Takekida's log

千里の道も一歩から

ねじれ体験の有む価値

2018-08-05 22:04:10 | Books
紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


 佐藤優さんのルーツの1つとなった外務省での2年目のイギリス留学を書き綴った本です。外務省に入った経緯から運命の出会いとなったホームステイ先でのグレンとの語らいの日々などが綴られています。
佐藤さんは外務省のロシア語研修生としてイギリス陸軍語学学校で学んでその後、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍しますが鈴木宗男事件の関連で最高裁で有罪となります。この本では佐藤さんのライフワークはキリスト教神学であることが明確であり、外交官はある意味腰掛として考えていたようでかなりの異質でねじれた境遇の人だともいうことが出来るでしょう。ホームステイ先の家でグラマースクールに通っている頭の良いグレンという名の少年と出会うのですがグレンもまた悩みを抱えています。彼はイギリスでいえば中流階級の下層の家庭であり、グレンには、両親も兄弟も同じ村の子どもにも知的な会話ができる相手がおらず犬のジェシーだけが友達だったとのこと。彼は大学に進学し中流階級の上層あるいは知識人階級に移動することが出来るが親含め親族との距離が離れて会いまうことを悩んでいます。その心の葛藤は佐藤さんの最終艇に目指したいものと今の仕事のGapを抱える立場と重なるものもあったのかもしれません。まさにそれが表れているセリフが「僕には僕とグレンが2重写しになる」。佐藤さんも境遇としては親を超えて外交官になったという家経緯があり、日本とイギリスの階級社会の違いというのはあれどもつながるものを感じたようです。自身が鳴っているものと本来向かいたい姿のGapというのは誰しもが感じることはあるのでしょうが、本来喜ぶべき生まれた枠から上に超えることで悩んでいるというのは皮肉なものです。ただそういった背景があったとしても物事に全力でぶつかっていく姿は考えさせられるものがありました。
 この本を読むとイギリスの階級社会というのが非常に厳しく植え付けられているものであることがわかります。ここら辺は段々と変わってきているのはあるのでしょうが日本の方がまだまだゆるいものだと感じます。そしてイギリスという国に対しても鋭い考察がされています。
「イギリス人は、本質的に人種主義者で階級意識が強い。有色人種とは別だと考えているからイギリス人は東洋人とうまくやっていくことが出来る。また、国内で別の階級に属していても対外的にはまとまる。
日本がイギリスに牙を剥いてきたことを決して忘れてはいない。しかし、日本はイギリスに勝利することが出来なかった。イギリスはそういう敵対民族を完全に追い込むことをしない。丁寧に扱う。
インド人は牙を剥き独立を獲得した。それだからイギリスはインドとの友好関係を追求する。イギリス人は本質的に帝国主義者でその本質は今も変わってはいない」
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