「部長、僕は昨日、世界の裏側を見てしまったんです!」
「君はまた、目黒川まで行ったのかね」
「会社の裏側じゃありませんよ、世界です、この世界です」
「なんだ、ブラジルか、あそこは去年出張で行ったよ」
土手で、天使と二人で花火大会を見ていたんだ
「ひゅー、どかんって、花火って一瞬なんだねえ」
って僕が言ったら、天使は
「あれは一瞬じゃない、打ちあがって開いて消えるまで80年はかかっているよ
朝顔の花が咲くのをビデオで撮ったとしよう
早送りで見れば5秒で花が開いてしぼむだろう
それと同じさ」
と答えた
「なるほど、僕らには一瞬でも、花火自身は80年の時間が経過しているんだね
一瞬でもきれいだねえ
でもなんとなく切ないのはなんでかなあ」
「そりゃ、あの花火一つ一つが実はあんたら人間の一生だからだよ
花火大会ってのはね
年に1回、みんなの人生を早送りで再生してんだよ」
「そうだったのか!それで、みんな空を見上げて
一瞬だけ、きれいで、なつかしくて、切なくなるのか」
「そうさ、今年も天国から1000人分の人生を見せてやるよ
また、夏にここの土手に見に来いよな」
横を見たら、もう天使は消えていた
僕は天使と何秒間話していたのだろう
気がつくと目黒川はすっかり闇に溶け
鼻の奥に感じる煙のにおいに
僕はかすかなデジャヴを感じていた
「君はまた、目黒川まで行ったのかね」
「会社の裏側じゃありませんよ、世界です、この世界です」
「なんだ、ブラジルか、あそこは去年出張で行ったよ」
土手で、天使と二人で花火大会を見ていたんだ
「ひゅー、どかんって、花火って一瞬なんだねえ」
って僕が言ったら、天使は
「あれは一瞬じゃない、打ちあがって開いて消えるまで80年はかかっているよ
朝顔の花が咲くのをビデオで撮ったとしよう
早送りで見れば5秒で花が開いてしぼむだろう
それと同じさ」
と答えた
「なるほど、僕らには一瞬でも、花火自身は80年の時間が経過しているんだね
一瞬でもきれいだねえ
でもなんとなく切ないのはなんでかなあ」
「そりゃ、あの花火一つ一つが実はあんたら人間の一生だからだよ
花火大会ってのはね
年に1回、みんなの人生を早送りで再生してんだよ」
「そうだったのか!それで、みんな空を見上げて
一瞬だけ、きれいで、なつかしくて、切なくなるのか」
「そうさ、今年も天国から1000人分の人生を見せてやるよ
また、夏にここの土手に見に来いよな」
横を見たら、もう天使は消えていた
僕は天使と何秒間話していたのだろう
気がつくと目黒川はすっかり闇に溶け
鼻の奥に感じる煙のにおいに
僕はかすかなデジャヴを感じていた
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