顧客の購買行動には流れがあり、その流れの中で営業がすべきことが決まってきます。案件が一連の流れのどこまで進んでいるのかを把握することで、営業がすべきことが分かります。
さて、あなたが今、抱えている案件は、一連の流れのどこにあるのでしょうか。次に打つべき手は何でしょうか。
トップセールスパーソンは、引き合いがあると、蓄積した顧客情報等をもとに受注までの営業ステップを即座に頭に描くことができます。営業ステップは、営業がやるべきこととスケジュールの組み合わせです。営業ステップは、業界、業種、製品、サービス等により異なります。また。顧客によっても異なります。
例えば、ある工作機械メーカーの営業の場合、その営業ステップには顧客との関係構築~課題の把握~デモの提案~デモの実施~デモ結果報告~仕様提案~価格交渉~受注~納入・立上げといった具合です。
また、あるSIの会社は、「顧客との関係構築~案件としての登録~顧客の購買意欲の確認~案件として確定~ソリューションの提案~成約~導入」という営業ステップを確立しています。
実際の営業ステップの定義では、顧客がその製品あるいはサービスが必要な時期から逆算していくことが多いかと思います。
今回は、ビル管理を例に考えてみます。
ビル管理の契約は通常、1年契約で問題なければ自動更新または5年程度の契約になっています。ビル管理の担当業者を代えたい場合や会社の規則により定期的に業者の見直しを行う場合は、契約終了の遅くとも半年前には契約更新の手続きが進められます。
以下は、某外資系金融機関のビル管理業務委託契約(5年契約)の終了に伴う、業者の見直しを例に取ります。現行業者がA社、そこに割って入ろうとしている業者をS社、当該金融機関をV社とします。
では、サービスが必要な時期(新契約運用開始)から遡って考えていきます。
2019年1月1日:S社による運営開始(その前に)
2018年12月31日:現行業者A社の契約終了(その前に)
2018年11月1日:現行業者A社との引継ぎ開始(その前に・・・・という具合です)
2018年10月1日~:契約締結、スタッフ編成、協力会社への連絡
2018年9月30日:受注
2018年8月1日:価格交渉
2018年7月13日:提案書提出
2018年6月15日:協力会社と打ち合わせ
2018年5月18日:協力会社へ見積依頼
2018年5月11日:現地調査結果の整理・検討、見積もり・必要書類作成開始
2018年4月29日・30日:現地調査
2018年4月10日:RFP検討・必要書類の洗い出し
2018年4月1日:RFP(Request For Proposal)をV社から入手
2018年3月23日:参加表明
2018年3月16日:顧客V社と打ち合わせ(案件内容・スケジュール把握)
2018年3月9日:顧客V社から打診
この営業ステップに時系列に書き直したものが下図です。
記入してみるとゴールまでの具体的な道筋が見えてきます。
S社の営業とV金融機関の担当者は面識があり、当該案件に関してはV社から打診がありました。既知の顧客ではない場合は、顧客からRFPの対象業者として声を掛けられるようになるように顧客との関係構築が必要な場合であり、その場合は上記のステップ1の前に更に長い関係構築のステップが追加になります。なお、公募による入札の場合は、入札条件に合致すれば応募は可能です。
節目、節目に顧客や協力会社との打ち合わせがあることが分かります。この打ち合わせを能動的に行い、成功させるための方法は「会議設計」で改めて触れることにします。
価格交渉をどの程度の期間で終わらせられるかは、顧客との関係や営業の経験・スキルに依存します。また、サービスごとの価格に関しても、どこまで無理が効くかなど営業として知識・経験が必要になります。
この営業ステップは、進捗とともに随時見直します。顧客のスケジュールの変更、顧客の組織変更など、受注まで時間のかかるコンプレックスセールスでは、変更が当たり前と考えた方がよいでしょう。
今、お持ちの案件ごとに、営業ステップを書いてみましょう。そのステップを一つ一つ進めていけば、必ず受注につながります。まだ、具体的な案件がない新規顧客開発のような場合でも、営業ステップを書くことにより、戦略が練りやすくなり、やるべきことが見えてきます。
営業活動は『顧客の購買意思決定を支援・誘導して顧客の購買による問題解決を支援すること』です。
『理詰めの営業』を活用して、各営業ステップで、顧客支援と誘導を戦略的に行い、営業ステップを一つ一つ確実に進めていきましょう。
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