細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『生きるのは飽きたけど、死ぬのは怖い』とシナトラは唄う。

2021年12月01日 | Weblog


 「生きるのに飽きたけど、死ぬのは怖い」
  --Tired of Living, but Scared to Dying-----              細越麟太郎


 さすがに最近になって、シナトラの未発売レコーディングの曲は、いくつかの<海賊ラ
イブ盤CD>を残して減少したが、その代わりに豪華秘蔵写真集とか、ライブショウなど
のDVDセット・ボックスなどが、突然に<タワーレコード>や<蔦屋家電>などに出現
するので、ファンとしては、まだ監視は必要だ。
 たしかに、この会報ではその情報には常時アクセスして詳細が紹介されるが、それを
店頭でゲットするには、日頃のチェックと速やかな判断とーーー財力とが必要になる。
 数多い有名タレントでも、人生で2度も引退宣言したひとは少ないだろうが、わがフラ
ンク・シナトラはそれをやった珍しい人だ。
 ご存知のように、はじめて引退宣言したのは、1971年6月で、当時25日全米発売
の"LIFE"誌では、その特集を組み、" SINATRA Says Good-by and Amen " という大特
集を組んだものだ。
 そしてわれわれも引退を惜しみ、関連のレコードやCDを買い求めた。
 ところが2年ほどして、" Let Me Try Again " という新曲とともに彼はショウビズに
カムバックして再活動を始めたが、タイトルも" Ol' Blue Eyes is Back "。
 ま、われわれファンとしては嬉しいことだが、テレビのショウでは相変わらずのジョー
クで、・・・”家にボーッとしていると、電話がかかって来て、ナンシーはいますか?って
いうんだ。「いま外出している・・」というと、「あんたは誰だ、召使いか?」という。
で、「俺はフランクだ、」というと、無言でガチャン、だ・・・”と嘆いていた。
 そのリタイア騒動の時に、つまり一回目の引退宣言のときに、1971年6月13日の
夜に、ロサンゼルスの<アーマンソン・シアター>で開催された「リタイアーメント・コ
ンサート」の時のライブの模様が、DVD映像として、このたび豪華な特典入のボックス
で発売されたのは、実にうれしい事件。
 この原稿のタイトルは、その夜のシナトラの引退宣言の心境を、実によく言い当ててい
るが、ご存知のように、これはエドナ・ファーバーの原作をミュージカルに、ジェローム・
カーンとオスカー・ハマーシュタインが作詞作曲した『ショーボート』の中で、もっとも
有名なナンバー「オールマン・リバー」の一節で、このコンサートでも、シナトラは自身
の心境も込めて、もっとも感動的に歌い上げている。
 この絶唱は、多くのシナトラの歌曲の中でも、非常に印象的な圧巻だ。
 さすがに、この夜の模様は、実に完璧な映像とレコーディングで、その司会はブロード
ウェイの名女優で、われわれの記憶としては、舞台演出家の名匠ジョシュア・ローガンが
初めて映画の監督をし、キム・ノヴァクの登場で評判だった映画「ピクニック」で、あの
年増の隣人で、しかも傲慢な隣の酔っぱらいを演じた名優ロザリンド・ラッセルが、実に
ホロリとさせる熱弁で、ちょっとツマリながら、シナトラを紹介している。
 このボックスには4枚のDVDと、そのライブのCDが1枚入っているが、その他のオマ
ケが素晴らしく、貴重な写真とライブのプログラム。6枚のキャビネ版のポートレイト、
引退報道を当時特集した”LIFE”誌の縮小版。・・・などが満載。
 まさにシナトラ・ファンには貴重な玉手箱なのである。
 つい先頃には、シナトラ生誕100年を記念して、100曲の名曲を4枚のCDにセット
して、豪華なパンフレットを添えたボックスは発売されたが、それよりも興味を引いたの
は" THE OFFICIAL CENTENARY BOOK "というLPレコードサイズの5センチメートル
もある厚さの写真集で、これは9、000円で、まだ店頭で売られているが、いつ手に
取って、その重さが値段よりも凄くて、仮に買ったとしても、どうやって家まで運んだら
いいものか、と迷ってしまい、いまだに買う勇気はない。
 おそらくアマゾンにでも依頼すれば宅配してくれるのだろうが、思案に苦しむのだ。


 

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