いせ九条の会

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私は現在の米国の北朝鮮政策は心配していない/山崎孝

2008-07-08 | ご投稿
【日米関係 ブッシュ時代の夕暮れ】(2008年7月7日の朝日新聞「社説」)

 「米国は拉致問題を置き去りにしない」。福田首相との会談後、共同記者会見に臨んだブッシュ米大統領が最初に取り上げたのは北朝鮮問題だった。

 洞爺湖サミット開幕の前日である。だが、サミットでの日米協力などを言う前に、まず「拉致」を語ろう。そうブッシュ氏が考えたのは、それだけ日本国民が米国の北朝鮮外交に心配を抱いていると感じたために違いない。

 福田首相は対照的だった。7年半に及ぶブッシュ政権下での両国関係を振り返り、「日米同盟は飛躍的に深化した」とたたえた。来年初めに任期を終える大統領の、おそらく最後の来日になると意識してのことだったろう。

 深化したはずの両国関係なのに、ブッシュ氏は拉致問題や北朝鮮の核に絡んで「米国が日本を見捨てることはありません」とまで語った。首相は会見で、大統領の言葉を引きつつ「心強く感じた」と支えてみせた。米政権にブッシュ時代の夕暮れは、拉致も核も解決に向けて厳しく取り組んでもらわねば困る。

 それにしても、ブッシュ時代の日米関係は、米国の外交路線に振り回されてきた7年半ではなかったか。

 9・11同時テロの後、当時の小泉政権はブッシュ氏の掲げた「テロとの戦争」に協力した。欧州主要国と米国との間に亀裂を生んだイラク戦争を支持し、国論を二分したまま、戦闘状態が続くイラクに自衛隊を派遣した。

 その背景にあった大きな要素が北朝鮮問題だった。

 国際社会で評判の良くないイラク戦争で米国に協力すれば、日本の安全保障に重大な影響がある北朝鮮問題で米国の支援を確かなものにできる。そういう考えがあってのことだろう。

 だが、結果として、イラクの泥沼状況が続く中で、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験をし、核実験まで強行して、危機は深まってしまった。拉致問題も足踏みが続く。

 日本外交が米国頼みなのは今に始まったことではない。しかし、米国が国際協調を重んじ、力の行使に慎重である限りはいいが、単独行動主義に走ると並走するのは容易ではない。

 国際政治は、ますます複雑な方程式になりつつある。中国の急速な台頭に加えて、インドが成長を加速し、ロシアも再び存在感を増している。21世紀のアジアが安定と繁栄の道を走り続けられるかどうか、予断を許さない。

 福田首相は中国との関係を改善の軌道にのせ、米国一辺倒だった小泉時代の路線を改めようとしているかに見える。だが、持論である日米関係とアジア外交がプラスに作用し合う「共鳴」はまだこれからだ。

 日米関係は基軸であり続けるが、「日米」だけですべては解決できな

い。その限界を学んだことがこの7年半の教訓ではないか。(以上)

【コメント】社説は《ブッシュ氏が考えたのは、それだけ日本国民が米国の北朝鮮外交に心配を抱いていると感じたために違いない。》と述べています。しかし、私は現在の米国の北朝鮮外交に心配を抱いてはいません。ブッシュ政権が北朝鮮を力で屈服させる路線から転換して、2006年12月に入るまで拒否していた米朝協議を粘り強く重ねて6者協議の合意に向けて努力している、現在の米国の北朝鮮政策を歓迎します。6者協議の進展で設けられた日朝正常化を話し合う部会が、唯一の拉致問題を交渉できる場となっていることを認識しなければならないと思います。

社説は《米国が国際協調を重んじ、力の行使に慎重である限りはいいが、単独行動主義に走ると並走するのは容易ではない》と述べていますが。米国の北朝鮮政策は6者協議という多国間協調主義であったにもかからず、日米間に隙間が生まれていることです。このことは日本の北朝鮮政策があまりにも硬直的な制裁一本槍であったことの証左であると思います。

社説は《ブッシュ時代の日米関係は、米国の外交路線に振り回されてきた7年半ではなかったか》と指摘しています。日本政府が米国に振り回されてしまったのは、戦争の歴史の教訓を汲み取り戦後の日本のあり方を示した憲法の理念をないがしろにして憲法理念に立脚しなかったからです。