猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

アザデガン油田開発 米、日本に凍結要請―イラン核阻止へ障害

2006-03-23 18:22:19 | 外交・国際問題全般
 イランによる核兵器開発の阻止に国際的に取り組む上で一つの大きな障害が、我が国のイランに対する原油依存である。とりわけ、アザデガン油田の共同開発は、米国が常に問題視してきたところである。米国政府関係筋は、ゼーリック国務副長官やジョゼフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)らが、日本政府に非公式な形でアザデガン油田の開発を少なくとも中断するよう要請したことを明らかにした。米国議会でも同様の要請を行う動きが目立っている。米国が挙げている、日本のアザデガン油田開発の継続が(1)イランの財政収入に大きく寄与し、結果として核開発にも役立つ(2)独自の石油開発に苦労するイランの国力増強に通じ、結果として核兵器の政治的威力などを増大させる(3)イランの核開発阻止のための国連主体の国際連帯あるいは国際的な有志連合の団結を乱す(4)国連安保理でのイラン制裁案が成立すれば、実施が確実なイランの石油の禁輸や石油関連投資の禁止規定に直接、触れる-などの諸点は、いずれも反論の余地がないものばかりである。来たるべき時が来たというべきであろう。
 二〇〇四年二月に「国際石油開発」が主体となってイラン側と同油田開発契約を結んだ際にも米国政府は反対の意向を伝えてきた。このときは「日本が同事業から撤退してもフランスが後を襲ってくる」ということで何とか説得したが、今回は国際社会がほぼ一致してイランの核開発に懸念を示している状況である。状況は極めて厳しいといわざるを得ない。今度は「日本が撤退したら中国が後釜に座る」という説明もあるにはあるが、それで説得できるのか疑問である。国連の枠組みであれ有志連合の枠組みであれ、一旦、イランの制裁が決まってしまえば、中国が参入しようが何しようが粛々と実施されるだけの話であろう。同盟国である日本に対してもこれだけ厳しい注文をつけてくるのだから…。
 これまで、我が国はイランの核開発に関してあまりに無関心すぎた。イランへの原油依存度が高かったにせよ「唯一の被爆国として核兵器の廃絶には国家的目標である」という立場を振りかざしてきた割には褒められた対応ではなかったと思う。イランは日本の友好的国家であった。そうであればこそ、「喧嘩腰」ではなく友好的な立場から(もちろん外交交渉であるから圧力が必要なことは当たり前であるが)核兵器開発の中止を忠告し説得することができたはずである。それを怠ってきた、というのが言いすぎならば、それが不十分であったからこそ今のような事態に陥ってしまったのである。不幸中の幸いは、米国側が日本がイランにエネルギー資源を大きく頼っている事情にそれなりに配慮しているので、代替措置を求める余地があるところである。それには、イラクへの自衛隊派遣という事実が活きてくるのではないか。アザデガン油田の開発を中断する見返りに、空手形の気配はあるが、イラクの原油を何とか融通してもらえないものか。いずれにしても、我が国としてはみっともない立場に追い込まれてしまったことは間違いない。



(参考記事)
[アザデガン油田開発 米、日本に凍結要請 イラン核阻止へ障害]
 【ワシントン=古森義久】イランの核兵器開発の動きに対する国際的な反発が強まる中で、米国政府関係筋は、ブッシュ政権のゼーリック国務副長官やジョゼフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)らが、日本政府に非公式な形でアザデガン油田の開発を少なくとも中断するよう要請したことを明らかにした。米国議会でも同様の要請を行う動きが目立っている。米国側は日本側に対し、国連の対イラン経済制裁の成否にかかわらず、同油田開発停止を強く求めており、日本側の対応次第では、日米関係に深刻な摩擦を生むおそれが出ている。
 米側は、日本の官民が協力してイランで推進するアザデガン油田開発のプロジェクトは、イランの核兵器開発が明白となった現状では、核開発への動きを止めるうえで大きな障害になるとみている。
 米国の対日要請の根拠としては、日本のアザデガン油田開発の継続が(1)イランの財政収入に大きく寄与し、結果として核開発にも役立つ(2)独自の石油開発に苦労するイランの国力増強に通じ、結果として核兵器の政治的威力などを増大させる(3)イランの核開発阻止のための国連主体の国際連帯あるいは国際的な有志連合の団結を乱す(4)国連安保理でのイラン制裁案が成立すれば、実施が確実なイランの石油の禁輸や石油関連投資の禁止規定に直接、触れる-などの諸点があげられているという。
 ブッシュ政権が示した表面での動きとしては、ボルトン国連大使が三月上旬にイランの核問題と日本の油田開発の関連について公式に発言した。同大使は「日本のエネルギー事情も理解できるが、国際的な核拡散防止への日本の年来の強い政策からすれば、イランの核兵器保有阻止への協力の方が、より重要なはずだ」と述べ、日本側に対し、アザデガン油田開発の凍結を明確に呼びかけた。
 一方、米国議会でもイランの核武装への反対は広範だが、十五日には下院国際関係委員会がイランに投資する外国企業に制裁を科す「イラン自由支援法案」を可決し、改めてイランでの石油開発などへの外国からの投資に対する米国としての強い反対の構えを明確にした。この法案審議の過程で、国際関係委員会のハイド委員長(共和党)は、「日本が石油消費の15%をイランからの輸入に頼っている現状では、イランとの石油のきずなをすべて断つことが難しいのはわかるが」と述べながらも、イランの核開発阻止のための日本の協力を訴えた。
 同委員会の民主党有力メンバーのラントス議員も「アジアや欧州のすべての国の政府と企業にイランへの石油投資を即時、停止することを求める」と言明した。議会でもアザデガン油田開発の停止を日本に求める声は大多数となった。
 日本側は、二〇〇四年二月に「国際石油開発」が主体となってイラン側と同油田開発契約を結び、まず二十億ドルを投入した。当時も米国政府は反対を表明したが、日本側では「日本がおりれば、フランス企業がすぐ後を継ぐ」と主張して、それなりにブッシュ政権の一部の理解を得たとされる。
 今回も「日本が撤退すれば、中国が進出してくる」という主張が日本側の一部にあるが、米側には「アザデガン油田の開発に必要な高度技術は中国はまだ持っていない」(ブルッキングス研究所のイボ・ダールダー研究員)との反論もある。
     ◇
【用語解説】アザデガン油田
 推定埋蔵量260億バレルを持つ日本最大の自主開発油田。現在、国際石油開発が75%、イラン国営石油会社の子会社が25%の権益を保有している。当初は2005年中に開発作業に入り、08年から日量15万バレルで生産を始める予定だったが、イラン側の地雷除去作業などが遅れており、生産開始もずれ込む見通しとなっている。
(産経新聞) - 3月23日2時55分更新


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
米国の顔を立て他の中東国へ斡旋を依頼する (ようちゃん)
2006-03-24 06:29:53
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/

(極右評論)さんもこのテーマで意見を述べています。いつもの日本政府の対応の遅い(のらりくらり戦法)は通じませんよ。基地再編のように10年放置して日本国内でも利権の分裂が起きて捩れ現象が出ます。「ここは米国と交渉し、サウジ、クェート、イラクに持つ米国の石油メジャーの権益を保証させることによって、我が国の国益を守らざるを得ないのではないか。」の結論です。中国のコンキントウより小泉氏が米国へ会談に出かけるそうですし、はっきり話し合いはされるでしょうが・・。

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Unknown (PJ)
2006-03-24 11:46:17
私も要請をただ飲むだけでは困ると思います。

それにアメリカがインドの核を認めてしまったのも条件を付けるべきだったと思います。

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コメントありがとうございます (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-25 01:07:01
>ようちゃんさま・PJさま

イランの件では、国際社会、とりわけイラクの時に亀裂が入った欧米間で極めてよく一致結束してますからね。ロシアでさえ、というと語弊がありますが、ロシアもそれなりに努力をしている。そういうなかで日本が利己的な態度をとり続けるべきでないのは明白です。米国の覇権主義がどうのという問題ではなくて、日本が国際の秩序維持に責任ある態度をとるか否かという問題なのです。

開発の中断が大前提で、エネルギー資源の確保に関しては、別途方策をたてるしかありません。特効薬みたいなものはないと思いますが…。
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確かに来るべき時が来たという感じですよね (tsubamerailstar)
2006-03-30 00:28:25
反米極右政権が誕生した時からヤバイとは思っておりましたが仰るとおりで困ったものですね。金云々は今まで他にも損しているので大したことに思えないのが麻痺している?(汗)



まぁ、メリケンの論理としては、基本的に「だからあん時止めたじゃねぇか」だと思います。「何か考えてくれるだろう」と期待するのは甘いでしょうね。困ったものです。

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>tsubamerailstarさま (猫研究員。=高峰康修)
2006-03-30 16:55:11
あの極右政権は、イラン国内で国民にあまり支持されていないらしいですが、だからといって国内から政権転覆の動きが出てくるわけでもないですしね。日本は窮地に追い込まれてますが、もっとグローバルな目で見れば、極右政権誕生のおかげでイラク戦争で広がった国際社会の亀裂がかなり修復されたということもできます。それはイランの大統領選の時から少し期待していました。



>「だからあん時止めたじゃねぇか」



これは、全くその通りでしょうねぇ。アザデガン油田と心中したら元も子もないですよ。こういう脆弱性を孕んでいるから原油依存体質は早急に改めるべきです。その梃子として地球温暖化防止の議論を有効活用したいものです。
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