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パライソメッセージ20130712 No.19

2013-07-11 18:14:26 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.07.12 No.19

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 「パライソメッセージ20130712 No.19」を送ります。「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:何故日本は『壊滅的な』状況になってしまったのか③ 

 プラザ合意は、1985年ニューヨークのプラザホテルで開催されたので、プラザ合意と言われている。G5で行われた合意で、為替レートの安定化ということであるが、実際は当時1ドル230円位だったと思うが、円に対する徹底的なバッシングである。つまり貿易赤字の苦しむアメリカが、その原因を実態からかけ離れた円安であるとし、徹底的に円高に誘導し、自国の輸出圧力を強めようとしたことである。更には、円高誘導だけでなく、ドルの国際通用性を維持する為に日本がアメリカ国債を買い支えるといった『構造的に歪んだ』為替に関する合意であり、円のいわゆる『独歩高』といった状況が、『日本への制裁』といった国際世論を鼓舞する中で強引に進められた。

 円の独歩高はアメリカの貿易収支を改善させただけではなく、それによって勢い付いたのが韓国、中国、台湾といった新興工業国で、現代、サムスン、ハイアールや鴻海といった企業が対円の自国通貨安を梃子に急激に成長していった。それに対抗して日本企業、特に自動車、家電といったメーカーは製造拠点の海外移転を進めて行く。当初は部品製造を海外に移転し、国内でアッセンブリをしていたがやがて部品製造子会社、下請け会社の海外移転、海外で最終製品製造・販売と国内産業の空洞化がどんどんと進められた。国内産業の空洞化を進める日本企業の危機対応力は『すばらしく』、そういった状況の中でも最高利益を更新し続け、戦後最長といわれるイザナギ景気が実現する。巨大企業は内部留保を蓄え続け、260兆円もの蓄積、GDI(GDPではない。海外での利益も算入したもので、最近選挙目当てに安部首相が150万円の個人所得増などと、欺瞞的なプロパガンダの根拠になっている数値指標)の市場最高値の更新に連動している。しかし、実質賃金は20年来下がり続け、大企業の企業利益は最高値を更新するのに、生活実感は全く良くならない現象が定着する。

 しかし、日本企業の『奮闘』空しく、強烈な円の独歩高は新商品の新たな国際競争を全く無力にしてしまう。地デジへの電波の強制変更による液晶テレビの買換え需要によって空前の好況をバネにシャープやパナソニック、ソニー等は巨大規模の生産設備投資を行う。シャープの亀山工場、堺工場、パナソニックの尼崎工場等々。これらは世界戦略も視野に入れた巨大設備投資であったが、薄型TV、液晶TV、プラズマディスプレー等々はサムスンとの国際競争に木っ端微塵に敗れる。太陽光発電、スマートフォン、スマートフォンも悉く韓国、中国、台湾のメーカーに破れ、もの作り日本を支える精巧・緻密な部品メーカーが、部品を供給するだけの構図となった。自動車メーカーの没落も惨憺たる状況となったのは公知のことである。

 これらは何も日本のメーカーの技術力が劣化したからではない。正確に言うと、リストラやヘッドハンティング等の内的・外的要因による人材の流出、特にサムスンや現代の韓国企業への人材流出が大きな要因とはなってはいるが、高度成長期の日本がそうであったように、技術はいずれキャッチアップされるのは不可避である。日本企業の製品が国際競争において惨憺たる状況に陥った最大かつ決定的要因は日本パッシングによる極端な円の独歩高であろう。円はプラザ合意以降わずか1年で、1ドル230円から100円に高騰する。海外での日本製品の価格が倍以上に値上がりし、貿易による利益が一気に半分以下まで下落したのである。

 それでも利益を維持しようとする巨大企業は、猛烈なコストカットに踏み込む。原材料費の買い叩き、下請けの徹底的な締め付け、正社員の非正規社員への置き換え、季節工の解雇等あらゆる手段を講じて利益を確保し、内部留保を増やし続け、逆に表面的には戦後最長のイザナギ景気となった。あの好景気は、働くものや下請けを収奪することによって作られてきた「景気」であって、手段を選ばず利益を追求する『株主資本主義』の本性を露にしたものであった。新自由主義者が言う、徹底的に企業利潤を最大限にすることによって、やがて労働者も潤うということなどには全くならず、逆に企業は極限以上の下請けの締め付け、人件費をコストとして大幅なカット等によって利潤の追求を進め、挙句260兆円もの内部留保を蓄えた。共産党などは内部留保の1%を取り崩し、人件費に充足せよと提言しているが、全く正論だと思う。

 プラザ合意による円の独歩高は急速に日本の製造業に打撃を与え、日本に『壊滅的』打撃をもたらす象徴的施策となった。プラザ合意が欧米、特にアメリカによる日本パッシングであり、これが日本の企業に壊滅的打撃を与えているのは、学者、評論家、企業家、少し勉強している政治家、要するに誰もが分かっていることなのに、共産党など一部を除けば、何故誰も異議を唱えずに甘受しているのか。アメリカと同盟どころか、まるで属国ではないか。何も言えない理由はまた別の機会に述べたい。

  日本を『壊滅的状況』に陥れたもう一つの事由であるBIS規制については、次回に述べる。

(続く)

 

「一押しBook」

書名:何者

著者:朝井リョウ 1989年生まれ早稲田大学文化構想学部在学中に『桐島、部活やめるってよ』でデビュー、小説すばる新人賞。他に『チア男子』他。サラリーマンをしながら書いた『何者』は、直木賞受賞。

出版社:新潮社 本体1,500円(税別)

内容:

 私は小説をあまり読まない。読むのは司馬遼太郎の歴史小説と、社会の歪みを直視し告発する山崎豊子の小説。両氏の小説は殆ど全て読んでいる。それと、やはり社会性に富んだ問題提起を投げかける松本清張の小説。『何者』は図書館に貸出予約をして、借りるまでに3ヶ月以上かかった。

 『何者』のストーリーは、4人の若者の就職活動を通して展開していく。4人の若者はそれぞれの理由で5年生。「俺」は去年就活に失敗して5年生になったが、他の3人は就活1年生。それぞれの個性で就活を進めていて、ノリが良かったりたまにはギクシャクもするけど、彼らのコミュニケーションは若者らしくフランクで一見良好。彼らはまたSNSで繋がれており、ツイッターでつぶやいたり、フォローしたりする。そして最後の最後の意外な結末で、若者の心の機微を描いている。

 作者は、NPO法人POSSEの雑誌『POSSE Vol.19』の対談で「(就活)独特の強迫観念と、他人を笑うことが主体となっているSNSの存在に対する違和感」がこの本の着想と言っている。

 私は、ストーリーのバックグラウンドが就活ということで、ある種『社会を告発する社会派小説』の期待を持って一気に読んだ。ところで、私が小説をあまり読まないのは、どの小説も結果は人の心の機微を描くもので、『みんな同じ』といった思いがあるからだ。

 その意味では『何者』も他と同じ小説だった。作者はまだ若い現役の『サラリーマン』だ。文章力、着想力、感性は若々しいしテーマも斬新。今後に期待。

 

イソの評価:★★☆☆☆

 

蔵書:茨木市民図書館


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