産経新聞報道検証委員会の議事要旨が発表されました。
政権交代以後、産経新聞がどのようなスタンスで報道を続け、
それはどのように評価されたのでしょうか。
(
産経新聞 12月20日より)
産経新聞報道検証委員会 鳩山新政権 「健全な二大政党」ぶれぬ報道
産経新聞社が自らの報道のあり方を検証するため、有識者から意見を聴く「産経新聞報道検証委員会」の会合が7日、東京都千代田区の産経新聞東京本社で開かれた。今回は、8月の総選挙で民主党が圧勝して発足した鳩山新政権に関する報道と、刑事司法の大転換点となった裁判員制度の導入をめぐる報道について、社外委員4氏を中心に例年以上に活発な議論が交わされた。
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■社外委員
田久保忠衛 外交評論家
葛西敬之 JR東海代表取締役会長
残間里江子 プロデューサー
土肥孝治 弁護士
■社内委員
片山雅文 産経新聞東京編集局長
飯塚浩彦 産経新聞大阪編集局長
(司会 平田篤州・産経新聞報道検証委員会事務局長)
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■“迷走ぶり”をよく整理 葛西氏/「アマチュア政治」を指弾 田久保氏
◆基本は是々非々
司会:
民主党の鳩山新政権は多くの問題点が出ています。その報道について、政治部長から報告します。
乾正人政治部長:
鳩山政権については当初から
是々非々を基本方針として徹底してきました。新政権に厳しすぎるのではというご意見を政権発足から1、2カ月ほどは多くちょうだいしましたが、今では産経の論調は正しい、もっと頑張ってほしいというご意見が多く寄せられています。
田久保忠衛委員:
新聞が是々非々であることは当然だと思います。しかし、実態を見て果たして是々非々でいられるかということです。
この政権の本質は行き過ぎた官僚制度改革だと思います。それはそれで意義はあるけれども、民主党はアマチュアリズムに極端にぶれています。ここに批判の矢が放たれるのは当然。外交、防衛は誰でも論じやすいけれども、なかなか本質が分かりません。鳩山政権のポピュリズム(大衆迎合)を徹底的に報じてほしいです。
残間里江子委員:
いろいろ異論はあるでしょうが、日常の生活実感で他の紙面と併せて読んでいると、産経は産経なりのバランスがとれていたと思います。
唯一、ぶれなかった新聞だと思います。健全な二大政党をつくるためには両サイドに等分の意見があって当然です。なぜ、人気のある民主党にこんなことを言うのかと指摘されることもあるでしょうが、これからさらに、産経の存在は意味を持つことになると思います。
葛西敬之委員:
健全な二大政党を考えた場合、産経は民主党の迷走ぶりをよく整理して報じていると思います。民主党は政権を奪取するための混合政党。マニフェストに入れた政策も、寄り集まった人たちの別々の考え、主張を取り入れて、袋に包んだようになっています。1つの方向に収れんすることが初めから難しい政党。よく
民主党は、来夏の参院選後まで待ってほしいとか、社民党がいるから正しい政策がとれないとエクスキューズを発していますが、本当にそうだろうか。参院選が終われば、さらに100ものエクスキューズを見いだすことになるでしょう。
乾部長:
「民主党解剖」「新民主党解剖」と連載を続けて民主党の構造的問題を浮き彫りにしました。行政刷新会議の事業仕分けは予算の透明化を図った点では評価できますが、科学技術予算削減などを厳しく指摘し、問題点に切り込めたと自負しています。
田久保委員:
事業仕分けはとんでもないことです。一見、評判を博していますが、軍人の制服は安いほうがいいといっても、自衛隊員がメード・イン・チャイナとかメード・イン・ノースコリアの制服を着てたら世界の笑いものになる。コスト削減ばかりで判断できない分野に素人が踏み込んで、取り仕切ったかのようなパフォーマンスをしているのを徹底的に指弾してほしいです。愛読していた「民主党解剖」が一冊の本になったのは改めて感心しています。新聞に連載されたものが今読んでも読むに堪えうるのは、大したものだと思います。
残間委員:
仕分け作業を実際に見に行ってきました。テレビなどは蓮舫女史の発言を盛んに映し出しましたが、現地の会場では60、70代の男性、10代後半から20代の若い男女や50代女性が多い印象でしたが、みんな非常に冷静に見守っていました。アンダーラインを引きながら資料を見て、民主党の人が変なことを言えば、「?」を付けているし、官僚の答弁があやしいと、やはり「?」を付けています。仕分け作業の突出した面白さにスポットが当たりましたが、実際に見ると、仕分けの「人気」とは別の世界がありました。この姿を見て日本は捨てたものじゃないと。このあたりを軸に置いて報道すると、もっと理解が得られるのではと思いました。
土肥孝治委員:
産経は政治に関して読みやすく、分かりやすいと感じています。非常に分かりやすいのはいいことです。ただ、政治家というのはあまり信用がおけません。腹の内が分からなくて、真実が見えてこない人たちばかり。それを相手にしている政治部の記者も、その腹の内が分からない(笑)。訳の分からない政治家を相手に情報を取ってくる特別な人たちだと思っています。それでも書かれている記事は、本当に世の中を動かすきちんとしたもの。後から読んでも面白いです。
民主党政権の理想論やマニフェストは、本当に実行したらどんな不都合が出てくるのか。そこを突いてほしいです。そうでなければ新聞は信用がおけなくなります。
片山雅文委員:
この政権は是が少なく、非が多いです。鳩山政権は外交、教育、外国人参政権、人権擁護法案など日本の将来に禍根を間違いなく残します。「ファクト(事実)」を積み重ね、何を言ったか、どの方向に向かっているかを分かりやすく提示してきました。これからもそんな危機感をもって正論を論じていきたいです。
田久保委員:
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題については、今月4日の日米作業グループ会合で駐日米大使が怒りを表しましたが、
表面に出ることが少ない米国の意思表示をよく書いていたと思います。普天間問題は世界の秩序を乱すことになります。21世紀のアジアにおける国際秩序の主役となるのは、太平洋国家を標榜している米国、日本、中国、それにインドだと思います。日本はまだ独自のプレーヤーたる資格はありません。日米の同盟は60年安保から数えて50年を迎えようとしていますが、単なる軍事同盟にとどまらず、文化、経済をはじめ各界で人的結びつき、価値観のつながりがあります。それを普天間の問題でつぶしてはなりません。
◆「同盟」理解せず
葛西委員:
民主党は日米同盟の死活性を理解していないように見えます。今日の状況が歴史のどの時代に似ているか。第一次世界大戦から第二次世界大戦の戦間期、その後半の10年間に似ていると思います。「東西冷戦の歴史は終わった。軍事的勢力均衡はもう不要。日米同盟は形だけあればいい」という考えが幅をきかせていた時期がありました。ところが現在、中国の軍事大国化が第二次冷戦の現実を明らかにしつつあります。
田久保委員:
マニフェストなどに国益という言葉がありません。軍事力拒否で、その代わりにソフトパワーだと言っている。これは大きな問題です。
民主党の外交は、社民党のわずかな人たちの動きでおかしくなっています。民主党の中にも怪しからんと思っているまともな人はいるはずです。
葛西委員:
今は米ソの冷戦から米中の冷戦への移行期と考えられます。折しも、1930年代と同様に米国に端を発する世界的不況を見て、米国の時代は終わったと早とちりする人が出てきました。一方で、かつてのヒトラー、スターリンの時と同様に一党独裁の中国が奇跡的成長を示しています。その際に
日本はヒトラーと同盟を結び、スターリンを抱き込んで自由主義の米英を倒そうと試み、国を滅ぼしました。現在、米国を排除して東アジア共同体構想を提唱する人たちに対し、世論を正しくリードするものとして産経の力に期待します。