創作日記&作品集

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連載小説「Q」47

2020-05-25 06:14:25 | 小説
連載小説「Q」47
四月七日緊急事態宣言。
四 月一六日に、全国に拡大された。
映画の世界に自分はいるのだと実感した。
コロナで死ぬかもしれない。
七十才以上で、糖尿、高血圧の持病がある。
若者がばらまいて年寄りが死んでいく。
先の戦争とは逆かもしれない。
因果応報。
不要不急の外出自粛などの行動制限をまったくとらなかった場合は、流行収束までに国内で約四二万人が感染によって死亡すると専門家が言った。
2020年4月15日
四十二万人が死ぬ。
順平は恐怖に震えた。
計算が出来なかった。
その数字と自分はどう関係しているのだろう。
七十才以上の持病がある人間となれば、確率は大幅に上がるだろう。
数字には顔がない。
数が一つ増え同時に名もなき死が一つ増える。
順平が死んでもデジタルの数が一つ増えるだけだろう。
一日中数字を漁っていると、何が何だか分からなくなる。
毎日朝起きると、「熱なし、咳なし、コロナなし」と声に出して唱えた。
今の時点では順平にとって新型コロナの怖さは「隔離」だった。
一階と二階があるよって、うちは自宅待機やなあと言うと、妻は、
「ホテルに行って」と言った。
ホテルの部屋に隔離。
神経が持たないと思う。
順平は気の小さな老人である。
孤独が好きだった筈なのに、一人で「死」に向かい合うのがたまらなく怖かった。
「わしはホテルはいやや」
思わず叫んでいた。
連載小説「Q」#1-#40をまとめました。