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四国88ヶ所 自転車遍路の旅⑩

2006-07-10 23:04:10 | 遍路
            三角寺の仁王門。梵鐘がある。寺の中は
            きれいな花畑。

 今回は、四国88ヶ所自転車遍路の旅7-2で通算で⑩です。

 約四十分で山道を降り、広場まで戻って六十一番札所へ向かう準備を整えている間、地元の人が入れ替わり湧水を汲みにきていた。広場から国道十一号線までは一気の下り。国道十一号線の大頭の交差点に出ると今度は来た道を戻る。高速道路の小松インターチェンジにつながる高架橋を過ぎ、やがて少し大きなショッピングセンターがあり、そこから再び右手に入り五~六百メートル行ったところに「香園寺(こうおんじ)」がある。
十時四十五分第六十一番札所「香園寺」に到着。「香園寺」は遠くから見ると体育館かホールかと見間違うほど立派な近代的建物である。広い境内に鉄筋三階建ての建物があり、二階が本堂となっており、立派な金色の大日如来が祀ってあって、その横に弘法大師が祀ってある。講堂のようになっていてたくさんの椅子が置かれ、ツアーの団体遍路さんが一心に読経をしており、まるで大寺院の伽藍のようである。「香園寺」の隣にはちょっとしたホテルのような立派な宿坊があり、設備は行き届いているようにみえる。さきほどの「横峰寺」と比べるとまるで別世界である。ツアーの団体遍路さんも多く、にぎやかではあるが、お参りを済ませ納経帳に記帳を頂いた後境内を見ると、地元のお年寄りが日光浴などをしていたりして、天気もよくのどかな雰囲気であった。
「香園寺」を済ませふたたび国道十一号線に出て、東へと朝に来た道を再び戻る。まもなく第五十九番札所「国分寺」や東予市方面より左側から合流する今朝通ってきた国道百九十六号線との三叉路に出会い、百九十六号線とは離れて、今度は東の方へと直進して走った。
第六十二番札所「宝寿寺(ほうじゅじ)」へは十一時十五分に着いた。「宝寿寺」は国道十一号線に面しており、JR予讃線「伊予小松」駅の近くにある。国道十一号線は交通量も多く走るのに結構気を遣うのだが、さらにツアーの団体遍路さんのバスと競って走る形になり落ち着かなかった。
実は私はこの「宝寿寺」と次の第六十三番札所へは以前に訪れたことがある。私が立命館大学に就職する前に勤めていた民間会社の営業で、四国を担当していた時にこの国道十一号線は営業車で何度も通っている。そのときに、国道上に掲示された「四国第六十二番札所 宝寿寺」の看板を見て、何とはなしに気になって車を停めた。車を降りて寺の境内を見ると歩きお遍路さんが一心に読経をしていたり、また他のお遍路さんは地元のお年よりと談笑していた。空海が生きつづけ、そして広めた「庶民宗教」を、今も脈々と息づかせているお遍路さんたちの世界に興味を持ったものである(自分もなろうとまではおもわなかったが)。お遍路さんたちはもちろん遍路に旅立つ動機はそれぞれ複雑ではあろうが、「同行二人」の世界に浸り、修行の中で自分を再発見し、各々が遍路を楽しんでいるように思えた。こうしてお遍路さんたちが「同行二人」の世界に浸っている様子は「四国遍路曼荼羅」を見ているようであった。
「宝寿寺」を出て第六十三番札所「吉祥寺(きっしょうじ)」へは十一時三十分着。六十一番札所から六十三番札所まで三キロメートル程しか離れていない。「吉祥寺」もやはり国道十一号線に面し、JR予讃線「いよひみ」駅の近くにある。両寺ともこじんまりとした里寺で、地元の人たちがお参りに来る寺なのだろう。「吉祥寺」の本尊は寺の名前からして吉祥天かと思うが、そうではなく毘沙門天であるとのこと。四国唯一らしい。そのようなことが寺の案内看板に書かれてある。
ツアーの団体遍路さんとぶつかり、お参りの後納経帳に記帳してもらうのに長い順番待ちになりそうだったが、私は一人だけなので先を譲ってくれた。ありがたくお礼。
「吉祥寺」を出て再び国道十一号線を約四キロメートルほど走り、右手に「石鎚神社」の大鳥居を越え、左手に「石鎚温泉」のあるところを右折し、約五百メートルで第六十四番札所「前神寺(まえがみじ)」に着いた。時間は正午ジャストで、快調なペースだ。
「前神寺」は国道からわずか五百メートルほど山手のほうに入っただけであるのに、樹林に囲まれた閑静な寺である。寺の沿革を記した看板には石鎚修験道場として歴史を刻んできた寺であると書かれてある。寺のすぐ隣には広大な「石鎚神社」があり、山上の「成就社」、第六十番札所「横峰寺」とも合せ、石鎚山を核とした山岳宗教の壮大な営みが充分に感じさせられる。「前神寺」の本堂は石段を登った奥に、緑の森を従えて建立されている。本堂を取り囲む樹木の若葉が、鮮やかな萌黄色に色づいておりに、まるで燃えているようであった。
「前神寺」から第六十五番札所までは、石鎚山系を離れて国道十一号線を東へ延々と四十キロメートル以上走る。JR予讃線と並行して走るが、主な駅でいうと「伊予西条」から「新居浜」を通り過ぎて「伊予三島」までの距離にあたる。実は、出来得る限り本日中に第六十五番札所のお参りと記帳を済ませておきたい。そのためには十六時五十分までには次の札所に到着しておく必要がある(記帳は十七時まで)。そして明日は朝一番から標高九百十メートルの「雲辺寺(うんぺんじ)」を目指し、余裕を持って登りたいと考えていた。そのため、一心に自転車を漕ぎ続けた。途中、中華料理屋であわただしく焼飯を昼食にとったりしながら、結局「伊予三島市」の市街に十五時四十五分に到着。
第六十五番札所「三角寺(さんかくじ)」までは標高差二百八十メートルほどあり、記帳に間に合うかどうかかなりきわどい時間であるが、まずビジネスホテルにチェックインし、状況を聞こうと思った。駅前通にある「三島第一ホテル」にチェックインし、フロントで「三角寺」までの所要時間を聞くと『自転車でなら一時間以内、四~五十分くらいです』とのこと。それではとばかり、ホテルに荷物を預け、身軽になって出発した。ところが、ホテルで貰った観光ガイド地図を見ながら、教えられた道を行ったのだが目印の施設・建物が全く見当たらない。どうやら、地図が古いか不正確なようで、そのうち隣接の川之江市に入ってしまった。時間は十六時を回り、気はあせる。地図をあてにせず、山のほうに向けて走り出した。しばらく走り、国道バイパスを越え、やっと遍路道が見つかった。山に向かって一心に自転車を漕いで登り出したが時間が気になる。雑貨屋さんで遍路道を尋ね、道を確認した。「松山道」の高架をくぐり、麓から見えていた変電所を過ぎ、しばらく行くと公園がある。年配のご婦人が二人談笑していた。


「すみません。ちょっとお聞きしますが、『三角寺』まで、どれくらいかかるでしょうか。」
ご婦人
「さー、あと五キロメートル以上あるし、途中坂がきついので自転車押して上がらんならんと思うので、一時間以上はかかるんやないですか。」

「いま、午後四時二十分ですが、五時までには着けないでしょうか。納経帳への記帳は五時までなんですよ。」
ご婦人
「いやー、それはなんともいえません。」

と、言われつつ傍らの看板に「三角寺まで四・七キロメートル」と書かれてあるのを見て内心あきらめざるを得なかった。大体が、ホテルから四~五十分というのは、自動車での時間だ。余り役に立たない観光ガイド地図といい、いいかげんな案内をされたものだと思ったが、文句をいっても仕方がないか、とあきらめつつホテルに戻った。十六時五十分ホテル着。
ビジネスホテルで、火照った体を冷やすため、超ぬるめの風呂に入りながら、汗まみれの衣類を洗濯。その後外出し夕食にラーメン、ライスと餃子を食べる。また、明日の「三角寺」から「雲辺寺」にいたる道中には適当な店がないようなので、近所のスーパーマーケットで昼用のロールケーキとチーズパンとパック入りカフェオーレを仕入れた。


「三角寺」から四国札所最高所にある「雲辺寺」へ、長く厳しいみちのり。
そこから一気に讃岐平野へ。そして涅槃の道場へ。

二〇〇三年四月二十八日(月)は朝六時に起床。本日も爽やかな五月晴れだ。ビジネスホテルの朝食は七時からなので、それまでに出発準備を整えておき、朝食後すぐに出発しようと思った。七時朝食。本日はかなりのアルバイトなので、結構満腹を感じるほどまで食べた。朝七時三十分出発。
昨日一度途中まで行った道を再び走る。伊予三島市街地を抜け、国道バイパスを横切り、県道を辿り、やがて遍路道へと合流する。しばらく走ると本日も登校中の小学生から「おはようございます」と挨拶をうける。当然挨拶を返すがすがすがしいものである。「松山道」の高速の高架を越えると、先を行く、アゴヒゲの若い歩き遍路さんがおり、自転車で追い越しざまに「おはようございます」と挨拶を交わした。変電所を過ぎ公園に着くと今度はご夫婦の歩き遍路さん。挨拶を交わし、ご主人は気合を入れるかのように「南無大師遍照金剛」と唱えた。ここから、山道となる遍路道(寺まで四・七キロメートル)と、舗装路(寺まで五・二キロメートル)に分かれ、私は舗装路を自転車で漕いで登る。かなり上まで漕いで登ったのだが、やがて急傾斜となり、自転車を降りて押して登る。二百メートルほど押して登ったところで道は平坦になり再び自転車に乗って走る。
八時四十分に第六十五番札所「三角寺」に到着。ホテルから一時間十分かかったことになる。結果的に昨日は無理だったのだが、ホテルの案内がそれほど大きく違っているというわけでもなかった。山門の下の駐車場で、先ほど下で挨拶を交わしたアゴヒゲの若い歩き遍路さんが先に山門に着いており、再会。


「えらく、早いですね」
アゴヒゲ遍路さん
「それほど急いでいるわけではないのですが。遍路道はショートカットで近いですし、登り坂の場合でしたら自転車でしたら漕いで登るのも、押して登るのも、歩きと変わらないか歩きより時間がかかるかもしれませんね。」

「そうですね。雲辺寺でまたお会いするかもしれませんね。」

そんなやりとり。
「三角寺」は観光バスのコースマップの看板なども出ており、にぎやかな寺かと想像していたが、早朝のせいもあってか、山間の閑静な寺であった。少し変わっているのは、石段を上がった仁王門に釣鐘が吊るしてある。ありがたく鐘を一突きし境内へと入った。境内は花壇がよく手入れされており、花が一杯植えられている。お参りを済ませ納経帳に記帳を頂き、山門の石段を降りる途中、下の公園で挨拶を交わしたご夫婦の歩き遍路さんがいた。やはり遍路道は早いようだ。ご夫婦は寺前の食料品店で、「雲辺寺」までの道中の食べ物を仕入れていた。その食料品店で国道百九十二号線への道を訪ね、九時十五分にいよいよ「雲辺寺」に向けて出発した。

                               (続く)

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