学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

井上靖の世界

2007-05-14 22:11:17 | Weblog
書店へ出かけたら、雑誌のコーナーで
別冊太陽「井上靖の世界」を見かけました。
生誕100年を記念しての刊行とのこと。
パラパラと本をめくってみると、井上靖が
美術についても述べている項目を見つけたので、
面白そうに思い、早速購入しました。

私は読書を趣味としていますが、井上作品はあまり
読んだことがなく、随分前に角川から出版されている
「真田軍記」にさらりと目を通したくらいです。
ちなみに現在のNHK大河ドラマ「風林火山」の原作を
書いたのは井上靖です。機会があれば読んでみたいと
思っています。

さて、井上靖は昭和50年、日本経済新聞に
「明治の洋画十選」を綴ったそうで、雑誌には
その文章がかいつまんで紹介されています。
登場する作家は高橋由一、原田直次郎、黒田清輝、
藤島武二など。明治を代表する作家ですね。
作品に対する評は、自分の感覚を深く掘り下げたもの、
と私は感じました。
例えば浅井忠の《織物》では、女性は織物をしているが、
心の中では、おそらくまるで別なことを考えているものだ。
といったもの。
論理ではなくて、人間観察に優れた作家らしい、
文章で綴られています。

絵の見方。
私の場合、どうしても絵を見る視線が、技法や絵の背景にあるものを
探そうとしてしまいます。職業柄しょうがないのかもしれませんが・・・。
けれども、井上靖の視点は、自分の心の感じたことを大事にして、
発想を膨らませてゆく見方です。
自分の忘れていたことを、井上靖に教えてもらえたような気がしました。
コメント
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