細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『鳩の翼』は、飛ぶには華麗だが、よく見るとボロボロに汚れている。

2021年11月19日 | Weblog
●11月18日(木)21-00 <ニコタマ・サンセット傑作座>
OVS-157『鳩の翼』" The Wings of the Dove "(1997) Miramax UK.
監督・イアン・ソフトリー 主演・ヘレナ・ボナム・カーター、ライナス・ローチ、シャーロット・ランプリング<101分・ビスタサイズ>DVD
1900年初期、ロンドンの貴族や高級住宅に住んでいた人種たちにも、世界大戦の経済的なしわ寄せで、不況風が吹き始めていた。
ヘンリー・ジェイムズの原作を、あの「文なし横丁の人々」ほどではないにしても、戦雲と不景気には人種は、イタリアのヴェニスに移住し出していた。
そこに世界的な<アヘン疫病>の流行も加わって、ロンドン貴族たちの移住で、人々の生活は、まさに汚濁していく運河のように、暗く沈み込んでいた。
 あの「眺めのいい部屋」や「旅情」で描かれた世界は、午後の明るい日差しの下での<恵まれた人々>の生活であって、現実はこの作品のように陰湿だったのだろう。
たしかにヴェニスには<鳩>が多くて、あの大広場の周辺は、まるでヒッチコックの「鳥」のように鳩の群れが多くて、しかも観光客慣れをしていてエサをせびるのだ。
そのような観光地は、最初の見てくれはいいのだが、次第に強引な鳩たちの群れが周辺にタムろして、あの映画のような恐怖すら感じるのだ。
見た目は華麗で、まるで古典絵画のようでもあるが、ちょっと路地裏に入ると、その歴史と異常に多い鳩の異臭に、つい、たまりかねてカフェに入ってしまう。
わたしも映画の魅力に憧れて、数回、ヴェニスには訪れたものだが、路地裏まで追いかけて来る鳩たちの強情な強引さには、カネをセビる少年達のような固執を感じた。
この作品の三角関係も、まるで鳩たちの行動に似ていて、ただの恋の三角関係よりも異質な執拗さを感じるが、美しい運河の風景に惑わされてしまうのだ。
ヘレナ・ボナム・カーターも、この時代背景と、水の都の汚濁した運河のように、陰湿に漂っているが、映画にはその異臭がないから、まだいいのだが。

■執拗な左中間のゴロで、ファーストは判定でセーフ。 ★★★
●ミラマックス、アスミックエースDVD

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