猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

子育て支援で税額控除導入を検討―政府税調

2006-05-14 23:04:21 | 財政・税制
 首相の諮問機関である政府税制調査会が、十二日に総会と基礎問題小委員会を開いて、方向性を明らかにしたところでによれば、少子化対策で導入をめざす減税は税額控除方式を軸に調整する方針だそうだ。N分N乗方式導入論者の私としては、残念なことである。
 現行の扶養控除は、所得控除方式といって、課税所得から扶養家族の人数に応じて控除した上で税率をかけるというものなので、税率の低い低所得者ほど恩恵が小さい。これに対して、政府税調が主唱している税額控除方式は、納める税金そのものから子供一人当たりにつき一定の税額を差し引くものである。これならば、低所得者への恩恵は大きくなる。ただし、所得税額が控除額を下回る場合は軽減効果が限られる。新たな手当てなどを導入するとすれば「ばら撒き」との批判は免れまい。
 税額控除方式は、仕組みとしても分かりやすいし、導入の目的も明確だが、逆に言えば「子供を作ると得だ」ということが露骨に表れているのが引っかかる。それを考えると、私は家族重視の思想が濃いN分N乗方式を好む。N分N乗方式とは次のような仕組みである。まず、世帯の所得を構成人数(N人)で割り一人当たり所得を算出する。そこから所得控除して課税ベースを決める。それに対応する税率を適用して所得税額を算出する。一人当たりの所得税額を構成人数倍(N倍)したものをその世帯の所得税額とする。こうすることで、子供の多い世帯の税額が抑えられるというものである。
 子育て減税以外では、一年遅れで徴収されている個人住民税を所得税と同じ「現年課税」に移行する方向性を打ち出していることが注目に値するであろう。国から地方への税源移譲の実施に際して、所得税よりも個人住民税の負担割合が多くなる納税者が中心となるためである。その他の課題として、法人税や国際課税の問題がある。国際競争力を考えると、法人税の引き下げは是非とも検討すべきだと思う。



(参考過去ログ)
『子育て支援税制議論、政府・与党少子化協議会が初会合―N分N乗方式・税額控除方式などを検討 』
『所得税、N分N乗方式導入のすすめ―少子化対策の一環として』
『N分N乗方式の少し正確な概算(訂正版)』



(参考記事1)
[子育て減税で政府税調 税額控除軸に調整]
 政府税制調査会(首相の諮問機関)は十二日、総会と基礎問題小委員会を開き、少子化対策で導入をめざす所得税の子育て減税に関し、減税効果の大きい税額控除方式を軸に調整する方針を固めた。また、国から地方への税源移譲の実施で、所得税よりも個人住民税の負担割合が多くなる納税者が中心となるため、一年遅れで徴収されている個人住民税を所得税と同じ「現年課税」に移行する方向で検討することも確認した。
 政府税調はこの日、九月の中期答申とりまとめへ向けた各論の議論を開始し、個人所得課税改革について検討。子育て減税の導入にあたっては、所得控除後の算出税額から、さらに一定額を差し引く税額控除方式が「分かりやすく効果がある」(税調委員)との意見が大勢を占めた。
 ただ、税額控除は非納税者が対象にならないほか、所得が低く税額が控除額を下回れば目減りする。このため、石弘光会長は会議の中で、非納税者や低所得者への手当ての必要性を中期答申に盛り込む考えを示した。
 一方、個人住民税に関し、働いた年に課税する現年課税への移行の必要性を確認。個人に代わって税金を納付している企業側の対応が可能かなど、徴収事務の問題点などを検討したうえで、最終的に判断する。
(産経新聞) - 5月13日3時5分更新

(参考記事2)
[税額控除導入を検討 子育て支援で政府税調]
 政府税制調査会(首相の諮問機関)の石弘光会長は12日の記者会見で、税制による子育て支援について「税額控除が一つの方向」との認識を示し、所得税の税額控除導入を軸に政府税調で検討が進むとの見通しを明らかにした。
 与党内でも、現行の所得税の扶養控除を廃止・縮小し、子どもの人数に応じた税額控除を新たに導入する案が検討されており、歳出面での児童手当との調整が今後の課題となりそうだ。
 税額控除は扶養控除と違って所得水準に関係なく一定額を税額から差し引くため、低所得の子育て世帯の負担軽減効果が比較的大きいとされる。一方、所得税額が控除額を下回る場合は軽減効果が限られる側面などもあり、石会長は具体的な制度設計は慎重に進める考えを強調した。
(共同通信) - 5月12日19時0分更新


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-19 08:51:34
自分の身を守る観点からも、PJさんのおっしゃるような、正しい知識の伝達は必須です。人形を使った、正気の沙汰でない性教育は百害あって一利なしですよ。
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そういえば (PJ)
2006-05-18 11:03:40
若い(というか幼い?)女の子では性病に起因する不妊も増えているとのことで恐ろしいと思います。

性教育も気味の悪い人形とかじゃなくて病気や衛生観念、自分の体を大事にすることをもっと教えればいいのに。
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keikoさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-17 23:56:30
貴重なご意見ありがとうございます。

確かに!というか、産む側の女性の視点にも立って考えなきゃいけませんよね。少子化「対策」というならば、不妊治療に保険をもっと適用させるなどしなければいけないのかもしれませんが、そうすると財政が…。それから「少子化はいかん。もっと産んでもらわないと」と盛んに政府が言うことで、不妊に悩む人への苦痛を与えることもあるかもしれませんね。
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産む側としては (keiko)
2006-05-17 22:17:45
もう一つ深刻なのが、不妊だと思うなり。

婚期が遅くなって、妊娠する時期が遅くなっていることと

食生活だのと言われているですけど不妊はめちゃめちゃ

多いですよ。治療が過酷なのと、保険がきかないので

費用もかさむんですよね。。一部保険適用されるように

なったし、助成金が出るところもあるみたいですけど。。

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PJさまへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-16 00:28:39
>子育て支援だけでは少子化は止まらない気がします。

結婚や恋愛に対するハードルの高さを何とかしなきゃ。



その通りだと思います!税金の面で得するからって、それじゃあ結婚して子供をもうけよう、などとはならないわけで…。そうそう計画的に運ぶ性格のものではないんですよね。といって、何もしないと批判を受けるし。国民全体が少子化を受け入れる状況になれば話は別なのでしょうけど、難問ですね。
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Unknown (PJ)
2006-05-15 12:05:44
子育て支援だけでは少子化は止まらない気がします。

結婚や恋愛に対するハードルの高さを何とかしなきゃ。

と言っても、心のハードルもあったりするわけですけどw
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