猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

中国の外貨準備高、3月末も世界一―米中首脳会談を目前にして

2006-04-18 13:58:16 | 日中関係・米中関係
 4月20日に行われるブッシュ・胡錦濤による米中首脳会談の最重要課題の一つに人民元の為替レート過小評価問題があるのは言うまでもないことである。また、この問題は、21日から予定されている先進7カ国財務相会議でも重要な議題となる。米中首脳会談を目前に控えて、人民元の問題に関して一瞥しておきたいと思う。
 中国の中央銀行である中国人民銀行が発表したところによれば、2月末時点で8537億ドル、3月末の外貨準備高は前年同期比32・8%増の8751億ドルで、いずれも我が国を上回って世界一となった。原因は、
(1)9月以降国際的な原材料価格の上昇により、中国の輸入が抑制され、貿易黒字が拡大した
(2)外貨取得手続きが簡単になったことや、人民元への信頼性が高まったことから、国民や企業の外貨保有意欲が低くなり、ドルから人民元への転換が進んだ
(3)外国直接投資の拡大
(4)ホットマネー(投機資金)の流入
などが指摘されているが、要するに、貿易黒字が拡大しているにもかかわらず人民元のレートを低く抑える政策をとっている、すなわち人民銀行が人民元売りドル買い介入を続けているために、買ったドルが激しい勢いで蓄積されているのである。米国がことあるごとに安すぎる人民元のレートとそれによる米国の対中貿易赤字に強い不満を述べているのも十分な根拠があることが裏付けられる。米国議会では対中制裁論も根強い。ロバート・ゼーリック米国務副長官も17日、ワシントンでの講演において、「(為替レートの自由化に向かう)変化の進み方は苦痛を感じるほど遅い」と厳しく批判している。
 これに対して、人民銀行は3月23日に、2006年第一・四半期の定例通貨政策委員会を北京で開き、人民元の「変動幅の弾力性を増加させる」ことで一致したと発表するなど、何とか取り繕おうとしているが、取引日の朝に発表される基準値より上下0・3%以内とされている現行の変動幅を少々拡大しても、米国の強硬派が求めている10%や20%といった二桁切り上げからは程遠い。
 人民銀行は、人民元売りドル買い介入により市場に供給された人民元を吸収するために外国為替資金証券を発行している。そうしないと通貨供給量の増加によるインフレが進行するためである。中国の通貨政策は、ひいてはインフレを世界中に輸出する可能性も秘めているといえよう。
 米国による人民元の切り上げ圧力は、為替市場での人民元切り上げ期待をどんどん高めている。これが「ホットマネーの流入」に他ならないのだが、実はこれは固定相場(厳密には極端に制限された変動相場だが)の維持を早晩不可能にするものである。国際経済のイロハに属するようなことである。米国側が盛んに言い立てることはそういう効果がある。しかも、米国は、今年は中間選挙の年である。こういう時期には米国は貿易赤字には極めて敏感になるものである。
 おそらく、人民元はいずれ真っ当な形の変動相場制への移行を余儀なくされるのだろうが、ひとり世界の通貨システムに背を向けるような態度をとり続けることは「責任ある役割を果たしている」ことにはならない。国際社会のメンバーとして指弾されても仕方ない。
 何はともあれ、米中首脳会談は政治及び安全保障の面と並んで経済の面も要注目である。人民元問題以外にも、知的財産権の保護、米国産の穀物や牛肉に対する市場開放、国営企業への補助金の是正が要求項目として既に列挙されているのだ。何といっても世界経済における二大プレイヤーの真っ向勝負である。その方向性が世界経済に与える影響は大きいに決まっている。



(参考記事1)
[中国の外貨準備高、3月末も世界一…8751億ドル]
 【北京=東一真】中国人民銀行(中央銀行)が14日に発表した3月末の外貨準備高は、前年同期比32・8%増の8751億ドルとなり、2月末に続いて3月末も日本の外貨準備高(8520億ドル)を上回って世界一を維持した。
 年初から3月末までの外貨準備の増加額は562億ドルで、前年同期を70億ドル上回った。貿易黒字の拡大や、人民元レートの先高感で海外からの投機資金の流入が加速していることなどが原因とみられる。
 一方、人民銀行は14日、国内金融機関の海外投資の制限を緩和する方針を発表した。国内の外貨は現在、人民銀行がほとんどを買い上げているが、金融機関が海外投資に振り向けることで、外貨準備高の急増を抑える狙いとみられる。
 具体的には銀行や保険会社に、海外の確定利回りの商品への投資を認める。証券会社やノンバンクに対しては海外での株式投資も認める。具体的な解禁の時期は言及しなかった。
(読売新聞) - 4月14日19時53分更新

(参考記事2)
[2月末の中国外貨準備は8537億ドル、日本を抜き世界1位]
 [上海 28日 ロイター] 28日付のチャイナ・ビジネス・ニュースは、中国の外貨準備高が2月に85億ドル増え、同月末時点で8537億ドルになったと報じた。2月末の日本の外貨準備高は8501億ドル。中国の外貨準備は日本を抜いて世界1位となった。
 チャイナ・ビジネス・ニュースによると、中国外貨準備は1月に263億ドル増加しており、それに比べて2月は増勢が鈍った。
 「巨額の外貨準備は多くの利点をもたらしたが、経済の不均衡が続いていることも反映している」と同紙は指摘している。
 中国の外貨準備は近年、急激に膨張。背景には、中国人民銀行(中央銀行)が人民元相場を抑制するため、拡大する貿易黒字、対中海外直接投資や投機資本の流入がもたらしたドルの大半を買い上げていることがある。
 1月と2月を平均した外貨準備の伸びは174億ドルで、2005年第4・四半期の平均月次増加額(166億ドル)に近い水準。
 国有商業銀行3行の資本注入に600億ドルが活用されていなかったら、中国の外貨準備はもっと膨れ上がっていたことになる。
 このほか人民銀行は昨年11月、人民元スワップ取引で外貨準備のうち60億ドルを売却している。
(ロイター) - 3月28日13時8分更新

(参考記事3)
[人民元変動幅、柔軟に 主席訪米控え圧力かわす]
 【北京=福島香織】中国人民銀行(中央銀行)は二十三日、二〇〇六年第一・四半期の定例通貨政策委員会を北京で開き、人民元の「変動幅の弾力性を増加させる」ことで一致したと発表した。今月に入ってから人民元の高値更新が進んでいるが、四月の胡錦濤国家主席の訪米前に人民元の値動きがさらに激しくなる可能性がある。
 ウェブサイトでの発表によると「人民元の為替メカニズムを改善し、外為市場を拡大、人民元変動幅の弾力性を増加させる。変動幅の合理的で均衡した水準で基本的に安定させる」としており、人民元の柔軟性を高める方向性を打ち出した。人民元の変動幅は現在、取引日の朝に発表される基準値より上下0・3%以内とされているが、これを拡大する可能性も否定できない。温家宝首相も今月十四日の記者会見で同様の発言をしている。
 対中制裁論を主張する米上院のリンゼー・グラム議員(共和党)らが同日、北京で記者会見し、「人民元は非常に過小評価されている」と不満をあらためて示したが、胡主席の訪米前にこうした圧力をやわらげたい狙いがあるとみられる。人民元は二十日に基準値が最高値の8・0250を記録、二十三日の終値は8・0276で昨年七月の2%切り上げ以来、累計で約1%上昇した。
(産経新聞) - 3月24日3時22分更新

(参考記事4)
[人民元改革「苦痛を感じるほど遅い」…米国務副長官]
 【ワシントン=広瀬英治】ロバート・ゼーリック米国務副長官は17日、ワシントンで講演し、中国の人民元政策について、「(為替レートの自由化に向かう)変化の進み方は苦痛を感じるほど遅い」と批判した。
 その上で、20日の米中首脳会談について「人民元改革の議論は『いつ、どのように前進させるか』だ」と述べ、米側が、具体的な改革スケジュールを中国側に強く求める方針を示した。
 ただ、米政府高官は17日、記者団に対し「首脳会談で、中国が人民元の新政策を表明するとは思えない」と述べ、昨年7月の人民元切り上げのような大きな制度改革の表明は期待できないとの見方を示した。
 一方、同高官は、緊張が続く日中関係について「(米中首脳会談で)取り上げられると確信している」と見通しを示した。ただ、「大統領は聞き役。米国が仲介者になるつもりはない」と述べ、あくまで日中両国で問題を解決すべきだとの立場を明確にした。
(読売新聞) - 4月18日14時15分更新


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