解剖学はおもしろい上野 正彦医学書院このアイテムの詳細を見る |
元監察医の方がかかれた解剖学入門。法医学というのはマイナーな分野で医学部学生からも人気が無いようですが事件の真相解決という面から言うと欠かせない学問だということが良く分かります。
解剖学は医学系であれば最も基礎に位置する学問とのこと。地味で専門とする人は少ないとは思うのですが人が居なければ困るのは事実。計画的に人員を確保していって欲しいものです。
■溺死の原因
溺死の死者の5,6割は耳の錐体という骨の中に出血していることが分かった。
これは水を飲んで鼻からつながる耳菅の間を水が行き来することによって鼓膜の内側の鼓室内圧が急変することが原因だと考えられる。このときに三半規管もやられて平衡感覚がなくなることがおぼれてしまう一つの要因になっている。
一部内容をピックアップ
■循環器
立ちっ放しは下肢からの血液循環を行う必要があるために心臓に負担がかかる。
心臓よりも足を上げて休むことで足の疲れを取ることが出来る。また歩くことによって筋肉がポンプの役割をして循環を助けることが出来る。
致死量は動脈が1/4 静脈が1/2
■肺
肺は水に浮く唯一の臓器。嬰児が生産児であった死産児であったかの判断に利用される。(浮揚試験)
■なぜ血液型の違う子供を生めるのか?
胎児と母親の間は血流は直接つながっておらず絨毛間血液洞という空洞の間を通して栄養分と老廃物の受け渡しを行っている。
■出生の考え方
法律によって人が生まれたという概念が違う。
刑法では胎児が一部でも姿を見せたとき
民法では胎児が完全に姿を見せたとき
医学的には自発的に呼吸をし始めたとき
■ホルモンの効果
臓器としては小さいが内分泌腺は重要な役割を果たしている。
男性でも女性ホルモンは分泌されているが肝臓で分解されるために
具体的な効果として現れない。甲状腺、副腎皮質以外のホルモンは消化液に弱いので焼肉のホルモンに摂取効果は期待できない。
死体所見についての分析が非常に面白かったのを覚えています。
墜落死における「自殺」と「他殺」の違いとか。
あとは、監察医制度が都市圏にしか整備されていない問題とか、
医療構造における問題も様々指摘されていますよね。
しかし、まさか純粋な解剖の本も書いていたとは…。
チェックしてみます。
死というのは誰もが避けて通れないイベントだからこそきちんと向き合うべきなのだと思います。
この本は医学を志す初学者向けなんで特別な知識が無くとも読めると思うんでお勧めです。(新書でも出ているみたい)