ついに結願。ただし、歩き通せなかったのが大変心残り… JR高徳線で発心の寺霊山寺へお礼参り。走馬灯のように駆け巡る思い出
二〇〇三年八月六日、いよいよ結願の日である。朝五時四十分に起床し、身支度を整え六時二十分に朝食を頂く。六時四十五分に「民宿ながお路」を出発し、 いよいよ結願の大窪寺をめざした。 県道三号線を、痛む足を引きずってただ黙々と歩く。足の浸潤液は止まることなく、朝に足を見た時はべっとりと血液混じりの浸潤液で濡れていた。マメができ た程度なら、五分も歩けばそれなりの「歩きのリズム」ができてきて普段どおりの歩きができるのだが、今回はどうもまずい。ますます痛みがひどくなり、ズキ ズキと疼く。
もはやずり足で歩いても痛みがますますひどくなってくる。
いろんなことが頭をよぎりだした。
『リタイヤして、次回長尾から歩き直すか』
『次回はいつか、年末か、来年の夏か』
『こんな、単純なミスをしてただただ悔しい』
『悔しくて情けなくて泣きたい気持ちだ』
『自転車にしておけば良かった』
等々が交錯する。 ついに、七時三十分、“連れ合い”に
「もうだめ。歩けないので長尾の駅から大阪へ帰ろう。」
もう両足が痛い。足を引きずるようにして、県道をUターンし長尾の町へと引き返した。八時過ぎに長尾に戻ると、琴電長尾駅の近くの県道に面して大川バス のターミナルがあり、ひょっとしてそこから大阪行きのバスが出ていないか聞きに入った。案内所の人は親切丁寧に対応してくれたのだが、ついでに大窪寺へは バスでいけるのかどうか訪ねてみた。するとなんと九時五分に、ターミナルから大窪寺行きのバスがあるとのこと。しかも、町からの補助金が出ており、百円で 行けるとのことである。折角ここまで来たのだ。“連れ合い”と相談し、いずれリベンジはまとめてするとこととして、今回はバスに乗って、とにかく結願を果 たそうということになった。そうすると、一番札所鳴門の霊山寺にもタクシーとJRを利用して行ってしまおう。時間表を見て、前山ダムサイトにある「おへん ろ交流サロン・へんろ資料展示室」にも立ち寄って、そこからタクシーでJR造田駅に行き、高徳線で板東駅へ、そして霊山寺へと、急遽行程の立て直し。
タクシーの予約をお願いして、バスの待合室に移動した。九時五分発のバスを待っている間に、地元の若い女性に
『御接待をさせてください』
とペットボトル入りの良く冷えたお茶を頂いた。遠慮するわけにもいかず、ありがたく頂いたが、歩きとおせなかったことや、すばらしい信仰心があるわけでもないことやらで、気恥ずかしい思いがする。 九時五分の定刻に大窪寺行きのバスは発車し、長尾の町中を通り抜け、やがて前山ダムのダムサイトを通り、山の中へ。いくつかの集落や学校があり、バスの乗客も地元の人や小学生、中学生が七~八名、それぞれの停留所で乗降する。
やがて、九時四十三分に大窪寺のバス停に着いた。 足を引きずって、バスを降りたらすぐ目の前が結願の寺、四国第八十八番札所「大窪寺(おおくぼじ)」である。バス停から少し回り込むと、大きくて立派な朱塗りの仁王門がある。仁王様も金箔を張った立派な姿である。
ここから境内に入るとまず大師堂があり、その横に金剛杖の奉納場所があり、たくさんの金剛杖が納められている。本堂はまだ奥にあり、並びが不自然である のだが、実はこの仁王門は最近建立されたとのことで、昔の仁王門はちゃんと本堂の前にあり、後に女体山を従えた本堂を仰ぎ見られるようになっている。新し い仁王門はどうも観光客向けのセットのような感じがしないこともない。
ともあれ、お参りを済ませ結願の納経帳への記帳を頂いた。“連れ合い”は私に結願の感想を求めてきたが、いろんなことが思い浮かび、まとまった思いが抽出されるわけではない。 感激というより、むしろやりのこしたことや後悔したこと、心残りなことが浮かんでくる。
「最後に歩けなかったことが痛恨の思い」
「次回は歩き(自転車でも良いが)で通し打ちをしたい」
「焼山寺には次回には自分の足で登る」
「もっとたくさんの人たちと出会い、触れ合いたい」
「中抜けになっている薬王寺から甲浦の間を歩かねばならない」
等などである。やりとおした充実感というものはなぜか余り湧いてこない。反省ばかりが心をよぎってくる。そんな気持ちを抱きながら、激痛の足を引きずって境内を歩き散策した。
バス停に戻り、十時三十五分大窪寺発のバスに乗り、十時五十分に前山ダムで下車。ダムサイトの道の駅のレストランで少し早めの昼食にうどんを食べた。こ れで今回四国へ来て三回目の昼食だが、全てうどん。さすが讃岐の国だ。うどんが食べたくなる雰囲気がある。昼食後、「前山地区活性化センター」にある「へ んろ資料展示室」に立ち寄る。へんろの歴史とか、古文書も含めたくさんの資料が展示されている。ゆっくりと見学していると、ここでも御接待ですといって会 館の職員の方から缶ジュースを頂いた。
(続く)