法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

「営業のやるべきことが分かる」- 第五段階「提案書提出・競合分析・受注条件整備」(その3)

2018-05-29 22:25:24 | マーケティングと理詰めの営業
営業は注文を取りたいがために前のめりになりがちです。

例えば、

「今、社内で検討中のソリューションでお客様の問題は、確実に解決できる」と営業が客先での会議でコミット。その場にいたエンジニアと帰社後、口論。「まだ、検討中なのにあれはないでしょ」「解決できないのなら打ち合わせの時に反論すればよかったのに」とエンジニアに言い、口論はエスカレート。受注はできたが、その後のエンジニアのサポートが悪く、顧客からの評価は最悪に。

顧客の問題・課題を解決できなければ、訴訟問題にも発展しかねません。顧客の問題・課題を真摯に分析し、そのソリューションを検討します。現在の製品、サービスで「できること」、「できないこと」を明確にしましょう。

「できないこと」を「できること」に変える方法も考えます。例えば、現時点では「できないこと」でも、適切な費用と納期をいただければ開発可能な場合もあります。

現在あるソリューションであれば、費用はいくらで、何か月で納入可能、新たな開発が必要な場合は、さらに費用と開発期間がこれだけかかる等をできる限り正確に見積もります。

また、「できないこと」も他社との協業により、可能になる場合があります。

私が手掛けたビル管理業の場合は、「他社の組み合わせ」を基本とするソリューションでした。自社では顧客とのインターフェース、まとめ役、簡単な日常業務だけを行い、実際の業務、特に専門的で技術的な業務はすべて他社に任せます。例えば、無停電電源装置の点検は東芝、空調機器の点検はダイキン、消防設備点検は能美防災といった具合です。このような場合は、各社へ仕様書を出して見積りを取り、受注できた場合は協業していただくことについてコミットしてもらいます。

これらが受注条件の整備です。営業だけで決めるのではなく、社内の関連各部門あるいは協力会社のコンセンサスを取り付けることが肝要です。
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「営業のやるべきことが分かる」- 第五段階「提案書提出・競合分析・受注条件整備」(その2)

2018-05-20 22:57:08 | マーケティングと理詰めの営業
競合他社を調査し、対抗策を練ります。

以前も書いたように、この案件に関して、あなたがこのRFPの説明会に初めて呼ばれたのなら、少なくともすでに1社はもっと早い段階から顧客と話会って、懐深く入っています。

それを分かった上で競合他社の仕様やデモの状況、顧客との人間関係、顧客での評判、他の顧客での評判、価格戦略、技術サポート体制、経営状況などを入念に調査し、戦略を練ります。

特に選定基準となるところは、冷静に分析し、提案書の中で自社の強みをどう伝えるか、自社が劣っている点をどう説明するか知恵を出し合いましょう。

また、真剣に取り組まないことも選択肢の一つです。例えば、以下の私の経験例。

大手企業のS社の事業部長A氏は「天皇」と呼ばれる人で、100%の決定権を持っており、かつ、現行サプライヤーはこの人が選んだとのこと。
しかも、「天皇」は、サプライヤーの変更を望んでいないらしい。

私はこの案件は、あきらめました。RFPを受け取ってから提出までの短時間で人間関係を構築するのは無理だからです。そもそも、この段階で初めて呼ばれたことが私の会社の現状を如実にあらわされています。

今後を考え、失礼のない提案書を提出し、次の案件を目指し、戦略を始めました。

特にS社内の組織、人間関係、事業部としての問題・課題・戦略、意思決定方法(本当に天皇が決めているのか)など、基本的なところから始めました。後述する「理詰めの営業」の初歩です。


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「営業のやるべきことが分かる」- 第五段階「提案書提出・競合分析・受注条件整備」(その1)

2018-05-13 21:50:12 | マーケティングと理詰めの営業
顧客はサプライヤーを2~3社に絞り込み、仕様等を公開し、見積依頼(RFQ:Request For Quotation)や提案の依頼(RFP:Request For Proposal)をします。会社(役所)の規則で一定金額以上の案件は、3社見積もり必須というところが多いかと思います。

RFQ、RFPの説明会を行う場合もあります。私の経験では、各サプライヤーが個別に呼ばれ説明を受け、質疑応答を行う形式がほとんどでした。

米国大使館の入札の場合は、ホームページ上で入札説明会の案内が行われ、申し込んだサプライヤーを一堂に集めた説明会・現場調査が実施されました。質疑応答は行わず、質問は決められた日時までにメールで提出。回答はすべてのサプライヤーからの質問を整理してホームページに掲載されます。前回の入札価格について質問しても回答してくれませんが、前回の落札時に落札者名とともにホームページに掲載されているので、調べれば出てきます(データベースが大きすぎて私は調べきれませんでした)。

営業はRFQ、RFPの内容を精査し、提出書類の種類と内容、提出期限、サプライヤー選定基準などを確認します。一般的に提出書類には会社の財務諸表、会社の組織、対応チームのスキル・資格、品質管理体制など多岐に亘るため、社内の関係者を集めて説明会を行い、手分けして進めることが肝要です。

また、阻害要因がないか確認します。例えば、自社の製品では実現できない機能はないかチェックします。逆に言うと、第三段階までにインサプライヤーとして活動してきた営業は、他社にない機能などを仕様書に盛り込むように顧客を誘導し、自社の優位性を確立します。

実際に資料を作成し始めると、不明な点がでてきます。改めて質問できる場合もありますが、追加質問を許さない場合もあります。実際、現場調査を一回行っただけでは十分な情報は、得られません。このため現行のサプライヤーがいる場合は、彼らが有利になります。特に、顧客が現状のサプライヤーを気に入っているが、会社(役所)の規則でRFPを実施しなえればならない場合は、他のサプライヤーが落札するのは困難です。

以前、大阪のある役所の設備管理の業務を新規受注したことがありました。当該役所と長期間契約していたサプライヤーを価格差でひっくり返した例です。選ばざるを得ないくらいに価格差のあった例で、役所の担当者からは、「おたくが安すぎる値段を出したからこんなことになった。」といまだに文句を言われています。

また、現在、私は見積もりをお願いする立場にありますが、本当に真剣にサプライヤーを一から選びたい場合は別として、会社の仕組み上の理由で3社見積もりをする場合は、「それとなく」その旨、知らせてサプライヤーが無駄な労力を使わないように調整します。

また、「5段階、価格交渉をする。最後は社長が交渉」「50%以上値下げさせる」などのルールがある顧客もあるので予め聞き出しておきましょう。
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「営業のやるべきことが分かる」- 第四段階「選定基準の明確化・競合分析」(更新)

2018-05-13 21:25:21 | マーケティングと理詰めの営業
第一段階から第三段階までは、顧客が検討を重ね、購買の意思決定を行うプロセスで、営業がもっとも顧客に貢献できるプロセスです。

一方、第四段階以降は、購買を実現させるプロセスで、顧客対サプライヤーに分かれて交渉する段階です。

顧客は外部に対して購買の意思を明らかにし、公に調達先候補と接触し、RFPを発行して、提案書、見積書を要求します。

そして、提出された資料を比較・分析して調達先を選定します。

第四段階以降は公式購買プロセスです。

反対に、第三段階までは非公式購買プロセスです。しかし、今まで説明してきたようにこの非公式購買プロセスこそが重要です。

それでは、第四段階以降を見ていきましょう。

この段階から顧客は、正式な購買手続きに従って購買活動を進めます。

具体的には、問題、課題を解決できる可能性のある製品やサービスを提供できる複数のサプライヤーと連絡を取り、問題あるいは課題、検討しているソリューションを開示します。

営業は自社の技術者とともに開示された内容を検討・理解します。

理解できない場合は、顧客と打ち合わせを行い、問題・課題を十分に理解します。

顧客が検討しているソリューションに関しても、適宜、提案を行います。

一方で、営業は、サプライヤーの選定基準が何なのかを調査します。

デモ結果、サービスサポート体制、納入実績、価格等、どのような選定基準があり、どのような比重を置くのかを調べます。

これが、定まっていない場合は、どんなにデモで良い結果を出しても失注する可能性があります。

例えば、顧客に意中のサプライヤーがある場合は、そのサプライヤーを選定するためにデモ結果ではなく納入実績に重きを置いた選定基準を設定するからです。

選定基準については顧客のコミットメントを取っておくほうがよいでしょう(なかなか日本企業相手には難しいですが)。

そして、競合他社がどこなのか推定し、競合他社の製品やサービス、強み・弱み等を調査します。

あなたの会社がこのRFPの説明会で初めて呼ばれたのなら、少なくともすでに1社はもっと早い段階から顧客と話会って、懐深く入っています。

それがどの会社か分かった上で、その会社と顧客の人間関係、評判をまず調べましょう。

この案件に関して、その会社以上に、強い人間関係をあなたが持っているか、気づくことができるかそこが一つのポイントになります。


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