しんぶん赤旗「潮流」より
延々とつづく激しい戦闘シーン。森で、雪原で、次つぎと倒れていく味方や敵。美しい自然と対比させるような人間の愚かさ。われわれはなぜ、銃を手にしているのだろうかと
▼第2次世界大戦時のソ連との戦争を描いたフィンランド映画「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」です。1939年、侵略してきたソ連に領土を奪われた同国は、それを取り戻すために41年から継続戦争に突入。当時の人口400万人のうち、50万人が従軍したといわれます
▼フィンランドはドイツと手を組んだことから戦後は敗戦国となって国土の1割を失い、多くが故郷を追われました。ソ連とは友好・協力・相互援助条約を結び、1300キロにわたって国境を接する大国との対立を避け、中立政策をとってきました
▼そのフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)への加盟に舵(かじ)を切りました。マリン首相はロシアのウクライナ侵攻によって「安全保障の環境がすべて変わってしまった」といいます
▼スウェーデンもつづくとみられ、NATO拡大の脅威を主張するロシアは、みずからの侵略行為がそれに輪をかける結果に。力による支配は力による対抗を招くということでしょう
▼先の映画では、たたかいが終わった後にフィンランドを代表する作曲家シベリウスの「フィンランディア」が流れます。かつてロシア帝国の圧政に苦しめられ、独立の機運が高まっていたときにつくられた曲。それは今も、平和と正義を求める民衆の心を呼び覚ましています。