細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●「美しき運命の傷痕」の地獄の美しさ。

2005年12月27日 | Weblog
12月27日(火)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-179 「美しき運命の傷痕」L' Enfer (2005) 仏
監督・ダニス・タノヴィッチ 主演・エマニエル・べアール ★★★★
ことし最後の試写は実に立派な知的映画に恵まれた。
ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキが残した3本のアイデア、「天国」、「地獄」、「煉獄」のうち、「ヘブン」はすでに映画化されたが、これは「地獄」をテーマにした情愛の転落を、三人姉妹のそれぞれの悲劇を通じて描く。
といっても、おどろおどろした地獄ではなく、ひとの心に感染する嫉妬、浮気、殺意、狂気などを、非常に知的に美学を貫いているので、まさにトリュフォーやデュヴィヴィエの作品を見ている時のような愛のサスペンスに酔う。
パリを舞台に、非常に洗練されたおとなの関係が、内面的にはドロドロに崩壊していく縮図が、美しい地獄絵となる。
べアール以下、みんながそれぞれに好演していて、キャロル・ブーケの意外な老け役に恐れ入った。
タノヴィッチは完全にトリュフォーの穴を埋めたようだ。

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