いせ九条の会

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武器使用基準―「海賊」に便乗はいけない/山崎孝

2009-03-02 | ご投稿
(朝日新聞2月2日の社説)

 アフリカのソマリア沖で横行する海賊から日本商船を守るため、海上自衛隊の護衛艦2隻が今月中旬、現場海域に向かう。これは、自衛隊法の海上警備行動を適用した派遣だ。

 この応急措置とは別に、政府の「海賊対策新法」の概要が固まった。

 海賊行為という犯罪に対し、海上保安庁と海上自衛隊が取り締まりにあたる。海上警備行動とは違い、警護の対象は日本の船舶に限らず、他国の商船を守ることも可能とする。

 ただしこれは、海賊犯罪を取り締まる警察行動が目的だ。海上保安庁の手に余る事態には海上自衛隊が手助けするという仕組みが基本的な考えだ。

 政府は今回、海上警備行動による自衛隊派遣に踏み切るが、本来は、こうした法律をきちんと整備したうえで出すのが筋だったろう。

 最終段階にきた法案作りの焦点は海賊を取り締まる際の武器使用をどこまで認めるかという基準のあり方だ。

 海外に派遣した自衛隊の武器使用は正当防衛と緊急避難に限って必要最小限が認められている。だがこれでは、海賊船が警告射撃や威嚇射撃を無視した時に対応しきれない恐れがある。

 そこで、不審船などが停船に応じずに逃走した場合、海上保安庁の巡視船が船体に向けて射撃できる現行法の規定を援用して、公海上でも船体射撃を認める方向になっている。

 海賊行為を確実に阻止するために必要な措置だとしても、あくまでも過剰な武器使用にならないように、明確な基準と歯止めは必要だろう。

 派遣にあたって国会の承認は不要とされ、活動内容の基本計画を報告するだけにとどめるという。海外、それも洋上での活動だと、国民の目からは遠い。国会がきちんと活動をチェックできる文民統制の仕組みを確立しておかねばならない。

 法案作りに関連して見過ごせない動きが自民党内などに出ている。

 新法の規定を機に、自衛隊を海外に派遣する際の武器使用基準を広げたいという声が上がっていることだ。

 国連の平和維持活動でも、イラクでの活動でも、憲法が禁じる武力行使にあたらないよう、武器使用には極めて抑制的な基準が設けられてきた。それが自衛隊の活動範囲を必要以上に狭めているという不満は、防衛省や自民党内などでよく聞かれる。

 だがこの問題は、憲法のもとで日本の果たすべき役割、自衛隊の能力、国際社会の要請などを踏まえ、冷静に議論すべきことだ。海賊対策で認めたのだから、他の派遣でも認めたいというのはとんでもない筋違いである。

 平和維持活動一般への自衛隊派遣の問題と議論を混同させてはならない。国会での審議では、その点を明確にしてもらいたい。

【コメント】朝日新聞社説は、《法案作りに関連して見過ごせない動きが自民党内などに出ている。 新法の規定を機に、自衛隊を海外に派遣する際の武器使用基準を広げたいという声が上がっていること》を指摘しています。自民党はこの意図があるために、本来は海上保安庁の活動の範疇であり、マラッカ海峡海域の海賊対策にも実績のある海上保安庁の活動にはせずに、自衛隊の仕事にしてしまいました。

海賊対策という国民が反対しない事柄につけこんで、その海賊に対応する便宜として武器使用基準の拡大がされて、更に軍事的な自衛隊の海外派遣を行なう時の一般法を制定しその法律に武器使用基準の拡大がされてしまうことを許してはならないと思います。

自民党が海賊対策の中にこのような企みを持っていることを国民に知らせなければならないと思います。その意味でも古山葉子さんが紹介していたアバマ大統領の就任演説の一節《理想は今も世界を照らしており、我々が一時の便宜のために手放してはならないものである》の言葉は、平和憲法を持つ日本にとっても重要だと思います。