石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

クロマグロ禁輸案の否決と日本漁業の今後

2010-03-21 22:55:33 | 政策
私たちの小さい頃、マグロと言えば「とっても高級な魚」というイメージがありました。自宅でも、外食の場でも、そうそう気軽に食べられるものではなかったと記憶しています。それは単に、我が家で滅多に食べさせてもらえなかっただけの話なのかも知れません(笑)が、それがいつの頃からか、スーパーなどでも値段が下がってきて、自宅でも割と気軽に食べられる魚になりました。

当時は意識しませんでしたが、今にして思えば、あれは海外からのマグロの輸入量が増大して、国内生産量と逆転した頃からの話だったのかも知れません。改めて調べてみると、マグロの海外からの輸入量が急激に増え出したのが1980年代後半、そして国内生産量を追い抜いたのが1994年頃。そして、マグロ類(特にクロマグロやミナミマグロ)の価格が下がり始めたのがちょうどバブルが崩壊した1990年前後。海外からの安価なマグロの流入が、私たちのマグロ食文化を助けていてくれたのですね。

さて、その日本のマグロ食文化を脅かすのではないかと注目を浴びたのが、ドーハで開催されたワシントン条約締約国会議の委員会で、モナコが提出した大西洋産クロマグロの国際取引を禁止する決議案です。「非常に不利な状況」との事前の予想に反して、決議案は圧倒的多数で否決され、ホッと胸をなで下ろした方々も多いのではないかと思います。

「クロマグロ禁輸案、委員会で否決 ワシントン条約会議」
 (asahi.com 2010年3月18日)

日本が主張したように、絶滅種の取引を禁止することが目的のワシントン条約で、クロマグロの禁輸を扱うのは馴染まないという主張はもっともな話に聞こえます。ただし、同様の例はすでにヨーロッパウナギの禁輸で前例があります。今回、日本は「クロマグロは資源が枯渇するような状況にない」という立場を採ったわけですが、そう考えていない国々も多いわけです。

例えば、ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)の科学者会議は「現在の産卵可能な地中海クロマグロの資源水準は、資源が未利用状態だった時の推定資源量と比べ、15%以下にまで減少している可能性が高い」と推定しています。つまり、漁獲制限などの乱獲防止策が有効に機能していないのではないかと問題視されているわけで、このままでは大西洋クロマグロがの資源量が今後とも大幅な減少を続け、いずれは絶滅するのではないかと危惧されているわけです。

最近では世界的にマグロが食べられるようになってきたとは言え、大西洋のクロマグロはその80%が日本に輸出されています。今回の結果を報じるメディア報道の中にも見られましたが、私たちはこれを機に、マグロをはじめとする水産資源の管理・育成と、そして持続可能な漁業の推進に国を挙げて真摯に取り組まなければならないと思うのです。

かつて年間1,200万トンを誇った日本の漁獲量は、今や600万トンを切る水準にまで落ち込んでいます。半減以下、ですね。まさに危機的状況です。ではなぜそのような状況に陥ってしまったかというと、その原因の一つに「乱獲」、つまり水産資源の管理に問題があったと考えられています。そこで、漁業を資源の面から考えて持続可能にしていくためには、資源の管理と漁獲量の管理を効果的に組み合わせて「育てる漁業」に転換しつつ、将来に希望の持てる漁業にしながら担い手を確保していく必要があるわけです。

今、国内の食糧自給率の向上が叫ばれていますが、水産物も私たちの食生活を支えてくれている大切な食料です。今回の輸入クロマグロの問題を一つの契機として、これからみんなで、国内漁業の再興と水産資源の有効活用について考えて行きましょう!


<参考資料>
 ・「持続可能な漁業を求めて」 須能邦雄・高成田亨 世界2009年1月号
 ・WWFジャパン ウェッブサイト
 ・水産庁 まぐろに関する情報
 ・農林中金総合研究所 マグロの需給と価格形成をめぐる動向
 ・中央水産研究所 ウェッブサイト