法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 関係顧客を分析する(3)- 顧客も人間なんだ

2021-05-03 22:15:18 | ・・関係顧客を分析する
さて、もう一度、記入例に戻ります。分析表上に問題点にマークし、備考欄を設けて、重要な組織変更の情報などを追記します。

下記の例では、現在の影響度は「中」だが、今後、影響度を増す事業部長の関心度を高める必要があること、また、着任したばかりのため個人的側面が全く分かっていないことが、問題の一つとなっています。

実際に装置を使用するエンジニアが、「アンチ」であり、他社を推奨していることはシリアスに考えるべきです。「アンチ」の態度を表明している背景を理解し、対策を打つ必要があります。

では、個の事例にはありませんが、会社人あるいは個人としての目標が、「昇進や出世」の人に対してはどのような対応が考えられますか。

例えば、上司の前でほめる、ですね。顧客も人間です。

コンプレックスセールスの場合は、感情面(個人的な好き嫌いや偏見)よりも、この製品・サービスを買うべき理屈を顧客に授けることが重要です。
しかし、顧客の持っている感情面にも配慮しないと、理屈ではない要素により、案件が消えてしまうこともあるのです。

特に、最近はディシジョンメーカーも関係者の合意を求める傾向が強くなっています。その背景にはソリューションの内容が複雑で関係者が多岐にわたることや、失敗したときのリスクが大きいソリューションに対するリスクヘッジのためです。したがって、事例のような「アンチ」に対しては、対策が必須です。

このように人や集団に関わる問題点を見つけ、対応していくためのツールが、「関係顧客分析ツール」です。

関係顧客分析により、営業戦略に「人間性」という要素を盛り込むことができるようになります。

顧客を徹底的に知り尽くす。

性格、学歴、職歴、家族状況、特別な関心事、生活様式。顧客自身よりも熟知する、例えば「意識していないニーズ」。それが顧客関係分析の究極も目的です。

だからといってリレーションシップ・ビルダー・タイプの営業を目指している訳ではありません。リレーションシップ・ビルダー・タイプの営業は、多くの人の予想に反して、営業成績は低迷しているとの調査結果があります。関係構築が不用になったのではなく、関係構築と購買の決定との関係が薄くなったのです。

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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 関係顧客を分析する(2)- 顧客のこと分かっている?

2021-04-25 17:28:00 | ・・関係顧客を分析する
このところ週末も仕事。零細企業は貧乏暇なし。「稼げるときに稼ぐ」、辛抱・辛抱です。連休中に少し本が読めるといいな、というのが直近の希望です。

さて、一週、間が空いてしまいましたが、「関係顧客分析」に戻ります。

関係顧客分析では、「関係者」、「役職名」、「役割」、「影響度」、「関心度」、「個人的目標」、「会社人としての目標」からなる一覧表を作成します。
この分析で大切なことの一つは個々人の目標(欲求・欲望・ノーズ)を明らかにすることです。そして、それを営業戦略や会議設計に反映させることです。
では、作成の仕方を順に説明します。

以下は「関係顧客分析」の生産財の記入例です。



1.関係者を特定する
コンプレックスセールスでは、関係する顧客は多数です。例えば、典型的な設備投資では、必須の技術部と購買部を含む平均四つの部門が関係し、
三段階にわたる役職者(例えば、部長、事業部長、副社長)、および、それ以外の7人が様々な役割を果たしていたという調査結果もあります。
関係者の洗い出しには、顧客基礎情報にある組織図、意思決定プロセス情報が必須です。

2.役割を特定する
表の「役割」は、この案件に関する予算申請者、予算承認者、購入申請者、購入承認者、技術評価実施者、技術評価決定者、ユーザー、オペレーターなどになります。

生産財の営業をしていた当時、私は上記役割を記号化していました。

E(Economic Buyer): 予算の承認・執行権限保持者、製品・サービスの購入承認
T(Technical Buyer): 製品・サービスの技術的な評価を行うエンジニアやマネージメント
U(User): 購入した場合に実際にその製品・サービスを使うエンジニアやオペレーター
A(Adviser): 自社に好意的で関連情報やガイダンスを提供してくれる協力者
<または、S(Supporter)でもよい>

この「役割」は、製品やサービスの種類によって異なります。

また、ハーバード・ビジネス・スクール准教授のトーマス V ボノマは、『真の購買決定者は誰か:大口取引に成功する法』の中で、
顧客の中の役割を次のように分類し、特定することを求めています。

・提唱者:自社の問題・課題を購入する製品やサービスで解決できると提案。
・決定者:製品やサービスの購入の諾否を決定。
・助言者:購入するか否か、何を購入するかといった点に関して一家言を持っている人。
・購入者:当該製品・サービスの購入窓口。一般的には購買部。
・監査者:当該問題・課題のエキスパートとして活動。
・使用者:購入する製品・サービスの利用者。

これも一つの切り口として考えてもよいでしょう。

3. 影響力は大きいか
「影響度」は、その案件を次の営業ステップに進める「力の度合い」です。影響度は営業ステップによって変化していきます。
例えば、予算申請段階では、課題・問題を把握し、起案しようとしている担当者やその上司、部長あたりまでが、影響力が大ではないでしょうか。

一般的には、役員や社長はこの段階では口を出さないでしょう。また、会社によっては購入金額により権限移譲があり、影響度の範囲は限定されます。
影響度は、大、中、小あるいは5段階の数字などで表します。

ちなみに、分析ツールの中身は、時々刻々変わるものであり、都度、見直すものです。

4.関心は十分あるか
「関心度」は、解決すべき問題・課題に対する深刻度です。関心度に関しては、関心「あり」、関心「なし」、「過信」と記入します。
関係者がどれだけ「自分自身の問題として問題解決に高い関心」を持っているかが重要です。関心の低い人にいくらソリューションを説明しても効果はありません。

したがって、関心の低い人にどう問題意識を持たせ、深刻度を上げていくかが重要となります。
特に影響度の大きい人の関心度が低い場合は、早急に関心度が上がるように手を打つべきです。

「過信」は、当該製品やサービスを不要とする考えです。不要と考える理由を探り出し、対処する必要があります。

5. 個人としての目標はなにか
「個人的目標」は、会社の方針とは別に個人として実現したいと考えている目標で、例えば「ゴルフがうまくなりたい」「実績を作って転職したい」「今のライフスタイルを続けたい」「英語力を身に着けたい」など多種多様です。

個人のライフスタイル等に関係する内容で、このような情報の入手には顧客との強固な関係の構築が必要です。この情報は接待や面談時の話題などに活用できます。
さて「出世したい」と思っている方の場合、営業はどうこの状況を活用できるのでしょうか。

6. 成し遂げるべき会社人としての目標は
「会社人としての目標」は、仕事上の目標で、例えば、技術部門の部長の場合は、「計画どおりの製品開発」、「歩留まりの改善」、「コスト低減」などが考えられます。総務部長であれば、「株主総会の成功」、「情報セキュリティの整備」、営業であれば「売上目標の達成」「新規開拓」「新商品の販売」、人事であれば「人事評価システムの改善」「給与体系の見直し」などなどある程度、標準化しやすい項目です。

このような顧客分析を行った上で、各関係者、特にキーマンに対して次の会議等でどう対応すべきかを考えます。例えば、関心の低い人にどう問題意識を持たせ、深刻度を上げていくか等です。さらに、各関係者の目標(欲求・欲望・ニーズ)を営業戦略、会議設計に反映させます。特に関係者が気付いていないニーズを!!

このツールの記入には、顧客との良好で密な関係が必要であり、このツールは「いかに顧客を知らないか」を営業に気づかせるものでもあります。
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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 関係顧客を分析する(1)

2021-04-12 23:23:30 | ・・関係顧客を分析する
新年度が始まりました。営業の皆さんは新年度の目標を達成すべく、早速、戦略・戦術を遂行し始めていることと思います。新卒の営業はどうでしょう。まずは一通りの新人教育を受けて、営業部に配属、そこでOJTでしょうか。といってもコロナ禍、在宅勤務が多く、OJTも実施が難しいのが実情です。営業を系統的に学ぶという意味でも『理詰めの営業』を参考にしていただけるとありがたいです。

私自身、エンジニアから営業に転身したので、営業の本は沢山読みました。しかし、ほとんどの本は精神論で、営業理論あるいは営業手法として勉強になった本はあまりありませんでした。それでも10年以上、海外の書物も含めて研究し、実践を続け、中小企業診断士協会に論文を提出、日刊工業新聞社賞をいただいたのが『理詰めの営業』です。そして、今も、研究・実践中です・・・

最近、楽しみに読んでいるのがSales HackerというWeb Site。米国の営業向けサイトで、毎週、読んでいると営業の組織・仕組みが日本よりも一歩進んでいることが分かります。また、自分の業界以外の人の意見も聞けるのはありがたいです。翻訳ソフトを使ってでも読まれることをお薦めします。

では、今日の本題「関係顧客を分析する」です。

関係顧客分析は、この案件に関わるすべての関係者の役割や影響度、心理的側面等を分析するツールです。顧客内部はもちろんのこと、場合によっては、関係する外部のコンサルタントや協力会社・団体等も含めて情報を取集します。

綿密に計画され実施された営業戦略であっても、購買心理、顧客の人間的な側面を十分に理解していないと、失敗することがあります。

顧客が購買活動の中で表す人間的な要因を営業が察知し、それに対処することにより、営業が成功する確率が増え、営業プロセスの中で残念な結果を招いてしまう可能性が少なくなります。顧客は常に条件のよい取引を求めると同時に、顧客自身のことや顧客の要求を真に理解している営業を求めています。このことを理解した上で、その顧客に適した営業方法を選択する必要があります。

購入課程には多くの人たちが関与しています。特にコンプレックスセールスでは、非常に多くの部門の多くの人が絡んできます。そこには集団の中の力学(相互作用)が生まれてきます。営業はこれを仔細に検討しなければなりません。案件に関連するのは誰なのか、それらの人たちの関係はどうか、力があるのは誰か、それに従属しているのは誰か、個々の関係者はどのような特性を持っているか、犬猿の仲はだれとだれか、営業プロセスの中で何度となく検討しなければなりません。

購買をするのは企業ではなく人間です。このため、誰がキーパーソンで、キーパーソンが何を求めているかを明らかにしなければなりません。関係する人すべてを洗い出すのは大変です。仮にすべての関係者を洗い出し、個々の人を知っているとしても、関係者の相互関連を推察するのは更に困難です。

営業を成功させるためには、その案件の関係者個々人の考え方を整理するとともに組織内での力学を理解し、意思決定者がどのように行動するかを予測し、戦略を立てる必要があります。

次回は「関係顧客分析」の記入例をご説明します。

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『理詰めの営業』- 関係顧客分析- 顧客の心理を理解する

2019-06-16 23:00:08 | ・・関係顧客を分析する
綿密に計画され実施された販売戦略であっても、購買心理学、販売における人間的な側面、を十分に理解していないと、失敗することがあります。

顧客が購買活動の中で表す人間的な要因を営業が察知し、それに対処することにより、営業が成功する割合が増え、営業プロセスの中で残念な結果を招いてしまう可能性が少なくなります。顧客は常に条件のよい取引を求めると同時に、顧客自身のことや顧客の要求を真に理解している営業を求めています。このことを理解した上で、その顧客に適した販売方法を選択する必要があります。

購入課程には多くの人たちが関与しています。特にコンプレックスセールスでは、非常に多くの部門の多くの人が絡んできます。そこには集団力学が生まれてきます。営業はこれを仔細に検討しなければなりません。案件に関連するのは誰なのか、それらの人たちの関係はどうか、力があるのは誰か、それに従属しているのは誰か、個々の関係者はどのような特性を持っているか、営業プロセスの中で何度となく検討しなければなりません。

購買をするのは企業ではなく人間です。このため、誰がキーパーソンで、キーパーソンが何を求めているかを明らかにしなければなりません。関係するする人すべてを洗い出すのは大変です。仮にすべての関係者を洗い出したとしても、個々の人を知っているとしても、関係者の相互関連を推察するのは更に困難です。

『理詰めの営業』では、関係顧客分析の方法を提供しています。この分析の方法の拡張と精度の向上の必要性をひしひしと感じています。

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『理詰めの営業』 - 関係顧客分析

2018-08-08 21:29:52 | ・・関係顧客を分析する
この案件に関わる顧客内部のすべての関係者を分析するツールです。

関係者名、役職名、「役割」、「影響度」、「関心度」、「個人的目標」、「会社人としての目標」からなる一覧表を作成します。

関係者の洗い出しには、顧客基礎情報にある組織図、意思決定プロセス情報が必須です。

「役割」は、この案件に関する予算申請者、予算承認者、購入申請者、購入承認者、技術評価実施者、技術評価決定者、ユーザー、オペレーターなどになります。

生産財の営業をしていた当時、私は上記役割を記号化していました。

E(Economic Buyer): 予算の承認・執行権限保持者、製品・サービスの購入承認
T(Technical Buyer): 製品・サービスの技術的な評価を行うエンジニアやマネージメント
U(User): 購入した場合に実際にその製品・サービスを使うエンジニアやオペレーター
A(Adviser): 自社に好意的で関連情報やガイダンスを提供してくれる協力者

この役割は、製品やサービスの種類によって異なります。

「影響度」は、その案件を次の営業ステップに進める力の度合いです。影響度は営業ステップによって変化していきます。例えば、予算申請段階では、課題・問題を把握し、起案しようとしているエンジニアやその上司、部長あたりまでが、影響力が大ではないでしょうか。一般的には、役員や社長はこの段階では口を出さないでしょう。また、会社によっては購入金額により権限移譲があり、影響度の範囲は限定されます。影響度は、大、中、小あるいは5段階の数字などで表します。

「関心度」は、解決すべき問題・課題に対する深刻度です。関心度に関しては、関心「あり」、関心「なし」、「過信」と記入します。関係者がどれだけ「自分自身の問題として問題解決に高い関心」を持っているかが重要であす。関心の低い人にいくらソリューションを説明しても効果はありません。したがって、関心の低い人にどう問題意識を持たせ、深刻度を上げていくかが重要となります。特に影響度の大きい人の関心度が低い場合は、早急に関心度が上がるように手を打つべきです。「過信」は、当該製品やサービスを不要とする考えです。

次に、「個人的目標」は、会社の方針とは別に個人として実現したいと考えている目標で、例えば「ゴルフがうまくなりたい」「実績を作って転職したい」「今のライフスタイルを続けたい」などです。個人のライフスタイル等に関係する内容で、このような情報の入手には顧客との強固な関係の構築が必要です。この情報は接待や面談時の話題などに活用できます。さて「出世したい」と思っている方の場合、営業はどうこの状況を活用できるのでしょうか。

「会社人としての目標」は、仕事上の目標で、例えば、技術部門の部長の場合は、「計画どおりの製品開発」、「歩留まりの改善」、「短期間での量産立ち上げ」などが考えられます。

このように顧客分析を行った上で、各関係者、特にキーマンに対して次の会議等でどう対応すべきかを考えます。例えば、関心の低い人にどう問題意識を持たせ、深刻度を上げていくか等です。

このツールの記入には、顧客との良好で密な関係が必要であり、このツールは「いかに顧客を知らないか」を営業に気づかせるものでもあります。

下記は、測定器メーカーの営業が作成した関係顧客分析の一例。

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