のインフラ系と、業界再編の渦中の真っ最中にある、パナソニック、シャープ、ソニーなどの家電系がある。そういった中で私は家電系ではパナソニックは『存続会社』になるだろうと思っている。家電系には財界・政界とのしがらみが突出しているといった企業はあまり無いのと、なんといっても創業者以来の『国民的支持』が圧倒的だ。

 インフラ系は安泰のように見えるが、現在海外進出に躍起だ。原子力発電の政策動向如何ではどうなるか分からない。原発輸出の政策判断は、日立、東芝にとっては命運を左右されかねない。その点三菱は宇宙、資源とリンクした発電等々ナショナルプロジェクトを堅実に実践している。インフラ系も遠くない将来再編統合ということになるだろう。その際にはやはり三菱が存続会社となると思う。

 パナソニックは存続会社となり、これからもおそらく間違いなくリーディングカンパニーとして日本資本主義を牽引するだろう。そういった企業が、大幅な赤字決算を計上し、2万、4万人ものリストラを断行しながらも新卒採用を続け、下請け企業を締付け、国内産業の空洞化を進めるというのは、『存続企業』としての当然の営為なのだろう。しかし、それでいいのだろうか。パナソニックのいうグローバル展開は、とっかえひっかえ途上国から安い資材を調達し、安価な商品で海外での販売を展開し、目先の利益を追求するだけで良いのだろうか。徹底的なコストカットに狂奔して、日本の未来の社会に対する責任などは、ただ儲けて税金を払うだけで良いのだろうか。

 それではどうするのか。私は日本が持つべきグローバリズムや国際貢献を基軸にした国際展開についての意見は持っているが、別の機会にメッセージにしたい。ただ、本来国や国民に責任を持ち、道理を果たさなければならないリーディングカンパニーが、まったく目先の利益追求のためにますます亡国の道を歩んでいるのに、「パナソニックは3月28日に、こうした費用の削減も含めて業績を改善し、16年3月期に3,500億円の営業黒字を目指す中期計画を発表した。これ以上、赤字を重ねないためにも計画通りに収益を上げていくことが必要」と、何の問題提起をすることも無く垂れ流し記事を流す新聞やマスコミの見識を疑うし、まさに民衆を『愚民化』へと誘導し亡国へのミスリードをしている新聞・マスコミをいろんな意味で深刻に憂う。

(続く)

 【一押しBook】

 ①

 ②

書名:①『「属国ニッポン」経済版 アメリカン・グローバリズムと日本』

   ②『「属国ニッポン」経済版② 「新自由主義の犯罪」』

著者:①②とも 大門 実紀史(だいもん みきし、日本共産党参議院議員)

出版社:①新日本出版 2003年6月30日初版・2004年1月30日第4刷

    ②新日本出版 2007年10月5日

内容:

 ①は少し古いが、まさに『小泉改革』真っ最中に『既得権益をぶっ潰せ』『規制緩和』『民間活力』等を謳う新自由主義が、あたかもこれからの日本資本主義をリードするかのような、圧倒的な民衆の支持を受けたネオ・イデオロギーを装って吹き荒れていた時期に出版された。1970年代にニクソンショックによってドルの金兌換が停止され、ドルが紙くずとなったにもかかわらず、いまだ基軸通貨として国際信用が通用していることに日本はどういった役割を果たしているのか、アメリカの国際経済戦略推進の役割を担うIMFの戦略が日本の中小企業への『貸し渋り』『貸し剥し』といった政策にどう繋がっているのかなど、アメリカの国際経済戦略とそれを支える(従属する)日本といった日米経済関係の歴史を軸に、日本経済の現状が豊富な資料で分析されている。

 ②は、その新自由主義の実態として、『人間はコスト』『格差・貧困と多重債務』『「官から民へ」の正体』『金融資本の悪行』等について、やはり多くの資料を使って論述している。日本共産党ということで、批判ばかりの論文かというと、そういうわけでもなく、重要なサジェッションも多く述べられている。何よりも大変分かりやすく、身近な生活と経済にブレークダウンした論述が好感を持てて良い。新自由主義が何であるかわれわれの生活をどのように浸潤してくるかの勉強には、お勧めの本である。

(以下次号)

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パライソメッセージ 4

2013-04-04 18:01:16 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.04.05

 

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 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:理念、ポリシー、哲学を語ろう(4)

 リストラ企業もブラック企業も、その本質を探っていくと、同じ根源に行き着く。

 今の若者は忍耐が無いとか仕事に対する考え方が甘いから、もっと徹底的に鍛えなければならない、『社会人基礎力』が無い、ゆとり教育世代、シュガー社員等々、若者を揶揄したり、挙句は若者に対するハラスメントなど、最近の若者バッシングは際限が無い。その『突撃隊』が、若者の替わりはいくらでもいるといって、「使い捨て」「過労自殺」「精神の疾患」等若者の精神・肉体を破壊し蝕むブラック企業である。若者の精神・肉体を破壊し蝕むブラック企業が何故跋扈するのか。

 一方、家電をはじめとする製造業特に輸出を基幹とする企業は国際競争に大きく立ち遅れたと言われている。アベノミクス以前の極端な円高で輸出企業が大打撃を受け、企業存続のために大胆なリストラをせざるを得ないという表層的なロジックに依ってリストラが合理化されている。リストラ企業の多くには『追い出し部屋』などという、人間の尊厳を踏みにじるようなものまで出現している。しかし事実はリーマンショックまでは戦後最長の20年以上続いたイザナギ景気により、企業の内部留保は右肩上がりで史上最大規模に膨らんでいる。一方被雇用者の収入は1980年代以降ずっと減少し続けてきている。何故史上最大規模の内部留保を持ちながら、13万人もの何の落ち度も無い被雇用者がリストラされるのか。

 今日、アベノミクスなどで浮かれている裏では、『解雇規制の自由化』『ホワイトカラー・エグゼンプション』などが堂々と謳われている。それらへの合理的理屈付けとして、衰退産業から成長産業への雇用の流動化とか、終身雇用といった『閉鎖的雇用』から『開かれた雇用関係へ』等という屁理屈が経団連の長谷川氏や竹中平蔵氏、あるいは一部学者などが喧騒し、新聞、テレビなどは無批判に表層だけを垂れ流している。

 しかし、今ではブラック企業やリストラ企業やTPPが資本主義の未来を切り開く、夢のあるものや政策であるなどと本気で考えている人がいれば、よほど物事にポジティブで楽天的過ぎる人だろう。これらはものごとの本質を考えると、実は同根のものであることが理解できる。資本主義的生産関係の下で、高度に発達した資本主義が疲弊しその行き詰まりの打開が更なる特別剰余価値の追求を求めるという、それがこれらの諸現象の『本質』であることは、本当はかなりの人が分かっているのだろう。しかし分かっていてもどうしようもないどころか政治や選挙制度も絡んで、打開への道筋が見えず、鬱々たる閉塞感が蔓延しているのが現状ではないだろうか。

 問題は『それではどうするのか』だろう。だけど心配はいらない。世の中には、社員・従業員と夢や価値観を共有し、いい関係で仕事を続けていくことを目指している会社経営者や企業はたくさんある。働き甲斐のある、社員・従業員をひいては日本を幸せにしようと頑張っている『いい会社・優良企業』は沢山ある。いい会社を探すヒントとなる情報は順次『一押しBook』で紹介していきたい。また、本日の『一押しBook』で紹介する若き哲学者佐々木隆治氏は彼の著作『私たちはなぜ働くのか(マルクスと考える資本と労働の経済学)』の中で、労働時間の短縮や生産の私的性格を弱める等の提言をしている。今日の閉塞状況を打開していく貴重なサジェッションである。

 佐々木氏の問題提起の是非も含め、物事の本質を理解する意思を持って勉強することが、哲学を語るための勉強の方法として、2番目に重要である。

 第3の『哲学を語るための勉強の方法』は、自分の好きなあるいは興味ある得意な分野の勉強をすることである。勉強が長続きし深堀りしたくなる分野であればなんでも良い。哲学、経済、歴史、文学、科学、美術、芸術、趣味、娯楽等々どの分野でも良いと思う。どの分野であれ批判的にそして物事の本質を見抜きつつ勉強すれば、その分野で自分なりの哲学が確立する。ひいては自分の哲学が語れるようになる。何れかの分野を『権威的』『教条的』に勉強しても、興味が無く苦手であれば身に付かない。

 人と人とのコミュニケーションは、お互いが自分の理念やポリシー、哲学を語り合うことによって成り立ってゆく。日本人が外国人とコミュニケーションができない、ディペートができないのは語学力の低さとか日本人のシャイな性格が本質ではない。日本人の多くは語るべき理念、ポリシーや哲学が無いからだと先に言った。そしてその責任は個々の若者にあるのではないということも言った。今や日本の国の表面的なリーダーや文部科学省をはじめとする官僚にも哲学は無い。そして新聞・テレビなどのマスコミは為政者や権力者の意に沿った垂れ流し情報を流すのみで、物事の本質に迫ろうとしない。心あるマスコミの人材は多くいるのだろうけれど、権力者・為政者が物(文句)言わぬ『愚民化』政策を実施する、社会のシステム化に奔走しているような気がしてならないが、誤っているだろうか。

(続く)

【一押しBook】

題名:「私たちはなぜ働くのか(マルクスと考える資本と労働の経済学)」

著者:佐々木隆治(1974年生まれ。一橋大学社会学研究科特別研究員。一橋大学大学社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)

内容:

 今日の雇用は大変厳しい状況にある。2008年のリーマンショックまでは戦後最長の好景気が続き、統計に載る大企業の内部留保は250兆円を超え戦後最大になった。一方雇用状況を見ると、信じられないことだが政府統計を見ても、従業員一人当たりの給料は20年来一貫して右肩下がりで減り続けている。これの背景は、有期雇用や契約社員などの非正規社員が激増していることや、派遣社員などで企業の正社員となれない状況、女性被雇用者の過半数がパートタイマーなどの非正規雇用といった状況がある。女性とともにそういった厳しい状況に置かれているのが若者だ。4割が非正規雇用であり、そういった中で『替わりはいくらでもいる』とブラック企業が徘徊する。また、電機業界では13万人のリストラを断行するばかりでなく、一方では経団連の長谷川氏、竹中平蔵氏、三木谷氏他面々がこぞって「解雇規制の自由化」とか「ホワイトカラーエグゼンプション」の大合唱をしている。

 本書は、『資本論』の入門書だ。『資本論』は特に第1巻が難解で、私は若い時に2回読んだが、深くは理解が及んでいない。特に第1巻は哲学的な論述で、私程度では余程頭が聡明な状態のときに、論理的思考を働かして読み込まなければ、理解がおぼつかない。本書は、そういった巨大な山のような『資本論』に分かりやすくアプローチをさせてくれる。

 さらに、現代の諸相を資本主義的生産関係と、賃労働と資本の関係で実に分かりやすく解明してくれている。本書の秀逸さは単に『批判の経済学』に終わるのでなく、先にも述べたように労働時間の短縮や生産の私的性格を弱める等の今日の閉塞状況を打開していくための貴重なサジェッションを提起していることである。

 若き哲学者の良心的な意欲作であり、一読をお勧めする。出来れば『資本論』への挑戦も。

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