河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

色彩の薄いせわた兄弟の巡礼 第25話

2013年06月18日 | ソーラー農作園芸
「お、俺は・・・
何もしなかったわけじゃない
何もできなかったんだ
草食系の俺は肉食系の世界じゃ何もできなかったんだ
まるでステーキの横に居るスカスカの高野豆腐のようなものだった
スキヤキの中に居る麩のようなものだった
汁にずっぽしと溺れていただけだった」

湯気の向こうの父、八田二郎の姿がぼやけはじめた

「親父~、待ってくれよ~
まだ人生の話を全部聞いてないぜ
俺はこれからどうしたらいいんだ~」

外の吹雪が強くなってきた
八田二郎の声だけがかすかに聞こえてきた

「猫のピート、彼の後をついていけばいい
この家の扉のどれか一つが夏へと続いているのだ
ピートは賢いから、すぐ見つけるだろうよ」

色彩の薄いせわた兄弟の巡礼 第24話

2013年06月18日 | ソーラー農作園芸
「内三、じゃあ、コーヒーを飲む間に、人生の話をしようか」

「あっ、もう全部飲んじゃったよ」

「すまん、それはエスプレッソだったな、カフェオレにすればよかったかな
わしはお前も知ってるように、お前の本当の父親だ
親というより創造主といったほうが正しいがな
わしはこの宇宙で56億7千万年生きてきた
家の前に銀河鉄道の駅があるせいかいろんな人が来る
先週はカルロス・サンタナが来て
ここエウロパの思い出を曲にして帰っていった
そのすぐ後に上田正樹が来て『悲しい色やね』を録音して帰った」

「親父、何が言いたいんだ」

「おっと、人生の話だったな
人は無から生まれて、すぐ無に帰っていく
それは幸せなことだ
わしなどは永久に生き続ける運命を背負っておる
終わらない苦痛の日々だぞ
たった70年の人生で何がわかるもんか
70年の瞬間なんだから何をするのも自由だ
内三、それなのに、なぜお前は70年間何もしなかったんだ」

「お、俺は・・・」