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「アジア太平洋戦争」という歴史用語

2005-08-08 00:13:55 | Opinion
小生、ここ1年ほど前から、昭和16(1941)年12月8日から昭和20(1945)年8月15日まで続く戦争を「アジア太平洋戦争」と呼ぶようにしてきた。

これより広い時間範囲での戦争を指す呼称には「15年戦争」という用語がある。これは中国侵略の流れの中に、全ての戦争があったとする呼称だが、陸軍の動きを主とし、海軍の対英米戦がイメージから抜け落ちる嫌いがある。
逆に「太平洋戦争」(連合軍の用語 "The Pacific War" の翻訳)とすると、海軍が主となり、陸軍が中国から東南アジアで行った戦争が、イメージにおいて薄らぐ。
もちろん「第二次世界大戦」とするのは、ヨーロッパでのナチス・ドイツ軍対連合軍の闘いというイメージが強過ぎ、もちろんそれに日本の戦争(「太平洋戦争」)も含まれるのであるが、日本史の用語としては如何なものか。

そこで、陸軍・海軍の活動をともに含み、その戦域も明らかになる「アジア太平洋戦争」との呼称を使い始めたわけである。
ちなみに「大東亜戦争」なる用語は、陸軍主導で使われ始めたのではないのか。この用語に、海軍の西太平洋での闘いを含めるのには、かなりの無理がある。

8月6日付け「朝日新聞」朝刊「私の視点」欄で、外交評論家の金子熊夫氏が、「〈アジア太平洋戦争〉と呼ぼう」との意見を述べている。
観点は、小生とほぼ同様であるが、その時期としては、違いがある。
金子氏は、「15年戦争」を意識して、その開始時点を満州事変の開始(昭和6(1931)年9月18日)としている。
それでは、現行の「太平洋戦争」に当たる時期の戦争は、何と呼ぶのであろうか。それに関する記述はないので速断はできないが、この時期を分節することは、歴史学的にも必要であろう。

いずれにしても、歴史用語を定めることは、歴史的認識の問題である(時期を分節し命名することによって、その時期についての認識が確定する)。ある意味で、時代を示す用語がなければ、その時代はないのと同じである(「縄文時代」「弥生時代」という用語があるからこそ、われわれはその2つの時代を区別することができる。戦前の歴史教育においては、考古学的時代はなく、神話的時代しかなかった)。

どの時期を指す用語とするかは、今後論ずる必要はあるだろうが、「アジア太平洋戦争」との用語を使うことに、小生は賛成する。

*「真珠湾攻撃」に始まる戦争(実際には、マレー半島のコタバル上陸の方が2時間ほど早いが)を、何と呼んだらよいか?

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