猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

自民党憲法草案の重大な”忘れ物”-緊急事態条項

2005-10-30 05:16:58 | 憲法
 昨日、自民党憲法草案に関して、注目条文とコメントを書いたが、大事なことを指摘し忘れていた。それは、緊急事態に関する条項がないという点だ。緊急事態条項を新設するというと、すぐに「国家が人権を制限する危険なものだ」という批判が飛んで来るが、そんな馬鹿な話はない。戦争や大規模なテロあるいは激甚な災害といった重大な事態においては、私権を制限してでも国家が秩序の回復に努めるのが、国民の生命と安全の確保という、これ以上ない基本的人権の尊重に他ならない。緊急事態宣言は、当然のことながら、内閣が決定し国会の承認を経る形を取る。したがって、我が国は議会制民主主義を採用しているのだから、緊急事態宣言を濫用するような政治家を選ぶとしたら、制度ではなくて自分たちが悪いのである。
 また「恣意的な私権の制限が危険」と言うのなら、逆にますます憲法において規定すべきである。実際に緊急事態が勃発して超法規的に対処せねばならないとなれば、それこそ恣意的運用ではないか。
 もう一点付け加えるならば、緊急事態宣言を発する決定は内閣がなすこととして、実際に発するのは天皇の国事行為とすべきだというのが私の考えである。天皇は「国民統合の象徴」なのだから、緊急事態宣言を発して国民の結束を呼びかけることは意義あることだと思うからである。
 緊急事態条項を盛り込まなかったのは、民主党や公明党の配慮からだと推測されるが、このような重要な事柄を削ってしまったのは、適切な判断とは思わない。配慮しすぎというものである。



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5 コメント

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憲法の目的的解釈(^^ゞ (相対的価値ブログ(日本人的視点))
2005-10-31 12:52:15
当ブログにコメントありがとうございました。

猫さまとは視点を少しあわせると決して平行線じゃないと思いますよ~というコメントをアタッチしておきましたので、もしお時間許されるならご覧ください。少し長くなり申し訳ないと思いましたが・・・(^^ゞ

http://blog.livedoor.jp/taka8182005/archives/50234761.html



上記、緊急権の発動については、全く私は同じ考えでしたので、嬉しかったです。

めったやたらに人権を守ろうとして自由を主張すれば、かえって人権を傷つける深刻な事態になる時代になってしまっています。

明治憲法じゃなくとも、その運用にこそ注目されるべきで、最初から発動の契機すら認めないというのは、いかがなものかと思います。もともとこうした「国家」の認識を薄めた現行法にも、国家としての自衛的な自然権として認められるべきだという意見がありますが、やはり明記は大切だと思います。

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ありがとうございます (猫研究員(高峰康修))
2005-10-31 23:57:49
コメントありがとうございます。そちらのブログのコメントも拝見いたしました。保守主義に関する有意義な意見交換ができたと思います。

さて、こちらの件ですが、人権人権と騒ぐ人に限って、人権を真に守ってくれる制度を考えようとしないんですよね。国家権力は敵だという妄想に凝り固まっていて、国家あればこそ人権が守られているということに目をつぶっていますね。民主主義なんだから国家と国民が決定的に対立するというのはおかしいんですよね。自由を振り回して他人の権利を侵すことも平気だし…。たとえばマスコミなんかが典型例ですね。
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新憲法の私案を掲示しました。 (ほそかわ)
2006-01-11 11:44:38
 BLOGに連載していた新憲法の私案を、一本に編集してウエブサイトに掲載しました。

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08h.htm

 ご高閲いただければ幸いです。



 わが国最初の憲法である大日本帝国憲法の制定の際には、さまざまな私擬憲法が出されました。新憲法の憲法の実現を目指し、明治の先祖・先人にならって、全国・各方面から澎湃と憲法改正案が湧き上がることを期待したいと思います。日本人自らの手で新憲法を作り上げようという気運こそ、新しい憲法に魂を吹き込むものとなると思います。

 ささやかな私案が、新憲法の実現に向け、同胞諸氏の関心高揚に役立つことができれば幸いです。
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ほそかわさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-01-13 05:11:20
大変な労作をご披露・ご紹介くださり感謝します。

私見では、憲法は基本的なことだけを書いた簡潔なものがよいとは思うのですが、ほそかわさまが提示なされた「憲法義解」的な内容も含んだ案というのも、解釈を明確にする意味合いがあり、傾聴すべきものだと感じました。

憲法改正という掛け声ばかりが一人歩きしているような最近の風潮は残念であり「各方面から憲法改正案が湧き上がることを期待し、日本人自らの手で新憲法を作り上げようという気運こそ、新しい憲法に魂を吹き込むものとなる」との貴見に心から賛成します。それこそ、各人が自分の興味のある章なり条なり、一部分でもよいから私案として条文化してみるぐらいのことはあってしかるべきだと思います。
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憲法私案 (かついち)
2006-01-15 15:10:53
ほそかわさまの憲法私案を読ませていただきました。

もう、感服・敬服の思いです。このまま新憲法にしてもなんら恥ずかしくないものだと思いました。私も憲法の条文のいくつかはこのように変えたらいいんじゃないかと考えているのですが、なかなかうまくまとまりません。

あちこちから憲法改正の試案が出され、改憲論議が活発になってほしいと願わずにはいられません。
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