いせ九条の会

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わかちあいの精神

2006-01-18 | ご投稿
2005年11月27日に亡くなられた岩村昇さんは、日本 キリスト教海外医寮協力会の活動として、1962年にネパールで医寮奉仕を行ないました。

ネパールでの医療活動は過酷でしたが「学ぶことの方が多かった」といいます。1970年代はじめ、病で倒れた老女を若い運搬人が3日間背負って病院へ運んでくれた。お礼をはずもうとする岩村さんを運搬人は「ばかにするな」と怒 った。ではなぜと聞くと

「共に生きるために。生きるとは、弱き者と分かち合うことだ」。

岩村さんはこの言葉を胸に刻み込んだといいます。(朝日新聞「惜別」を参考)

「分かち合うことだ」の言葉は、自分を省みて動揺します。

「生きるとは、弱き者と分かち合うことだ」の言葉は、強者と弱者の格差を広げる新自由主義の路線を疾走する小泉改革とも違います。

分かち合いは共生する心です。共生の反対は敵対です。ある国に敵対意識や対抗意識が強くあると、ある一つの側面に目 を奪われて、相手の全体像を見られなくなると思います。そして脅威なるものを強調して、相手を軍事的に抑止する方向に向かいます。

日本 国憲法前文「政府 の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないやうにすることを決意」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しょうと決意」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等に立たうとする各国の責務である」

これらの理念は、共存・共生の心に貫かれ、世界の人々の未来に対する“道しるべ”となりうるものです。

日本 は軍隊による国際貢献ではなく、国連創設60周年記念式典でアナン事務総長が述べた「救う手立てがありながら、数億の人たちが飢餓や病気、環境悪化にさらされたままだ」という、世界の現実を解消することに貢献することだと思います。

北朝鮮の人権問題を韓国の人たちはどう考えるか/山崎孝

2006-01-17 | ご投稿
北朝鮮の人権問題は、日本 では北朝鮮の脅威と結び付けて述べられる側面があります。北朝鮮の人権問題を韓国の人たちはどう考えているか、いくつかの例を紹介します。

韓国で2005年12月に「北朝鮮人権国際大会」が開催。韓国と米国の民間団体が主催し、米国のレフコウィッツ北朝鮮人権担当特使が参加して「米国は北朝鮮住民の物資と自由について、強く懸念している」と述べています。日本 からは斎賀冨美子人権担当大使らが参加。この会議は北朝鮮から亡命した黄長朝鮮労働党元書記はじめ、日頃から北朝鮮非難を繰返している人たちが主導したNGO主催の会議だと言われています。

韓国政府 は「朝鮮半島の平和と安定に向けた政策が優先されなければならない」という立場を表明しています。レフコウィッツ北朝鮮人権担当特使は、韓国政府 との面談を求めたが、閣僚級ではなく次官級で対応しました。

韓国の進歩的運動団体は、北朝鮮の人権問題について見解を表明しています。

人権運動サランバン、カトリック正義平和委員会などの人権団体は11月30日、ソウルで「北朝鮮の人権問題への対案的アプローチ」と題した討論会を行なった。この日発表された宣言文では「南と北の人権の相互増進のために南と北の人権主体が出会い、<人権権対話>を始めることを希望する」「こうした努力を通じて北朝鮮の人権をめぐる現在の二者択一的論理にとらわれている対決構造を克服し、南北の人達同席への対案的論議が社会的に広がることを望みたい」と、今後の方向性を提案した。

平和ネットワークも11月に入って三回にわたる討論会を持ったほか、韓国キリスト教教会協議会も12月1日に「朝鮮半島の平和定着と北朝群人権法に関する討論会」を開いた(『ハンギョレ』12月1日付)。

一方、統一連帯などの団体は8日に記者会見を行ない、北朝鮮を孤立させようとする反共イデオロギーに基づく行事だとして即刻中止するよう要求した(『韓国日報』12月9日付)。(資料は「世界」2月号)

現在の情勢で朝鮮半島の問題で何が一番に考えるべきなのか。北朝鮮の人権問題が、“どのような絡みで取上げられているのか”を正確に捉え、北朝鮮の人権問題を考えていかなければと思います。

「機動衛生隊」を新設/山崎孝

2006-01-16 | ご投稿
防衛庁は2006年度に、航空自衛隊のC130機内で、重篤患者を集中治療室なみの高度医療を施 しながら、遠隔地の病院に搬送する「機動衛生隊」を新設する。内外の大規模災害にも利用するということですが、1月15日の朝日新聞は軍事アナリストの見解を伝えています。見解は「日本 や周辺有事での出動が本 来の目 的だろう。イラクのような海外の『戦闘地』への派遣も当然。部隊新設の前提にある」と述べています。

日本 は戦後60年間、戦死者は出してきませんでした。防衛庁は海外の戦闘で瀕死の重傷を負う戦闘を想定、これに対処する準備を始めたと受け取れます。このような事態が起こらないために、海外で武力行使ができる憲法にしてはならないと思います。集団的自衛権が行使できるようになれば、米軍と共に戦闘する可能性を否定できません。また、2005年10月29日の在日米軍再編中間報告の中には、日本 が高速輸送艦を導入し輸送協力をすることが盛り込まれています。世界的な規模で展開する米軍の軍事行動と共同していく方向です。

米軍は1月13日アフガニスタンと接 するパキスタンの部族地域の村を攻撃、子どもや女性を含む18人を殺害。テロ組織の幹部ザワヒリ容疑者がいるとの情報に基づいて攻撃したとのことですが、パキスタン政府 高官は、ザワヒリ容疑者はいなかったと否定。村では怒 りの声が上がっているといわれます。米軍は1月2日にもイラク中部バイジで、米軍がテロリストの隠れ家と見なして民家に対して空爆した結果、8人が死亡、女性3人、9歳の男の子も含まれる惨事を起こしています。

イラクのファルージャで多くの民間人を犠牲にした作戦など、目 的のためには民間人の犠牲を厭わず軍事行動をする性格の米軍。このような人道に悖る行動をする米軍と、改憲して「自衛軍」がその米軍と協同して戦闘する事態は御免蒙りたいと思います。

集団的自衛権行使の改憲と先制攻撃さえ持論の前原誠司氏。経済面での日中補完関係に目を向けず中国に対して「現実的脅威」と述べた前原誠司氏は、最近、民主党を集団的自衛権行使の改憲で党内を一本化すると言明。同党の横路孝弘衆院副議長は「戦前の青年将校みたいな発言をする」と批判しています。民主党が将来の国の行方の根幹に関る“集団的自衛権行使の改憲で党内を一本 化”すれば、専守防衛の考えの人々は民主党から離反することになるでしょう。

朝鮮半島の劇的変化と北朝鮮の脅威/山崎孝

2006-01-15 | ご投稿
北朝鮮による日本 人拉致事件は1970年代後半から80年初めにかけて起こっています。当時の南北の関係は厳しい対立関係にあり、韓国社会も独裁体制でありました。しかし、現在は南北の和解が進み朝鮮半島は劇的な変化を遂げています。

韓国政府 は1987年に全国で起きた大規模デモに対応して「6・29民主化宣言」を発表。1988年「光州事件」を叛乱から民主化のための努力と逆転の評価をします。1991年南北同時国連加盟。1992年韓国と中国は国交回復。

1992年の大統領選挙で文民政権が発足し、1998年には金大中政権が生まれます。そして北朝鮮の吸収・統一は排除する、南北間の和解協力を推進する太陽(包容)政策を掲げました。2000年には南北首脳会議が行なわれ南北共同声明が発表されます。

その中に「統一は自主的に解決する」「民族経済を発展させ、また、あらゆる分野での協力と交流を活性化させ、双方の信頼を固める」ことがうたわれていました。この方向は2003年に発足した現政権の「和解と協力」という政策に引き継がれています。

現在、南北の民族経済を発展させていて、韓国は北朝鮮に開城工業団地開発を行ない、金剛山観光事業は黒字に見込めるようになったといいます。

2005年12月に地方レベルの交流として、慶尚南道は2006年上半期に南北協力基金を平壌に10億ウオンを投入し農業機材・技術支援を行なう方針だといわれます。

「韓国日報」2005年12月9日付の報道は、南北間では2005年11月24日から25日にかけて、離散家族の第2回テレビ再会が行なわれた。朝鮮通信も25日、これを報道した。韓国国会は12月8日、本 会議で「南北関係発展に関する法律」を賛成多数で通過させた。この法律は南北の平和増進、人道的閏窺の解決、政府 の責任としての対北朝鮮支援などを明示、対北朝鮮政策の基本 となる内容である。同法は南北関係を、国家関係ではなく統一をめざす過程で暫定的に形成される特殊な関係と規定し、北朝鮮は厳然として存在する政治的実体であることを初めて法的に規定した。これにより、南北の交易は民族内部の取引と定義された。また、南北会談の代表や特使の任命に関する手続も明示された.鄭東泳統一部長官は「いまや国家保安法の時代から南北関係発展法の時代へと移 りつつある」とその意義を強調した。(「世界」2月号より)

このように朝鮮半島の状況は大きな変化を遂げています。韓国との友好や恩恵を受けている関係を破壊して、北朝鮮が日本 に戦争を仕掛ける必要を見出しえません。

2005年に北朝鮮は6カ国協議で、北朝鮮の安全を保障すれば軍事用の核兵器を廃棄すると約束し、米国は北朝鮮の核兵器の廃棄を実現すれば安全を保障すると約束しています。後はどのような行程で実現させるかで、意見が対立しています。6カ国協議の宣言が実現すれば、テポドンミサイルを日本 に向けて発射する必要はありません。

中国の脅威について考える/山崎孝

2006-01-13 | ご投稿
2005年12月8日、民主党前原代表は、中国の軍事力を「現実的脅威」と米国の講演で述べ、22日には麻生外相は、軍事費は「かなり脅威」と述べた。「現実的脅威」とは、国連を無視してイラクに軍事力を行使し、今も行使している米国の軍事力を問題にすべきです。それでは果たして中国は脅威となる政策を取っているのでしょうか。

2005年11月18日朝日新聞記事のキィワード要約は、中国の平和的台頭 中国政府 が目 指している発展のための新しい構想。一国だけで経済的に発展するのではなく、既存の秩序を崩さず、周辺国と協調し、一緒に発展して行くことを目 指す。これは2003年11月、アジアフォーラムで鄭必堅改革解放フォーラム理事長が提唱し、その後中国指導部が度々引用しています。

中国政府 は対外政策の基本 は、経済と科学による立国だと主張しています。この中国の動向を客観的に示したのが、2006年1月12日朝日新聞記事です。中国の主な輸出品目 は、電気・電子製品などを輸出している。NHKの番組は精密な工業部品を大量生産する金型産業は日本 の技術に迫るともいわれています。前述の新聞記事は中国は、日本 、ドイツと並ぶ貿易黒字大国になったことを報じています。

貿易市場を拡大させるのは昔のように軍事力を背景に他国を支配して権益を確保し市場を奪うのと違い、現在の世界はその国の人的資源と技術力、そして他国が投資する当該国の信頼度いかんです。このように平和的な要件が揃って経済が発展して貿易拡大が計られます。

2005年12月6日の朝日新聞新聞記事は、中国銀行業監督管理委員会の主席は5日開いた記者会見で、今年10月末時点で、外資系金融機関など22の外国投資家が17の中国銀行に対して出資した。出資額は合計で165億ドルに上り、国内銀行の総資本 の15%を占めると報じています。

日本 は中国への輸出の拡大が景気浮揚の要因だったといわれ、現在は中国が最大の輸出国です。中国の2005年の地域別貿易額は欧州連合(22.6%増)、米国(24.8%増)、日本 (9.9%増)の順位で、欧州連合、米国が大きく伸びたのは、欧米との貿易摩擦を避ける意味で欧米からの航空機の輸入を拡大したこと。中国に拠点を置く日本 企業が、逆に対欧米輸出を増やしたことも影響しているといわれます。

このように日本 と中国の経済は相互補完関係にあり、中国の軍事的脅威は中国の主要な側面ではありません。