大峰奥駈けの道 ファイナル④
いよいよ大峰奥駈道のエピローグ。余韻を踏みしめながら熊野本宮へ。
修験道の雰囲気を残す雨の山在峠
「山材峠」を出発すると、すぐに舗装道路にぶつかる。それを横断すると、大きくて立派な観光案内用の看板がある。看板の横から右手の方に尾根に続いてい
る道があり、そこからは再び山道となる。また登路となり尾根筋を辿る。雨が少し小止みになってきたのと、標高が下がってきたのとで、蒸し暑く感じるように
なってきた。同時に相変わらず蚋がうるさい。
少し歩くと十二時十分に「吹越宿跡」に着いた。「吹越宿跡」は広場になっていて、杉の大
木に囲まれ、石の祠や石造物や石組みがあり、この場所も修験道の厳かな雰囲気が漂う静かな場所であった。 峠 「吹越宿跡」を出ると、奥駈け道はまたすぐ
に県道の舗装道路にさえぎられる。舗装道路を右に行くと十津川温泉から熊野本宮へ向かう国道へと続く。県道を横切ると右手には「下向」に行く舗装していな
い林道が続き、左前方は再び尾根に向かう山道。私たち3人は山道へと入っていった。おそらく奥駈け道のエピローグ、最後の山道らしい山道であろう。
山道を登り、しばらく行くと開けた尾根となり、電波の反射板の鉄塔がある。鉄塔をすり抜ける感じで歩くとすぐに展望が大きく開けた、まるで公園のようなベンチもある「吹越峠」に出た。
七越峠から雲間に熊野本宮、大斎院の大鳥居
十三時ちょうど。連れ合い、次女ともども「やったー」と歓声。雨は止んだが、少し雲はかかっている。雲の隙間から右手の西方面には熊野川が悠々と流れ、そ
の先には熊の本宮がかすんで見える。すぐ右下には、旧本宮の「大斎原(おおゆのはら)」の大鳥居が薄雲の隙間から見える。ついに大峰奥駈け道を、踏破した
という実感が「どわっと」湧いてきた。三人でたくさんの記念撮影をし、「吹越峠」で十三時三十分まで、余韻に浸っていた。
ここからは木組みの階段を降りると、整備された公園、広場があり舗装道路が続いている。ここで写真を撮ったりした後、広場、駐車場を横切って、木組みの階
段を上り、三人は十四時十分に「七越峰」(標高二百六十二メートル)へと上った。「峰」とは言うが、ちょっとした丘でありお稲荷さんの社がある。とにか
く、最後の最後まで、大峰奥駈け道にこだわった。 「七越峰」を降りると後は舗装道路。駐車場から遊歩道の木組みの階段を降りていくと、関西電力の「関電
自然の森」がフェンスに囲まれてある。わが一行はフェンス沿いにずっと歩き、やがて再び舗装道路に出会う。後はずっと舗装道路を歩き、熊野川にかかる備崎
橋を渡り、備崎を過ぎ熊野川沿いを遡った。山の方を見ると先ほど歩いてきた「七越峠」の電波反射鏡が良く見えている。そして十五時ちょうどに熊野本宮へと
到着した。
熊野本宮では記念撮影と参拝のあと、ゆっくりと参詣道を降りて来た。大峰奥駈け道を、何と五回に分けてだけれ
ど、踏破した余韻はなんとも心地良い。連れ合いと次女と三人で、少しけだるい雰囲気でこの山行を思い出し、そして充実感に浸っていた。十五時五十分にタク
シーに乗り、湯の峯温泉に向かい、ホテル「湯の峰荘」へと向った。
(完)