s07 パルミラの光と影(2)
パルミラの遺跡はシリアのほぼ中央にある。今の政権を倒して政権を握ろうとしているISISを中心とした反政府軍と政府軍との間に戦闘が続いている。双方が外国の援助を受けていて予断を許さない。パルミラも戦場と化したらしい。ようやく形を遺していたバール神殿などが過激派によって爆破されたという報道もあった。20年前(1997年)のシリアは平穏で、数多くの遺跡は観光客で賑わい、街の市場は人で溢れ、広いシリア砂漠の中でも草が生えている場所には長閑に放牧が行われていた。現地のガイドは「シリアは社会主義国です。だから、この砂漠は殆どが国有地で、人々は国から土地を借りて牧畜をやっているのです」と説明した。シリアが社会主義国だとは初めて聞いたので全く驚いたことを覚えている。隣の国ヨルダンはそれとは違って国王の統治が続いている。シリアからヨルダンに入国するとき、銃を構えた兵士による厳重な検査があり、ガイドは怪しまれるような行動は慎むようにと警告した。今、両国の国境は閉鎖されて、どちらからも容易には入れないだろうし、パルミラにも行けないのだろう。
1,バール神殿
古来の神を祀る神殿である。相当壊れているがおおよその様子はわかる。過激派ISISがこの神殿や凱旋門などを爆破したという報道もあったが真偽の程はわからない。
2、カメラを構える人
陽が傾いてパルミラ遺跡は太陽光線の素粒子に包まれたようだ。この遺跡は、どちらを向けても絵になる。それは、撮る人の意識の反映なのかもしれない。
3,瓦礫の中を歩く人
沈む陽が長い影をつくりだす。ここでは瓦礫も撮ることの対象だ。一つ一つの石のカケラにもそれなりの歴史の重みがある.
4,孤独の夜がやってきた
生まれたものは滅し、造られたものも滅びる。夜の帳(とばり)がそれを教えてくれるように思える。
5,自由人牧夫
若い牧夫が彼なりのポーズをとってくれた。彼の牧場も国有地だという。20年前の話だ。アメリカ合衆国は2,014年末からシリアの過激派に対する爆撃を始めた。今なお続けている。しかしISの力は一向に弱わりそうになかった。爆撃機は砂漠に爆弾を落としているのでは、という人もいる。このモデルの青年も今は中年、激しい爆撃の中をかいくぐり、元気にしているだろうか、あるいは難民となって西欧の国に流れていったのだろうか。牧夫は、古代ギリシア、いやそのもっと昔から自由の民の典型だったのに。
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