法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

契約は始まりに過ぎない(5) - 「顧客リレーションシップ」マネージメント成功のキー

2024-03-31 09:07:36 | ・・契約は始まりに過ぎない
「売ってさよなら」の「ない」、「できない」コンプレックスセールス。もう一度、その定義を確認してみましょう。

このコンプレックスセールスとは、以下の特徴を持つ営業です。

・高額の商談や技術的に複雑な商談
・顧客の課題の把握、解決策の紹介から受注、受注から納品に至るまで長期間、複数の商談が必要
・複数の担当者、複数の関連部門による意思決定
・意思決定は商談の場以外のところ
・納品後のフォローも重要

受注までは「理詰めの営業」を活用し、戦略的に行動しても、一旦、注文書を受け取ると営業の気持ちは別のところに行ってしまうことがあります。

営業と顧客の間の同床異夢の始まりです。

では、受注後も緊張感を維持するにはどうしたらよいでしょうか。

コンプレックスセールスの特徴を理解し、「契約は始まりにすぎない」ことを認識し、『理詰めの営業』を活用して案件を定期的に振り返ります。

そのとき顧客の微妙な変化を敏感に感じ取り、自社が解決すべき自社自身の課題と自社の利益になるチャンスを察知します。

また、顧客との依存関係が望ましい状況にあるか、顧客はどう思っているか、買い手の心理に配慮できているか、等をベースに自社の顧客リレーションシップの現状を振り返ります。

グループ営業の場合、あるいは、長期に亘る案件の場合、売上だけではなく顧客とのリレーションシップ構築の「強度」で、グループあるいは個人を評価することも必要です。

気づき、振り返り、顧客リレーションシップの強度から経営資源の割り当てを行い、顧客リレーションシップを良好にするためのコミュニケーションの確立と顧客とのコミュニケーションの習慣化が大事になります。

これにより有意義な顧客とのコンタクトが行われ、顧客リレーションシップという無形資産の増加を図ることができます。

さて、このような「顧客リレーションシップ」マネージメントをCRMシステムやSFAで後押しすることはできるでしょうか。

今のところ、私は有効なシステムを見つけ出せていません。読者の中で、適切なシステムをご存知な方がおられましたら、是非、コメントをお寄せいただければと思います。



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契約は始まりに過ぎない(4) - 相互依存関係深化のポイント

2024-03-24 09:00:52 | ・・契約は始まりに過ぎない
先週お知らせしたように、顧客リレーションシップという無形資産を増減させる行動で、一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」とありますが、現状は
「こちらからメールする」「顧客からのメールに返信するのみ」ではないでしょうか。



実際、顧問先の協力会社(顧問先にサービスを提供する側)の営業を観察していると、メール以外のコミュニケーションが非常に少ないことが分かりました。
メールでの問い合わせには、きちんと回答してきます。しかし、言葉を交わすのは、月次定例会時の30分程度です。
しかも、質問・提案・アドバイス等はほとんどなし。

来年度の投資に対する提案など、下調べしなければならないことはたくさんあるはずですが、なにも聞いてきません。
こちらが詳細を伝えるのを待っているようです。
この協力会社を見限り他のベンダーと商談を進めていたらどうするつもりなのでしょうか。

「営業のやるべきことが分かる」-第四段階「競合分析・選定基準の明確化」で書いたようにRFPが発行された時点で、すでに顧客の意中の企業は決まっているのです。

たしかに、メールの活用によりコミュニケーションの頻度や情報量は増えています。
しかし、顧客リレーションシップの「深化の度合い」はいかがでしょうか。


いまさらですが、メールには以下のようなメリット、デメリットがあります。

・メリット
- 自分の都合で送信・受信できる
- 相手も自分の都合で確認、返信できる
- 複数の相手、社内、社外にも同時に送信できる
- 添付機能やURLを使い、多くの情報を伝えられる
- 履歴が残せる

デメリット
- 感情や思いが伝わらない
- 相手がいつ確認するかわからない
- 複雑な内容や微妙なニュアンスを伝えるのが難しい
- 送信者の意図とは違った意味合いで受け取られることがある
- 誤った情報でも履歴として記録が残る

「履歴が残る」ことをメリットとしてあげましたが、状況によってはデメリットになります。
「非公式情報」はメールでは送れません。先週書いた、下記の質問にメールで応える人はいないでしょう。

・中長期投資計画、本年度の投資計画は。
・現在の問題・課題は。
・顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
・それが今後の購買にどう影響するか。
・競合他社はどのような製品戦略を持っているか
・競合他社の製品への満足度は。問題点は。
・我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
・我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
・意思決定プロセスは、キーパーソンはだれか。
・新任の事業部長の経歴や評判は。
・なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。

メールのデメリットの部分を面談等、他の方法で補っているか、顧客の期待に本当に答えているか日々、考えて行動する必要があります。
メールで事が順調に進んでいると思わないことが大切です。

コンプレックスセールスに必須の上記情報を得るためには、相互依存関係の深化が必須です。
その上で適切なコミュニケーション手段の選択が必要です。

相互依存関係深化のためには、下記の3点を日々、顧みることが肝要です。

・どの顧客と接点があるかではなく、個々の顧客からどう思われているか。

「担当エンジニアも課長も部長も事業部長もその上の役員も社長も知っている」ことはすばらしいことですが、
その人たちにどう思われているか考えて見ましょう。「頼りになる営業」と思われているでしょうか。

・売り手と買い手は、どれくらい依存しあっているか、あるいは、依存しあっていると感じているか。

あなたが依存していなければ顧客も依存していないかもしれません。
いやいや「彼女は俺にべたぼれ」とうぬぼれて振られたことはありませんか。
自分の製品がないと顧客がどれだけ困るか具体的に考えてみましょう。顧客の選択肢は?

・売り手が買い手個人をどれだけ知っているか、買い手の心理に配慮できているか。

手始めに『理詰めの営業』の「関係顧客分析」を埋めてみましょう。
この段階でつまずいているようでは、顧客リレーションシップの構築がまだできていないというしかないです。

深いリレーションシップを築けるかどうかは売り手次第です。
営業だけでなく、開発、製造、サービスのエンジニアにも参加してもらい、複数の人的な依存関係の構築、マルチチャネルの情報収集を行いましょう。





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契約は始まりに過ぎない (3)- 「顧客リレーションシップ」という資産は増減する。

2024-03-16 18:28:57 | ・・契約は始まりに過ぎない
顧客との関係が密になれば、いままで入手しにくかった様々な貴重な情報が、嘘のように手に入るようになります。

たとえば、顧客は以下の資料にあるような質問に直接的・間接的に答えてくれるようになります。

『理詰めの営業』の分析に必要な情報が容易に入手できるようになります。




競合他社に案件を取られたり、販売の予想が外れたり、「え、どうして」と相手の行動に不意を突かれたりするのは、
リレーションシップが弱体化し、隙間風が吹いているからです。

顧客から苦情が来ないのは、リレーションシップに軋みが生じている兆候の最たるものです。
顧客が言葉に出さないのは、信頼が薄れていたり、リレーションシップに陰りが表れたりしている証拠です。

あなた自身も顧客として体験したことがあるはずです「言ってもしょうがない」

「顧客リレーションシップ」は無形資産です。資産ですのでその価値は増減します。
資産を増加させる行動と減少させる行動をまとめてみました。



私が一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

一覧表に、
「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」
とありますが、現状は
「こちらからメールする」vs「顧客からのメールに返信するのみ」
ではないでしょうか。

メールの活用によりコミュニケーションの頻度やボリュームは増えているかもしれません。
しかし、顧客リレーションシップの「深化」はいかがでしょうか。


次回は、インターネット時代のコミュニケーションとCRMについて考えてみます。

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契約は始まりに過ぎない (2)- 相互依存関係

2024-03-09 17:18:46 | ・・契約は始まりに過ぎない
「契約完了。さて次の案件」とは簡単にいかないのがコンプレックスセールス。納入までの長い道のり、納入してからの更なる苦難の道が待っています。

また、契約の内容も売って終わりではなく、長期を前提としたレンタルやアウトソーシング、長期間に渡り納品を継続する契約、納入後のメンテナンスを含む契約、など、長期的な取引を前提とした契約形態が増えています。相互依存が原則となる取引条件の増加です。



私が扱っていた生産財の場合、メーカーは「協力会社の設備(部品・材料も同様)がなければ製品を作れない」、協力会社は「メーカーに購入してもらうために設備(部品・材料も同様)を作っている、転用先はない」状況にあり、相互依存どっぷりの関係にあります。もちろん、コモディティ化した部品や製品はありますが。

このようなことから長期に亘る相互依存関係を原則とした契約の場合、顧客とのリレーションシップを深め、「信用」という無形資産を守り育て続けることが大切です。

ともすると、売り手は、契約が取れると「目標達成だ。次だ、次だ」と思い、緊張感が緩み、リレーションシップは縮小してしまいます。それは、競合に付け入るスキを与えることになります。というのも、買い手の評価は終わっていないのです。それどころか、期待通りの結果が出るか、関心を持ち続け、緊張は一層高まり、コミットメントを深めまようとします。



また、買い手の立場に立てば、「いくつかの競合の中から選んであげた」すなわち「貸しをつくった」「恩を売った」と買い手は思っているのです。
このため、謙虚な売り手であれば「選んでいただいた」「借りがある」と思うはずです。

この売り手の立場を素直にとらえて、リレーションシップを築き直し、発展させていく必要があります。


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契約は始まりにすぎない (1)– 営業と顧客の同床異夢

2024-03-03 20:12:50 | ・・契約は始まりに過ぎない
以前から何回かこのブログでコンプレックスセールスを例に、
顧客が製品やサービスを購入する一連の流れと営業の「やるべきこと」を明確にしてきました。
また、どの段階が「営業にとって勝負所か」をみてきました。

ちなみに、コンプレックスセールスとは、

・高額の商談や技術的に複雑な商談で、
・顧客の課題の把握、解決策の紹介から受注に至るまで長期間複数の商談を行う必要があり、
・複数の担当者、複数の関連部門による意思決定が必要とされ、
・意思決定は商談の場以外のところで行われる営業です。

例えば、プラント建設やITシステム導入、生産設備の購入、オートメーションの導入、ビル管理、不動産の購入、大規模な移転などは好事例でしょう。





受注が決まると営業はホッとします。「やった、目標達成だ」「さて、次は」と次の案件に目を向けます。

発注した顧客も、「(事業部長の説得に時間がかかったが)やっと、発注できた」と一瞬、安堵しますが、
「予定通りに完成できるか」「課題は本当に解決できるか」と新たな不安が始まります。

手離れの良い製品であれば、「さて、次」は可能でしょう。
しかし、コンプレックスセールスに「売ってさよなら」はないのです。



私が携わっていた半導体向け計測機器の場合、受注から納入まで1年、それから立ち上げ、
顧客エンジニアのトレーニング、運用サポート、修理や定期メンテなど数年の付き合いが続きます。

顧客との付き合いの中から次のビジネスのネタを得ることや、逆に次期製品の開発依頼を受けることもありました。

すなわち、コンプレックスセールスには、長期にわたる第七段階の「納入の推進」があります。
そして、「購買行動と営業活動」の記事では省かれていますが、第八段階として「納入後の成果のフィードバックと評価」があります。
長期間に渡る付き合いの中での評価が次のビジネスにつながります。

「長期にわたる顧客との強い絆をどう維持していくか」>が、「契約は始まりに過ぎない」のテーマです。



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