猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

麻生外相「中国側が暗号表の譲渡強要」-在上海総領事館館員の死亡について

2006-02-21 00:25:32 | 日中関係・米中関係
 日中関係に刺さったとげの一つに、ご承知の通り、一昨年五月に在上海日本総領事館員が自殺した問題がある。日本政府の立場は「現地の中国側公安当局関係者による、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為があった」というものである。具体的には、中国側の公安当局関係者から不法な情報提供を強要され、それを苦にして領事館員が自殺したのではないかという疑惑である。領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務の一つに、領事館員の通信の自由を保障することがあるので、情報提供を強要するなどということがあったとすれば国際法に反する論外な行為だということである。それに対して、中国側は、そのような事実は一切なく、「職務の重圧による自殺であり日本の責任」という趣旨の反論を繰り返している。なお、情報機関が起こしたとされるスキャンダルに関しては、国家はノーコメントを貫くのが国際的常識であると、佐藤優・元主任分析官が新聞紙上で指摘していたことがある。米ソ冷戦の下ではそういう慣行が厳格に守られていたそうだ。
 さて、麻生外務大臣はこの件について、外務省のプレスリリースよりももう少し踏み込んだ発言をしている。それによれば、中国側から女性問題に付け込まれ、領事館員が「暗号の乱数表を渡せ」と強要されたということである。確かに、遺族の感情からすれば公表されたくない事柄であろう。当該領事館員が女性問題を中国側に握られていたとすれば軽率な行為である。しかしながら、暗号の乱数表を渡すわけにはいかない、ということで自殺したのであるから、国のために殉じたのであって身の処し方は「もののふ」と称すべきである。そのような彼の死を無駄にしないためには、再発防止を図ることにつきる。
 再発防止といってもさまざまな角度から考察する必要があり、この場で網羅的に論じることはなかなか難しい。麻生大臣が指摘している、初歩的ともいえる「異性が近づいてきたら警戒するよう教育訓練する」というのは意外と効果が高いと思う。中国や北朝鮮のような国では、表現は悪いが「金をつかませる」か「女をあてがう」というのが常套手段である。これは、中国の歴史書などを見ればいやというほど出てくるものであり、この時代になってもまだそんなことをやっているのである。もちろん、両国に限らず、金銭や異性で誘惑するという事例は、多かれ少なかれ存在するものであろう。国会議員の外遊なども今まで無防備に過ぎた。これを防ぐスマートかつ効果的な方法は、外遊には夫人同伴でというものである。異性による誘惑を抑止するのにこれほど効果のある方法はあまりないはずである。独身の場合は、別途方策を講じる必要があるが…。
 また、嫌な話ではあるが、在外公館の館員の相互監視体制を強化する必要も出てくるかもしれない。そのときに、行き過ぎが起こらないようにするのは当然であり、そのあたりのバランス感覚は難しいと思う。
 その上で、外務省自身の情報能力強化も必須である。今すぐこちらから仕掛ける諜報活動をすべきだとは思わないし、そういう能力が一朝一夕に育つわけもない。まずは、情報面での「専守防衛」を目指すべきであろう。外務省の取り組みは、昨年9月に発表された『対外情報機能の強化に向けて』という文書にその方向性が示されている。その三本柱は、(1)情報収集機能の強化、(2)情報分析能力の強化、(3)対外情報機能強化の基盤整備、である。その背景には「対外情報機能の強化は対外政策の立案・遂行にとって不可欠である」という正しい基本認識がある。末尾にURLを掲載しておくので是非熟読していただきたい(以前にも紹介した事があるかもしれないが)。
 今回の件に際しては、中国の非に対して厳しい態度で臨むとともに、それだけではなくて、自国の対外情報能力強化への弾みとせねばならない。


(参考記事)
[領事館員自殺 暗号表の譲渡強要 外相、中国を批判]
 麻生太郎外相は十八日、都内で記者会見し、首脳外交が途絶えている日中関係について、「靖国問題が決着したら日中関係のその他の問題が解決するかといえば、いろいろもめている点はある。この問題にこだわりすぎると話が難しくなり過ぎ、不必要な摩擦をおこす」と述べ、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を理由に首脳会談を拒否している中国側の姿勢を批判した。
 また、麻生氏は会見に先立ち開かれた外務省主催のタウンミーティングで、一昨年五月に在上海日本総領事館員が自殺した問題に言及。中国側から女性問題に付け込まれ、領事館員が「暗号の乱数表を渡せ」と強要されたと明かした。その上で「(中国側は)追い込みをかけたみたいなもの。断固対応するのは当然だ」と述べた。
 同種の問題の再発防止については、「(異性が)来たら、『危ねえな』と思うような訓練をしなくてはいけない。訓練、教育、しつけは非常に大事。外務省は真摯(しんし)に反省すべきだ」と強調した。
(産経新聞) - 2月19日3時10分更新

(参考資料1)
[在上海総領事館館員の死亡について(外務省プレスリリース)]
平成17年12月31日
1.在上海総領事館の館員が、平成16年5月6日に自殺した事案の詳細については、ご遺族の強い意向もあり、公表を差し控えるが、在上海総領事館の館員の死亡の背景には、現地の中国側公安当局関係者による、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為があったと考えている。
2.12月31日の在京中国大使館のホームページは、「日本側は、館員が職務の重圧のために自殺したと表明」したとしているが、日本側がそのような立場を表明したとの事実はない。本件については、日本政府として、中国政府に対し、事件発生直後から、事実関係の究明を求めるとともに、厳重な抗議を行っている。
3.また、「この事件は中国政府関係者といかなる関係もない」との中国側の立場については、我が方として受け入れられず、そのような中国側の立場は最近の中国外交部報道官の記者会見における発言を通じて承知しているが、それ以前に中国政府から本件の事実関係について説明を受けたとの事実もない。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_1231a.html

(参考資料2)
『対外情報機能の強化に向けて』
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/pdfs/rls_0913a.pdf



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2 コメント

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新ライター加入 (舎 亜歴)
2006-02-28 19:31:11
こちらのブログに新しいライターが加入しました。記事をTBします。
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舎 亜歴さまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-02-28 23:14:19
早速拝見しました。新ライターの加入で、ますます貴ブログが発展されますように!
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