剱岳山行④
剱岳山頂から立山連峰、はるかかなたに槍ヶ岳・穂高連峰が遠望
頂上では360度の展望を楽しむ。北の方を見れば雄大な八ツ峰の尾根が北方稜線につながり、その右には映画「剱岳点の記」で宇治長次郎や柴崎らが登ってきた長次郎谷が雪渓を残し、長次郎谷を挟んで源次郎尾根が剱岳ピークへと迫ってくる。遠方に不帰の剣、唐松、鹿島槍などの後立山を見、さらに右南方方面を見ると、雄山、大汝山のピーク、富士の折立の立山連山が見え、なんと連山の左端はるか奥に、槍ヶ岳とそれに連なる穂高連峰までもが遠望できる。ただその右平蔵谷、前剱から大日岳より先、富山平野方面は少しガスっていて、残念ながら眺望は無かった。しかし標高2000メートル以上は至上の快晴であった。
次々と登頂してくる人たちと話していると、中高年夫婦がガイドさんとともに北方稜線を歩いてきたといいながらザイルを解いていたり、源次郎尾根を登ってきたという若手のパーティと写真を撮りあったり、中高年の男性とご婦人二人が、早朝馬場島を出発して、早月尾根を登り(標高差2000メートル以上で普通は途中の早月小屋に1泊するのだが)日帰りでまた馬場島へ戻るとか、いろんな登山をそれぞれが「楽しんで」おられる。わが一行は『無理なく、事故なく、楽しんで』である。頂上で昼食、写真撮影をゆっくりと楽しんだあと、下山開始。
下山路はしばらく行くと最初の難路カニのヨコバイに来る。ここも鎖や梯子は付けられているが、ホールドやスタンスの取り方が少し厳しく、そして高度感がありそれなりに緊張はする。下山路で追い抜いて行った軽装の青年が鎖場で「降りられないんですよ」と言って立ち往生し、次女に弱音を言っている。スタンスが遠くて見えないのだ。しかも崖の上なので高所に弱い人には多少つらいかもしれない。まあ何とか彼もカニのヨコバイを超えて降りて行って、続いてわが一行もまとまって下山を続けた。
前剱のピークを捲いて少し平地で休んでいると、ヘリコプターが低空を何回も旋回している。しばらくすると一服剱の向こう側に降下して見えなくなった。やがて上昇し、再び何回か旋回し降下して行きまた見えなくなった。一服剱の向こうで見えないけれど、かなりの時間ホバリングし、やがて上昇し富山方面へと飛んでいった。
剱山荘への荷物のデポかな、それとも病人でも出たのかなと話していたが、あと一息で本日の予定行程も終了なので、慎重に下山を続けた。一服剱を越え、いよいよ本日ゴールの剱山荘が見えた。頂上から抜きつ抜かれつしている「ばてています」という、チンネ登攀断念クライマー2人パーティとも談笑しながらも慎重に下山を続け、剱山荘にゴール。
わが一行は本日の労をねぎらいながら、剱山荘のスタッフに先ほどのヘリコプターのことを聞くと、一服剱の下降路で女性が滑落して意識不明のまま滑落現場から救出されたとのこと(翌日亡くなられたとの連絡が入った。30台の女性とのこと。)。ゴール間近でふと緊張が解けたのか。剱岳では一昨日もチンネを登攀していたクライマーが転落して亡くなられている。剱岳とはそういう山なのだとつくづく思い入る。・・・合掌・・・
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