連載小説「Q」33
順平は頭の中に色々な仕事仲間を浮かべた。
今はその誰とも会うことはない。
一度別れたら二度と会うことはない。
――ほんまにそんなことがあったんかいな
と、不思議な気になる。
医事課からやって来たHさんは、算盤が出来なかった。
電卓専門だったから、人差し指のHさんと呼ばれた。
あの時代は算盤の時代だった。
ほとけのHさんとも呼ばれて好かれていたが、仕事では、随分軽視されていた。
薬品管理室はその点働きやすかった。
田代順平といういやな男がいる以外は。
確かに、Hさんにひどいことを言った覚えがある。
今の順平からは想像できない意地悪もした。
Hさんは今どうしているのだろう。
人伝にでも聞くことはない。
Hさんは台帳一枚一枚を集計していく。
薬価を掛け、納入価を掛け、それらを集計して帳票を作る。
Hさんは電卓に没頭していた。
その横で順平は、彼の仕事を一行一行コンピューターに命令していた。
連載小説「Q」#1-#30をまとめました。
順平は頭の中に色々な仕事仲間を浮かべた。
今はその誰とも会うことはない。
一度別れたら二度と会うことはない。
――ほんまにそんなことがあったんかいな
と、不思議な気になる。
医事課からやって来たHさんは、算盤が出来なかった。
電卓専門だったから、人差し指のHさんと呼ばれた。
あの時代は算盤の時代だった。
ほとけのHさんとも呼ばれて好かれていたが、仕事では、随分軽視されていた。
薬品管理室はその点働きやすかった。
田代順平といういやな男がいる以外は。
確かに、Hさんにひどいことを言った覚えがある。
今の順平からは想像できない意地悪もした。
Hさんは今どうしているのだろう。
人伝にでも聞くことはない。
Hさんは台帳一枚一枚を集計していく。
薬価を掛け、納入価を掛け、それらを集計して帳票を作る。
Hさんは電卓に没頭していた。
その横で順平は、彼の仕事を一行一行コンピューターに命令していた。
連載小説「Q」#1-#30をまとめました。