玉置神社の出雲大社
大峰奥駈の道 Ⅳ-④
未明から雷交じりの暴風雨。早々に本日は十津川温泉まで
エスケープと決定。大峰奥駈ファイナルは次回に持ち越し。
五月六日未明、三時半頃であった。かなり強い風雨の音に雷鳴も聞こえ、目が覚める。うーん、うっとおしいな。どうしようかな。と思い巡らしながら布団の中で転寝しながら思案三昧である。そのうち四時になったので起き出して隣室に顔を出すと、すでにAさん一行は全員起床して車座になっていた。
「Aさんどうする。ちょっとうっとおしいな。」
「ああ、今日は駄目だ。エスケープに決めたよ。」
と、あっさりしたものだ。よし、エスケープに決定。みんなで決めれば未練も残らない。
みんなで三々五々朝食を摂り宮司さん、若い神主さんにエスケープすることとお世話になったお礼を言い、そしてエスケープルート確認のため周辺ハイキングマップを貰ってきた。部屋へ戻りAさんパーティにN氏も加わりエスケープルートを検討した。ルートは駐車場から林道切通しの道を横断し、折立・十津川分岐から山中を十津川温泉に向かって行くこととした。
五月六日朝八時三十分出発。神社の生活道路を辿り、駐車場を横断し林道の切通しの道を横断し、九時十五分に折立・十津川分岐へ到着した。意外と時間がかかった、というよりのんびりペースである。分岐に立つとまっすぐ西方向へ下っていく折立への道には「自然歩道」の看板が出ている。左側へは十津川温泉へ行く(はずの)道が続いている。わが一行は予定通り左側への道を進んだ。
しばらくは快適で順調に「道」を辿っていったが、やがて「道」はだんだんと険しくなってくる。私やAさんが交互にトップになり進んでいくが、行く手が不明になるたび何度か行きつ戻りつし、そのうちにやがて崖の上に出たり、藪漕ぎもできないにブッシュに行く手を遮られたり、急斜面にぶつかったりしてついに進退きわまってしまった。
玉置神社境内にある地図の看板
Aさん
「あかん。戻ろう。」
私
「戻ろ。」
ということで、切通しまで戻ることとした。この道はハイキングマップのみならず、登山地図にも明瞭に書かれているが、実際の道はあちこちで崩れていたりしてこの時点では通れない状態であった。
N氏や他のメンバーはもっと早くから戻ろうといっていたが、私とAさんがぎりぎりまで引っ張っていったのだ。
やがて、十時三十五分に折立・十津川分岐のある切通しの林道に戻った。私はさっさと舗装した林道を十津川温泉まで行くつもりであるが、今度は分岐のところで舗装道路でなく折立まで「自然歩道」を行こうとの意見が出てきて、しばし評定。Kさんあたりが「自然歩道を折立まで行こう」と主張していたらしく評定はかれこれ三十分ほど続いた。やがて話がまとまったか、全員が分岐からぞろぞろ降りてきて、結局舗装した林道を十津川温泉まで下りることとした。
舗装した林道などといっても、両側の崖から落ちてきた大小の石が道のあちこちに転がっており、落石に気を使うわ、雨はどんどんと降ってくるわでわいわいがやがやではあるが、結構大変なエスケープロードではあった。
長いエスケープの末、やがて十津川に架かる「猿飼橋」を渡り、温泉と反対の「鈴入」の集落のバス停へと行った。しばらくは上り下りともバスはなく、雨はどんどんと降ってくるわ、雨宿りする場所はないわで結局十津川温泉のバスターミナルへ行くこととした。
Uターンしてどんどん歩き、十津川温泉で温泉に浸かりビールをあおる目論見のAさん、Kさんと分かれ、やがて十三時五分に「十津川バスターミナル」に到着。ターミナルでやっと雨具を脱ぎ、待合のベンチに座り玉置神社で作ってもらった昼弁当の「めはり寿司」をいただき、ほっと一息。
十三時四十五分発の新宮行きの奈良交通バスが十津川バスターミナルに到着し、わが一行はそれに乗る。十四時二十分本宮大社前に着。N氏はそのまま新宮まで向かい、紀勢線経由で東京まで帰るとのことで分かれる。本宮大社では雨も小止みになり、コーヒーを飲み孫たちへの土産を買う。十五時十分本宮大社前発JR白浜行きのバスに乗り、熊野古道の中辺路の道に平行しながら、やがて十六時十五分JR白浜駅着。
十六時三十分発の「くろしお三十号」に乗り、大阪へ、家族の待つ茨木へと向かった。
(終わり)